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1話 「Sランクの私を助けてくれたのは……」

新作でーす。週3話のペースで投稿したいですね。ハイ

 ドカーン、ドカーン!!と、爆発音が鳴り響き渡る中、人間達の叫び声と魔獣の咆哮がどこからでも耳に聞こえてくる。


 ここは、魔の聖地で有名な『ヘルゴナヤ』。Aランク級の魔物が、ごちゃごちゃと生息しており、人があまり寄り付かない場所だ。


 そして、なぜ我々がこの場所にいる理由はSランククエストである『牛鬼討伐クエスト』を行っているからである。


 本来、我々が住んでいる国『マーガル王国』と『ヘルゴナヤ』は500キロ以上の距離があり、もの好きな冒険者しか訪れないが、この『牛鬼』という魔獣が現れた事によって、脅威に脅かされるかもしれないということで出来る限りA~Sランクの冒険者を集めギルドパーティを作り、牛鬼討伐クエストが始まった。


 だが、流石はSランクの強さを持つ牛鬼は他のモンスターと比べて圧倒的に強く、しかも繁殖期が理由で数も多かった。


 「みんな!!ここは踏ん張りどころよ!!頑張って!!」


 数多くいる冒険者たちの先導をきって進んでいる1人の女性。名はアキラ。赤髪でショートヘア。身長は155ぐらいで少し小柄だが、年齢は22。顔はとても可愛らしい顔たちで、男の冒険者達に人気がある。こんな見た目だが、冒険者としての能力はかなり高く、ギルドでSランク4位の実力を持つほどである。


 「はぁぁぁぁぁ!!」


 手には愛刀……いや、愛槍でありSランクである武器『ユニコーンランス』を持ち、牛鬼に立ち向かう。途中、ゾンビが立ちはだかるが、アキラはユニコーンランスで軽々と一掃し、牛鬼に接近する。


 牛鬼の見た目は二足歩行で筋肉質の身体をしており、顔は牛だが、頭部には立派な角が生えている。

余談だが、牛鬼の生えている角の数が多いほど、強いらしい。


 アキラがターゲットにしている牛鬼の角の数は3本。牛鬼の中ではそこそこの強さだ。


 アキラは牛鬼のすぐそばまで近づき、ユニコーンランスを牛鬼の腹に目掛けて突き出す。牛鬼は「ぐおぉ!!」と叫びながら、吹っ飛び、絶命した。


 周りにいる冒険者は「おぉぉぉ!!」と、歓喜しているが、アキラは「今は戦いに集中!!敵に目を離さない!!」と睨みながら、指摘。牛鬼はまだぞろぞろといた。


 アキラは次に近くにいた牛鬼をターゲットにし、また接近する。今度の牛鬼も角が3本、そして手には大剣を握っていた。


 「アキラさん!!援護します!!」


 1人の青年が走っているアキラと横に並び近づく。


 「ジャン!!」


 ジャンと呼ばれている青年は、手に持つ大盾をアキラに見せて言葉を話す。


 「やつの攻撃を受け止めるから、その隙を狙ってください!!」


 「任せて!!」


 ジャンはアキラより先に牛鬼に近づき、戦闘体制に入る。牛鬼は雄叫びを上げながら、大剣を思っきりとジャンに振り下ろす。ジャンは大盾でそれを受け止める。

ジャンは「ぐぅぅ!!」と歯を食いしばり唸り声を上げる。


 そして、その一瞬の隙を見逃さないアキラは牛鬼の横腹を狙って、愛槍で攻撃。この牛鬼もそのまま吹っ飛んでいった。

死んではいなかったが、近くにいた冒険者に頭を攻撃されて、そのまま絶命した。


 「流石はAランク5位ね。あの攻撃を受け止めるなんて」


 「Sランクの人に言われても嬉しくありませんよ。」


 「え~、これは褒め言葉のつもりだったんだけどなぁ」


 と、アキラは可愛らしく微笑み、ジャンは少し照れながらハイタッチをした。


 ◆◆◆◆◆


 牛鬼の討伐クエストが始まって数時間が経過した。今は順調に牛鬼の討伐が完了している。明らかに牛鬼の数も減っていった。

戦闘で負傷した冒険者もいるが、回復魔法を使える者を派遣したりなどして、未だに死者は1人もいない。これは凄いことだ


 「このまま終わるといいですね」


 あれからは、アキラとジャンは共に行動して、牛鬼を討伐していた。そして、5体目となる牛鬼を討伐したあとジャンは汗を手で拭きながら疲れ気味で言葉を発した。


 「そうだね。でも、おそらくだけどボスがいるはずだから少なくともそいつ倒さないと……」


 「ボスかぁーー。角何本あるんだろ。」


 と、ジャンが興味深い事を呟き顎に手を当て考えている顔になった瞬間だった


 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 西の方から、男性の悲鳴が響いた。アキラとジャンは顔を見合わせ、お互いに頷いてから、悲鳴の聞こえた西の方へ走り出した。


 西の方へ走っていくと、明らかに他のとは違う牛鬼1体と、すぐ足元には血だらけの男性の冒険者が倒れていた。


 「なにあれ………」


 そして、その冒険者を倒した牛鬼の見た目が、角は1本だが、筋肉質の腕が4本生えていた。そして、4本共の手には大剣を持っており、まさに四刀流。


 「あれがボスですよね??」


 「多分………。」


 「アキラさん………、俺が出来る限り時間を作ります!!隙に彼を助けて下さい!!」


 「分かったわ!!ジャンも気をつけて!!すぐに加勢するから!」


 アキラとジャンはお互いの拳を当て、牛鬼に立ち向かう。ジャンは大盾を構え、牛鬼に接近し、大盾で牛鬼を殴った。しかし、それを2本の大剣でガードされ、他の2本でジャンを攻撃しようとした瞬間にジャンは咄嗟に離れて攻撃を躱す。


 その間に、アキラは倒れている男性の方へ駆けつける。首の脈に手を当て、鼓動があるのを確認。アキラはその男性がかろうじて生きていることに安堵し、すぐに回復魔法を使える者たちの方へ向かう。


 向かっている途中に何人のも冒険者達がすれ違いで、4本腕の牛鬼の方へ立ち向かって行った。

彼らを見たアキラは、早く加勢しなくちゃ!!、と思いできるだけ早く足を運んだ。



 ◆◆◆◆◆


 「あとはよろしく!!」


 無事に男性を送り届けたあと、すぐにアキラは4本腕の牛鬼とジャンの元へと駆けつける。


 ここから、敵の場所までは少し距離があったが、彼女が本気で走ればそんなに時間は掛からない。


 そして、走り出して数分後にモンスターのいる場所へ戻ると、ジャン含め数人の冒険者と4本腕の牛鬼が戦っていた。


 4本腕の牛鬼の身体中に傷を負っているが、まだ倒れる気は起きない。冒険者達も同様、傷ついている人も何人かいるが、まだ1人も倒れておらず、負けずと4本腕の牛鬼と立ち向かっていた。


 「ジャン!!待たせたわね!!」


 「アキラさん!!」


 アキラはユニコーンランスを手に持ち、戦闘体制に入りながらジャンに近づく。

ジャンの見た目は装備が全体的にボロボロになっており、持ち武器である大盾もヒビがいくつか入っていた。


 「私も加勢するわ!援護お願い!!」


 「はい!!」


 アキラは4本腕の牛鬼に素早く接近し、腹に目掛けてユニコーンランスを突き出す。しかし、その攻撃をジャン同様、2本の大剣でガード。そして、残り2本でアキラに攻撃を仕掛けようとした瞬間、


 「2度も同じことが通用すると思うな!!」


 ジャンと、もう1人ごつい筋肉をしている男性の冒険者がそれぞれの大盾で牛鬼の攻撃を防ぎ、その間にさらに2人の冒険者が持ち武器の太刀を振り下ろし、腕2本を切り落とした。


 「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 腕を2本落とされ、他の牛鬼と同じ立場になった牛鬼は怒りの咆哮を上げ、残り2本の腕で、冒険者達に立ち向かった。


 二刀流となった牛鬼は、大剣を振り回す。冒険者達はそれを器用に躱しながら、個人で、あるいは連携したりして攻撃し続けた。


 そして………


 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 アキラのユニコーンランスの突き攻撃が牛鬼の腹にクリティカルヒットすると、牛鬼は吹っ飛んで、再び立ち上がることは無かった。


 冒険者達はわぁぁ、と歓喜に包まれる。


 聞いた話によると、他の牛鬼はもう1匹残らず殲滅したらしく、残っていたこの4本腕の牛鬼も倒したことによってもう周りに牛鬼はいなかった。


 つまり、Sランククエスト『牛鬼討伐クエスト』がクリアしたということ。


 先程も言った通り、負傷者は何人かいるが、死者は1人も居ない。これは、とんでもなく素晴らしい結果だ。

すると、アキラは急に力が抜け、尻餅を着く。どうやら、気付かないうちに疲労が溜まっていたみたいだ。ジャンが心配して、駆けつけてアキラに手を貸す。


 「アキラさん!!大丈夫ですか??」


 「うん……なんとかね。」


 「最後の攻撃凄くかっこよかったですよ」


 「そんなことないよ。みんなが援護してくれたおかげ。ジャンも凄かったよ!!これでSランク昇格間違いなしだね!!」


 「それだといいんですけどね」


 そんな些細なやりとりをしながら、アキラとジャンは冒険者たちが固まっている場所に到着しようとした瞬間、



 ーーシュン




 「え?」


 アキラは何が起こったか理解することが出来なかった。何かが飛んでくる音が耳に入り、それが刺さる音がアキラのすぐそばに聞こえた。


 アキラはジャンの方を見ると……



 ジャンの背中から矢が刺さっていた。そして、その矢はジャンの身体を貫通し、腹から出ている矢の刃に刺さっていたのは







 ジャンの心臓だった。







 「ジャァァァァァァァァァァン!!!」




 アキラはすぐにジャンに肩を揺らして、声をかけるが、ジャンが反応することが無かった。周りの冒険者たちもすぐに駆けつける




 ーーシュン、シュン


 


 「来ちゃダメ!!」


 「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 駆けつけた冒険者達の何人かも、飛んで来る矢にやられ倒れていく。



 アキラは矢が飛んできた方向をバッ、と見るとその先には……………






 弓を持った4本腕の牛鬼が、数え切れないほどいた。





 「そんな………」



  アキラの視界に捉えているだけでも数はおよそ30は超える。4本腕の牛鬼は絶望しているアキラ含め冒険者の達を見ると、不気味とニタァと笑い、矢を構える。


 「終わりだ……………」


 アキラは手を地に伏せる。目の前にある絶望と敗北感で前を向くことが出来ない。

そして、涙を流しながら目を閉じる。暗い暗闇にただほかの冒険者たちの悲鳴と牛鬼の笑い声が嫌というほど耳に入ってくる。

いつ、自分に矢が飛んでくるか分からないがただアキラは心の中でずっとある言葉を呟いていた。




 一一一ごめんなさい。ジャン





 それから、アキラは不思議な気持ちになる。いくら時間が経っても、自分に矢が来ない。しかも、他の冒険者達の叫び声や牛鬼の笑い声も聞こえなくなった。


 アキラは恐る恐る目を開けると、信じられない光景を目の前にした。




 顔の知らない1人の青年が、素早い動きで牛鬼を翻弄していたのだ。牛鬼の攻撃を簡単に躱して、牛鬼に、接近し持ってる剣で牛鬼を首を飛ばしたり、4本腕を素早く切り落として無防備になった所を隙を与えずに攻撃するなどしていた。



 そして、最後の1匹を仕留めた後、その青年は仰天しているアキラにゆっくりと近づき



 「大丈夫か?」



 と、手を指し伸ばした。アキラは無言で、青年の手を掴み、立ち上がる。


 「あ、ありがとう。君は?」


 「俺?ただの冒険者だよ。」


 冒険者だと答えた青年に対して、アキラは疑問に思う。アキラはSランクの冒険者だ。CクラスからSランクの範囲でそれなりに実力のある冒険者はほぼ把握している。あの牛鬼を簡単に倒す実力があるならば尚更だ。


 「本当??私、結構冒険者で人脈広い方だけどあなたのこと知らないわ」


 「そりゃあ、そうだろうな。だって………」








 「俺、Fランクだから」





 




 

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