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洋上のアルス・マグナ  作者: kitaro-
第五章:アルス・マグナが創りしもの
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第五章:アルス・マグナが創りしもの――6


          ◇  ◇  ◇


 ヘルメスは、訝しさに眉を歪めた。


 男の正体が掴めない。

 彼がウロボロスである。それが嘘であることだけは、分かっていた。

 死人が蘇る。そのことだけは、絶対にあり得ない。死ぬことを許されない、自分が言うのも何だが。


 いや、正確には、自分も死んでいる。それが、再び生まれ落ちることで転生するのだ。

 そして、男は確かに自分自身で、アデプトでないと断言した。

 つまり、彼は彼自身の言葉で、自分はウロボロスではないと、証明したのだ。


 ……だが、いや、だからこそ、男の素性が謎めいて仕方ない。


 彼が、ホムクルスでも、アデプトでも、ウロボロスでもないのなら、どこからあれだけの知識を得たというのだろう?


「お前は、アルス・マグナの〝能力データ〟を知っているかの?」


 男の台詞が、謎の色を濃くした。


「……アデプトの能力に関する情報。アルス・マグナ登録時、自動的に保存されるバックアップデータのことかな?」

「うむ。――それは嘘である」


 ……嘘――?


 謎は、より深く、より暗いものになっていく。


 ――何故だ? 何故、アデプトでない者が、アデプトだけが知っていることを、嘘だと言えるんだ――?


 男の台詞は、否定ではない。拒絶でもない。訂正だ。


「能力データの真の目的はの? 能力の保存そのものにあるのだ」


 そして訂正とは、正解を知る者が、間違いを正すことを指して呼ぶ。

 これでは、まるで、ウロボロス本人と話しているようではないか。


「アルス・マグナには、隠れコマンドとして〝真理節しんりせつ〟と言うものがあっての」

「真理節?」

「そう。錬金術の統御コマンドであるよ」


 遂に男は、自分ですら知らない話を始めた。


「真理節は、錬金術の〝OS〟のようなものよ。登録・保存された錬金術を、統治し内包し、コマンドの保有者である我に与える」


 男の言葉で、ヘルメスは真相に気付く。


 ――まさか! ……だが、それならば全ての辻褄が合う――!!


 だから、確認として男に呼び掛ける。ウロボロス、と。


「キミは……、キミの正体は……!」

「流石に、気付いたようだのう」


 場違いなほど暢気な笑い声を上げながら。


「我は、錬金術の集合体。アルス・マグナと、マグヌス・オプスに登録されし錬金術が形作る、〝ゴーレム〟であるよ」


 ウロボロスが言った。

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