第二章:二人の少女の対人事情――2
◇ ◇ ◇
「アデプトに取って、寿命はあってないようなものさ。だから、時間を気にすることなく、永遠の研究者でいられる。――アデプトはね? 錬金術師が求める、〝完全〟への道を創るものなんだ」
だから、
「有能な錬金術師ほど価値が高い、ってことさ」
「それが、〝登録〟っていう定めに表れてるんだね?」
ヘルメスが、武に頷きを返し、だけど……。と接続詞を挿んだ。
「今、アルス・マグナには一つの危惧がある」
「危惧?」
「ああ、アルス・マグナのプログラム。その中枢部分が複製され、持ち出されたのさ」
訝しげに眉を歪める道真に、ヘルメスが真摯そうな眼差しを向ける。
「ワタシは、複製されたプログラムを追って、ここに来たんだ」
「なるほど。探し物ってのは、そのコピーって訳だ」
道真は納得の行った顔つきで、苦笑気味に告げた。
「確かに、アルス・マグナってやつのコピーが、どこにあるか? って聞かれたら、ここだ。って答えちまうな」
何しろ、
「ここは錬金領土。錬金術の街だ。しかも、人間に対して生物工学を実践することが、許されているんだから」
アルス・マグナというシステムが、非常に高度で先端的であることは、否定の予知すらもない。
しかし、その内容は倫理侵害のオンパレードだ。
人間の素体化。同一人物の複製。そもそも、人の手で人を創る技術である。
一体、どれだけ神様に逆らえば気が済むのか? 存在そのものが戦争に繋がるような技術だ。
だからこそ、その行方は限定される。
世界中を探しても、錬金領土以外に行き着く先はない筈だ。そうでなければ、使用が許されることはないから。
「複製されたアルス・マグナを用いて、彼女――〝バハムート〟が、何を行おうとしているのか。ワタシはそれを見極めねばならない」
「それが、複製を行った、探し人の名前なのか?」
ヘルメスが首を縦に揺らす。
「ああ、ワタシと同じくアデプトで、ワタシの数少ない友人だ」
彼女は、柳眉を歪め、眉間に皺を刻んだ顔で、
「場合によっては力尽くでも止める。それが、友であるワタシの使命だからね」
迷いのない口調で言い切った。




