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プチトリ!!(仮題)  作者: 谷口 ユウキ
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リメイクしました第一章 第七話「ほう依頼人とな」

前回のあらすじ


主人公は勝負パンツを装備した

「と、いう訳でやって来ました冒険者ギルドー」

おお、ゲームで修次が言っていた『と、言うわけで』が移ってしまった。が、この手の発言って意外と楽しいな。結構気分が出る。

 あの後ファブロフ爺さんにギルドの事を説明してもらおうとして「自分で聞いてこんかっ!」て追い出されたオレはその指示に従って冒険者ギルドにやって来ていた。

 ちなみにSランクのアイテムは爺さんにキッチリ持ってかれている。


 さて、肝心の冒険者ギルドだが、場所は宿『空回り』から歩いて15分くらい。外見は縦にも横にもでかい教会みたいな建物で、『?』が書かれた看板が目印の所だった。

 一瞬こっちが『?』ってなったが、このデザインは多分クエストを表しているとかそんな所だろう。

「思ったより人が多いな」

 皆依頼を受けに来たのだろうか? 中に入ってみるとかなりの冒険者で賑わっている。皆巨大な掲示板に貼られた依頼書らしきものをずいぶん熱心に見ている様だった。

 まあこの世界の冒険者ギルドはゲームとかによくあるタイプ、いわゆる冒険者の派遣会社らしいし別に不自然はない。

 しかし生で見ると『異世界に来た!』って感じがするな。大半の人間が凶器を持ったかの状況でもちょっとわくわくする。


 さりげなく鑑定で装備をチェックしてみると、ピンからキリまで色々な人がいることがよく分かる。昨日目を合わさない様にしたホワイトタイガー顔の獣人さんは上から下までAランクの装備。今すれ違った[商人]のオッサンが着ているのはどれも下から2番目のランクF。

 見ていて飽きない光景だ。

「それにしてもこの掲示板の数。ちょっと多すぎじゃないか?」

 見渡す限りが人と掲示板である。

「この街は入って来る依頼の数が多いですからね。職員さんの話だと依頼の量が多いためこうしないと回らないらしいですよ」

「え?」

 女の人の声。もしかしてオレが声をかけられたのか? だがオレにそんな知り合いはいなかったはずだ。

 そんな悲しいことを考えて声した方を見ると、この世界の数少ない知り合いであるエルフの女性が立っていた。見た所昨日と同じ神官服だが今日は宝石の付いた3、40センチくらいの杖を持っている。

「あ、こんにちはティーリアさん。昨日はお世話になりました」

「こんにちはテツさん。またお酒を飲みすぎたりしてませんよね?」

 うん、この嫌味デスカ? と思うほどタイミングの良いコメントは間違いなくティーリアさんだ。

 こりゃ昨日のヤケ酒パーティーについてはとても話せないな。良い機会なので話をそらすついでに掲示板について聞いてみるか。

「それにしてもこの街のギルドは大きいですね。オレのいた田舎は結構適当な感じだったんでビックリですよ」

 オレは昨日言った田舎者設定を最大限に生かしてそれらしい話をでっちあげる。

「あら、そうなんですか。確かに村によっては全ての依頼を一つの掲示板にまとめたりしますものね」

「ええ、依頼を受ける人も少なかったんで暇してた職員さんが色々やってもらってました」

「まあ、じゃあ色々と勝手が違うかもしれませんね」

「そうみたいですね。あの、もしよかったら少し教えていただけませんか?」

「ええ、もちろんです。私でよければ」

 やっぱり良い人だな、ティーリアさん。

 オレはそんなティーリアさんと話しながら、騙している罪悪感を感じつつ、嘘がばれないかとビクビクしながら周りの冒険者の様子を盗み見て、情報を集め、まとめていく。

 どうやら1つの掲示板に依頼書を全部張る田舎のギルドと違って、この街では依頼のランクによって大まかなブース分けがされているようだ。そのブースの中でさらにランクごとに採集、討伐、その他への分類がしてある。

 それぞれのランクが床と壁に書かれているのが見え、各ブースに巨大掲示板を3つずつ。ランクによってはそれ以上の数を置いている。

「あれ、でもティーリアさんは何でこんな所にいるんですか?」

「あら、おかしいですか?」

「え、いえ、そんなことは……いや、あるでしょう?」

神殿でおとなしくしてるイメージがあるせいでココにいる理由が分からない。

「わざわざ杖を持って来ているって事は何か依頼を受けるんですか?」

 まさかストレス発散に討伐系の依頼を受けに来たとか言わないよな。


 そう思いつつも気になるのでティーリアさんの持つ杖をさりげなーく鑑定してみる。

 昼飯の時に鑑定した物の名前に意識を集中すれば、[学者]の図鑑が勝手に情報を弾きだすというコンボをファブロフ爺さんから聞き出しておいたので、今のオレなら名前以外の事も調べる事が出来るだろう。

 さて、鑑定結果はっと。


[神殿秘蔵のワンド]  短杖 ランクA 

神殿とっておきの一品。コマンドワードを唱える事で、裁きの光弾を撃ちだし相手単体に大ダメージを与える事ができる。


 ……大ダメージ?

 どうしようストレス解消説再浮上だよ。何か聖職者の暗部を見た気がするよ。これ鑑定したことがバレたら半殺しにされるんじゃないだろうか。

 案の定(?)ティーリアさんはニッコリ笑顔。いつも道理だけど何か気分的にヤバイ。

 だが口から出てきたのは死刑宣告ではなくギルドに来た理由だった。

「今日は依頼の申請に来たんです。実は薬を作るのに使う薬草が足りなくなってしまいまして」

「あ、そうなんですか」

 なるほど依頼主。その可能性は思いつかなかったな。……アレ、じゃあ何で[神殿秘蔵のメイス]?

 しかし答えの出ないまま話は進んでいく。

「そういうテツさんは一体何をしにココへ?」

「え、ああ。オレは[ゴラムーニョ]っていうモンスターが何処にいるのか知りたくて」

「[ゴラムーニョ]ですか?」

「はい、今作ろうと思ってるアイテムにソイツの落とす[伸縮する縦糸]っていう素材が必要だったんで取りに行こうと思ったんです」

「あら、そうなんですか。きっと素敵なアイテムをお作りになるんでしょうね」

「そ、そっすね」

「はい? どうかしましたか?」

「いえ、なんでもないです」

 お、恐ろしい。とても『オレ勝負パンツ作るんすよー』とは言えない流れだ。被害妄想なのは分かっているけど、それでもショック。

 まさかただ礼儀正しいだけの言葉がスッゲー嫌味に聞こえるとは。


「そういえばテツさんのギルドランクはお幾つなのですか? [ゴラムーニョ]という事は最低でもCランクは無いと討伐許可はもらえませんよね」

「あ、ああ、そういえばそうでしたねー」

 いや知らんてそんな事。

 けどそうか、言われてみればゲームとかでも依頼によってレベル制限があったりするもんな。これはうっかりしてた。

「もしよかったらテツさんのギルドカード、見せてもらえます?」

 そんな純粋な笑顔でキラーパスはやめて欲しかった。おかげで冗談でも『持ってないデース』とは言えない空気になっている。

 しかも今のティーリアさんの質問。アレはオレがギルドカードを作っている事を前提にした聞き方だった。もしここで『カード?作ったことないよ』と答えたらどうなるだろう?

 ここがカードを持っているの事が当然の世界だったらカード作ったことないって言った時点で不審者確定。つまり正直に答えたら異世界人である事を話すしかなくなるわけだ。

 じゃあいっそ『ボク異世界人です』ってばらしてしまうか? いや、こんな人の多い所じゃ誰に聞かれるか分かったもんじゃない。言うわけにはいかないだろう。

 

 つまりここは適当に言ってやりすごすしかないわけだな。

 とりあえずもしカードを作るのが当たり前だったら何て言い訳すればいいか分からないから、ギルドカードを作ったことが無い。ってのは無し。となると言い訳に聞きそうなのは……。

「……その、言いにくいんですけど」

「何です?」

「オレのギルドカード、この街に来るときモンスターに食われて無くしたんですよね」

「え?」

 普通に無くしたと言っても『じゃあ探せよ』って空気になりそうだったので、情けない感じのエピソードを付け加えてみる。こういう時のアホ話はインパクトがあるから多少の粗さも誤魔化せるだろう。

 後は小声で最後の仕上げ。

「お願い何で他の人には黙っといてください。恥ずかしいんで」

 コレが今のオレにできる精一杯。


 そして2人の間を沈黙が支配した。


 騙せなかった、か。

 嘘はバレてしまったらしい。ティーリアさんからの反応が無い。

 コレはもう本当のことを話すしかないか。

 周りに利用されるかもしれないのは嫌だが不審者として牢屋にブチ込まれるよりはマシだろう。下手にウソを重ねて調べられたら経歴不明の嘘つきとしてもっと怪しい立場になる。

 オレはせめて通報される前に本当のことを言おうと、覚悟を決めて話しかけた。

「あの、ティーリアさん」

「…………フフッ」

 ん、今なんか聞こえた?

「えっと、ティーリアさん?」

「ご、ゴメ……なさい。どうしても……おかしくって」

 え、何? もしかして今までの黙ってたのってただ笑いをこらえてただけ!?

  どうやらツボに入ったらしくティーリアさんの笑い声は止まる気配が無い。

 一応オレに悪いとは思ってるらしく必死に堪えようとはしてるが、そのせいで逆に止まらなくなってる様に見えた。

「フ、フフ。本当にすいません。昔からそういう事があるとは聞いていたのですが、まさか本当にあるなんて思わなかったので。……フフッ」

 楽しそうで何よりです。

「それで再発行って何処に行けばしてもらえるんですかね?」

「そ、それならあそこの受付に行けば新しいカードを作ってもらえプッ、はずです」

「あ、じゃあいってきますね」

 こうして受付の場所を聞いたオレはティーリアさんを置いて受付に行ってみる事にしたのだった。

 自分の嘘でこれ以上ダメージを受けたくないからな。


 駅の売店が並んだようなカウンターの列からカード再発行受付と書いてある場所へと歩を進める。

「ここか。……行きづらいな」

 カードをなくす人の少なさを象徴するかのように誰もいない状態だ。職員さえいない。

 逆に隣にある新規受付と書かれたカウンターでは親を連れた5、6歳くらいの小さな子供が7人ほど並んでいて3人もの職員が対応に追われている様だった。

「ひっどい差」

 しかしよこよく聞いてみると、子供たちに向けてギルドの職員さんがギルドの運営システムの説明している。

 ここで聞いとけば後々ツライ思いして調べなくて済みそうだ。

 そう思ったオレはこっそりと耳を澄まして……。

「皆-、準備はいいかなー? 今からこのギルドがどんな所か、お兄さんが説明するからねー(ゆっくり)」

「「「「「はーい(ゆっくり)」」」」」

 前言撤回。コレはコレでなかなかツライものがある。

 と、自分の認識の甘さを思い知るのだった。


 しかしまあアレだよ。この何とも言えない時間に耐えてどうにか理解したよギルドの仕組み。

 ランクは装備やモンスターなんかと同じでGからSSSまでの10段階。

 それぞれのランクは冒険者本人のレベルを基準に割り振られているらしくレベル1から20までがGランク、21から40までがFランクというようになっていると職員さんが言っていた。

 そのぐらいのレベルになればタイマンで同じランクのモンスターを相手にしても大抵は大丈夫らしい。


 だがこれには少し『嘘だろ?』と思ってしまう。

 ギルドのランク。その10段階評価の基準が20レベルごとだったからだ。 

 ゲームはレベルキャップが99だったんだからそこは当然10レベルごとに分かれて10段階。そんな先入観を持っていたオレは驚きを隠せない。

 要するにSSSランクになるにはレベル200近くにならなければいけないという事だ。ほんとビックリである。

 ちなみにそのSSSランクの人達は、説明をしていた自称お兄さん曰く世界に7人いて皆いい人達らしい。

 嘘くさいな。

 またレベルを基準に振り分けられているランクだが、個人の能力値によっては特例もあるらしく、そういう人は希望次第では昇級試験を受けてランクを上げることもできるんだとか。

 何でもなりたいランクのモンスターの中から、ギルド側が選んだ数種類をタイマンで倒す。という条件らしい。


 まあオレには縁のなさそうな話だな。


 ちなみに依頼自体は掲示板に貼ってある紙を依頼用の受付に持っていけば受注できるらしいが、掲示板に全ての依頼が貼ってあるわけではない。なので手ごろな依頼が無かったら受付の職員さんに聞くか、手ごろな依頼を受けた人のパーティーに入れてもらうのが普通なんだとか。

 それとギルドカードが紛失した場合は銀貨1枚で再発行できるらしく、自称お兄さんは『やる事は今日と同じだから心配ないですよー』と子供に言い聞かせていた。


 うん、無くしたって言って良かった。

 もし作ったことないと言っていたら、どんなに良い方向に転んでもあの子達と一緒に研修を受ける事になっていただろう。

 あの輪の中に入るのはさすがに色々とツライ。

 ホッとした所でその『やる事』とやらを観察すると職員さんは手の平サイズの金属の板を配り出し、子供達に自分の血を板に垂らすよう指示していく。

 子供たちは若干嫌そうだがこの行為はカードの性質上避けては通れない道らしい。ギルドカードとは血を垂らすことで持ち主と契約し現在の情報を読み取る一種のマジックアイテムなのだと自称お兄さんが申し訳なさそうに説明する。

 後はまあ、喧嘩は外でとかルールを守ってとかそんな感じだったかな。

 夏休み前の全校集会で校長先生が言いそうなレベルのありがちな話がだらっと続いていった。


「お待たせしました。カード再発行のお客様ですね」

計20人(暇だったから数えた)の子供とその親たちを裁き切った自称お兄さんはようやくオレの相手をする気になったらしい。若干気まずそうではあるけど口調も普通に切り替わってる。

「所で無くされた経緯はどういった……」

「あー、その、モンスターに喰われました」

 もちろん適当な嘘だ。だがそれを聞いた自称お兄さんは感動したようにオレを見る。

「同志よ」

「はい?」

「あ、いえなんでもないです」

 ふむ、よく分からないけど自称お兄さんは何かに気を取られている様だ。これなら詳しい話を聞かれない内に退散できるこもしれない。

「すいません、ちょっと人を待たせちゃってるのでなるべく早くお願いしますか?」

「あ、ハイ。そういう事ならすぐにご用意します」

 オレは渡されたカードに血を垂らしてちゃんとステータスが表示されたのを確認し、銀貨を払って受付を即終了させる。

「えー、テツさん。ですね。念のため犯罪歴がないかを確認しますので少々お待ちください」

 自称お兄さんはそう言うと、カウンターの下からタブレット型の何かを取り出してオレの犯罪歴がないことを調べて始めた。ファンタジー世界にあるまじきハイテクだ。犯罪歴を調べられる点に関しては何の問題もないが、別の意味で問題がある気がする。

 そんなことを考えているうちに確認が終わったらしい。

「はい、大丈夫ですね。今後は無くさないよう、気を付けてください」

「はい、ありがとうございました」

 そして新品のギルドカードがオレの手に手渡された。

 

 うん、良くやったオレ。

 

 嘘もバレずに無時ギルドカードをゲットした、このやり遂げた感。頭の中でファンファーレが鳴り響いてる気までする。

 達成感に浸っていると目の前に白く輝く文字が浮かび上がった。

『[テツ]は[詐欺師]のジョブを手に入れた』

「……ファンファーレ本物かよ」

 どうやら散々嘘をついていたせいで妙なジョブを獲得してしまったらしい。

 [詐欺師]。何か納得できてしまう自分が悲しいな。

「あー、もう。切り替えてさっさと[ゴラムーニョ]関係の依頼が無いか調べよう」

 オレのレベルは99だからちょうどCランク、依頼を受けるには問題ないはずだ。

 何かティーリアさん待たせちゃってるみたいだし、とりあえずは合流だな。



ども、谷口ユウキです(-_-)/


ようやく冒険者ギルドまで来ました。ここまで来るのに11話。

ひたすら長かった。


実際に書いてみると次数稼ぐのも大変だと実感しますね。

本職の作家ってスゲエ。


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