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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第527話 魔力0の大賢者、ダメージを受ける

「――なるほど。中々やるじゃねぇか」


 ミクスが土煙の中から立ち上がり、口元についた血を親指で拭ってこちらへ戻ってきた。


 あの一撃をまともに受けたはずなのに、足取りはしっかりしている。

 見た目以上にタフだ。


「見ろよ」


 バキ、と嫌な音が鳴る。


 砕け散った皮膚の一部を自慢げに指で叩く。


「自慢の皮膚が砕けちまった。俺の皮膚はアダマンビートルより硬ぇんだぜ?」


 アダマンビートル。

 蟲系魔物の中でも最高硬度の甲殻を持つ個体だ。刃も通さないとされるあの甲より硬い、と。


「ま、少しすりゃこの通りだがな」


 砕けた皮膚がうごめき、ゆっくりと再生していく。

 裂け目が閉じ、まるで最初から傷など無かったかのように滑らかな表面へ戻った。


 再生能力か。しかも相当高い。


「蟲系の魔物にはどこを切られても勝手に再生するタイプがいる。俺はそういう連中の細胞も取り入れてんのさ」

「べらべらとよく喋るね」

「まぁな。折角集めた細胞だ。自慢くらいさせろよ」


 鼻で笑う。


「興味ないよ。僕にとって大事なのは、お前がビロスに酷いことをした。それだけだ」

「酷いこと?」


 ミクスが片眉を上げる。


「あぁそうか。話は最後まで聞けって。確かに最初は遊びだったがな――気が変わった」


 腕を組み、堂々と言い放つ。


「俺はそのメスと番になると決めた」


……。

……番?


 一瞬、言葉の意味を理解するまでに時間がかかった。


「つまりそいつは俺の子を生む。そういう話だ」

「え?」


 頭が追いつかない。


「えぇえええぇええッ!?」


 思わず素っ頓狂な声が出た。


 ミクスとビロスが?

 番?

 子ども?


 いやいやいや待て待て待て。


「違う! それはそいつが勝手に言ってるだけ! マゼル信じないで!」


 ビロスが顔を真っ赤にして否定する。


 そ、そうだよね。

 さっきまで命のやり取りしてた相手だよね?


「連れねぇこと言うなって。強い雄に選ばれて悪い気はしねぇだろ?」

「気持ち悪い! ビロスはお前嫌い! 好きなのはマゼル! 子どもを生むならマゼルの子を生む!」

「へ?」


 今度は本当に思考が止まった。


 僕の子を?


 え?


 えぇえええぇえええッ!?


 心臓が変な音を立てた。


「ちょ、ビロス一旦落ち着こう! ね? ね!?」

「ビロス本気だもん!」


 本気って言った。


 本気って言ったよね今。


 いやいや落ち着け。これは戦闘中だ。

 混乱してるだけだ。そうに違いない。


「てかその反応――さてはお前、童貞だな?」

「――はい?」


 ミクスがこちらを指差した。


 今なんて言った?


「ちょ! それ今なんの関係があるのさ!」

「カカッ、図星か。これは驚きだぜ。ゼロの大賢者の正体が“経験ゼロ”の大賢者だったとはな!」


 腹を抱えて笑い出す。


 経験ゼロの大賢者。


 ぐさっ。


 体は無傷。

 だが心に矢が刺さった。


 転生前も今世もそういう経験はない。

 ないけど!

 今この場で言う必要ある!?


「マゼル! しっかりして!」


 足元がふらついた僕をビロスが慌てて支える。


 くっ……物理ダメージはゼロなのに、精神ダメージが大きい!


「どっちにしろその雌は強い雄が好きみてぇだからな。お前と俺、どっちが強いかはハッキリさせる必要があんだろう?」


 ミクスが笑いながら言う。


……そうだ。


 どちらにしても、こいつがビロスを無理やり従わせようとしているのは事実だ。


「――あぁ、そうだね。その方がわかりやすい」


 呼吸を整える。


 羞恥心は一旦脇に置く。


「ビロス、危ないから離れてて」

「う、うん。マゼル、ビロス信じてる!」


 その言葉で、胸の中の動揺がすっと引いた。


 ビロスが距離を取る。


「いい判断だ。俺も番を傷つけたくねぇからな」

「だから違うって言ってるだろう」

「テメェを倒せば考えも変わるさ。行くぜ!」


 ミクスが大口を開く。


 轟、と炎が吐き出された。


 周囲の森が焦げている理由がこれか。

 本当に考えなしだ。


「こんなところで火なんて吐くなよ」


 息を吸い込む。


 肺の奥まで冷やし、限界まで圧縮する。


 吐き出したのは氷点下の息吹。


 空気中の水分が瞬時に凍結し、炎を包み込む。


 炎が白く固まり、砕け散った。


「ガハッ!」


 ミクスが喉を押さえて後退する。


 冷気がそのまま気道へ入り込んだらしい。


「ゲホッ……俺の炎を凍らすとか、どんな魔法だよ」


 咳き込みながら睨んでくる。


 今更だけど魔法じゃない。


 僕はただ、空気を冷やしただけだ。


 さて。


 次はどう出る?


 羞恥はまだ少し残っているけれど――


 それ以上に、怒りの方が強かった。

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