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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
ラフェルス副伯領へ

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フォロブロン

 「ラフェルスで兵乱?」

 アレス副伯領の家宰の報告を聞いたフォロブロンは怪訝な顔をした。あそこは帝国直轄領だったはずである。そこで兵乱とはただごとではない。

 「それが、最近ラフェルス副伯が任じられたとか」

 「ほう。ということは新たなラフェルス副伯が攻められているということか? それとも領民の反乱か」

 「私もまた聞きですので詳しいことは……」

 ラフェルス副伯領とアレス副伯領の間には複数の領主の領地がある。兵乱が飛び火してくることはないだろうが、注意はしておいた方がいいだろう。グライス軍が編成されることになれば、アレス副伯領も兵を出さなければならない。

 「そうか、ラフェルスか……」

 「はい。副伯が帝都にお上りになる際の通り道でございます」

 アレス副伯領から帝都に上る際は素通りするだけだが、帝都からアレス副伯領に戻る際はドルトフェイムに1泊するのが通例だった。

 「ふむ。通るついでに様子を見ておこう」

 グライス軍が編成される可能性もある時期に領地を離れるのは気掛かりではあるが、留守居役でも対応できるようにしている。フォロブロンが居なくても問題は生じないはずだった。


 2日後、フォロブロンはラフェルス副伯領に入った。フォロブロンとその護衛の10騎だけなので、特に事前通告はしていない。懇意にしている貴族の領地を通る場合は通告して城館に宿泊させてもらうこともあるが、戦時でもあるラフェルス副伯の城館に立ち寄ることはない。

 見たところラフェルス副伯領は平穏そうだが、ドルトフェイムに近づくと状況が一変した。2000ほどの兵にドルトフェイムが包囲されている。封建軍と傭兵の混成部隊のようだ。領民の反乱ではない。


 帝国には帝国平和令が敷かれており、貴族同士の私闘は固く禁じられている。ドルトフェイムを攻囲している兵は、帝国の禁を犯してまで何をしたいのか。ドルトフェイムを落としたところで、グライス軍による懲罰を受けることになるだろうに。

 もっとも、帝国平和令はたびたび施行されている。なぜかというと、守られないからだ。領主間の争いはグライスあるいは帝国司法院で裁定を受けることになっている。しかし、帝国司法院の裁定が下るのには時間がかかる。そこで、待ち切れず自力救済に及ぶ者も出てきてしまう。そして、こうした私闘が起こるたびに帝国平和令が新たに公布されるのである。

 「ここからではよく見えないな。もう少し接近しよう」

 攻囲側の軍旗を視認できる距離まで近づいた。見覚えのない紋章だった。

 「あれは……ラフェルス家の紋章です」と、フォロブロンの家臣のヴァル・ヨーレント・イガレンスが進言した。

 「ラフェルス家がラフェルス副伯を攻撃しているのか? どういうことだ?」

 「ラフェルス家は前ラフェルス副伯です。ラフェルス家は転封になり、新たに誰かがラフェルス副伯になったのでしょう」

 家名と地名が同じということは、ラフェルス副伯領はラフェルス家の本領か。本領を実力行使で取り戻そうとしているのだろうか。気持ちは分かるが悪手だ。ドルトフェイムを落として現ラフェルス副伯を駆逐したところで、ラフェルス家の手にラフェルス副伯領は戻るまい。それとも取り戻せる算段があるのか?


 監察使と共にナルファスト継承戦争を経験してきたフォロブロンは、宮内伯が横紙破り的な手法で地方貴族を操る様を見た。ラフェルスにも宮内伯たちの手が伸びているのだろうか。それとも現ラフェルス副伯に問題でもあるのか。

 興味はあるが、これ以上深入りして巻き込まれてはかなわない。ラフェルスの偵察はこの辺りで切り上げて、帝都に馬を向けた。

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