疑問
「どう思う? アデン」
「サテルフィス卿の態度は不可解ですね。ラフェルスへの執着が常軌を逸しています」
結局、ウィンは市庁舎の一室を使うことにして、運び込んだ寝台に寝転んでいる。
「トルトエン副伯領よりも経済力が小さいラフェルスになぜこだわるのか……」
「本領に対する貴族の思い入れは並々ならぬものがあると聞きますが」
この時期にやって来た理由は想像できる。本領復帰の運動はこれまでも行っていたのだろう。帝国直轄領のままであれば、ほとぼりが冷めれば恩赦を得る望みもある。しかし、ラフェルスにウィンが封ぜられてしまった。ウィンがこの地に根付いてしまえば本領復帰の望みは絶たれたも同然だ。その前に交渉をまとめたいと焦ったのだろう。
「ウィン様らしくない、とも思いますがね。いつものウィン様なら『そんなに欲しいんならいいよ』と言いそうなのに」
「トルトエンはカーリルン公領から遠過ぎる」
「それだけとは思えませんが」
またアデンに痛い所を衝かれた。だが、ウィンもその理由をうまく言語化しかねている。
「あの調子じゃ諦めてないよなぁ」
「また来るかもしれませんね」
「その件じゃが、もう少し調べた方がよいのではないか?」というアルリフィーアの言葉がよみがえってきた。
7年前の事件と5年前の刺殺事件。これらが関係しているのだろうか?




