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現代戦国  作者: 百合華
第四章
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20 驚愕の犯人

 甲斐谷の指示通り、退院手続きを済ませた聖は、学生寮への道を歩いていた。

 空はすでに橙色に染まり、カラスが鳴いている。甲斐谷は調べたいことがあると言うので、病院で別れてしまったのだが、本音を言えば、寮まで一緒に来てほしかった。

「俺が、浄化人、真田幸村……」

 聖は己の手の平を見る。

 スーパーで火に囲まれたとき、無我夢中で力を使った。ぼうっとだが、覚えている。あれが、浄化人としての力なのだろうが、しかし、いまだに実感がない。崖っぷちに追いやられて、反射的に使ったのだから。言わば、火事場の馬鹿力なのだ。

「俺、どうすればいいんだろう……」

 力があっても、コントロールができなければ、意味がない。

 聖は深呼吸をする。右手で拳を作る。そこに神経を集中させてみる。だが、あのときのように光の粒は出ない。

「ダメか……」

 肩を落とし、ため息をつく。

 人類の存続を懸けた戦い。スケールが大きすぎて、今でも嘘だと思いたくなる。それに加え、自分がその戦の鍵を握っているとまで言われても、正直、困る。つい最近まで、自分はどこにでもいる普通の学生だと思い込んでいたために、それが突然一変して、命を狙われる立場になってしまったのを、どうしても受け入れられない。というより、受け入れたくない。

「俺、俺は……」

 気持ちに整理がつかず、ため息が止まらない。

 そのとき、また誰かの視線を感じた。

「……っ!」

 一瞬はびくりとしたが、聖は気づかないふりをする。今までのようにすぐに反応してしまうと、視線の犯人は姿を隠してしまう。

 ならばと、聖にもある策が浮かんだ。このまま恐怖を与えられてばかりなのはもう嫌だと思い、何より、このストーカー染みた行為をするのが誰かを知りたくて、今回は強気に出る。

 聖はいきなり駆け出した。視線の犯人は慌てたのか、追ってくる気配を聞こえる。聖は人気のない小道に入り、曲がり角を曲がった。ストーカーも後を追い、曲がり角を曲がろうとしたとき、待ち伏せしていた聖が躍り出る。

「誰ですか!」

 ようやく叶った、自分をずっとつけていた犯人とのご対面。

 だが、それはあまりにも思いがけない事実で、聖を驚愕させると同時に絶望させた。

「さ、SASUKEさん……!」

 聖がその名を口にし、SASUKEは苦々しい顔をする。ついにばれてしまった、と言わんばかりに。

「ど、どういうことですか? 俺をずっとつけてたのって、視線の正体って、SASUKEさんだったんですか!?」

「それは……」

 SASUKEは押し黙ってしまう。まるで、うまい言い訳を探すように。

「答えてください! どうして、そんなこと……」

 言いかけて、聖は瞠目する。

 病院で初めてアヤカシという化け物を目撃し、発せられる邪気を感じ取って、邪気とはこういう気配であるのを知った。禍々しくて、毒々しくて、忌々しくて、吸い込むだけでも目まいや吐き気を催しそうな気体。SASUKEの内に隠れるようにして潜む気配は、まさしくその邪気だった。

 それと、SASUKEのストーカーの理由を考慮した結果、信じ難い真実に辿り着く。

「SASUKEさん、アヤカシ……なんですか?」

「……っ!」

 虚を衝かれて……いや、SASUKEの見せた反応は、図星を突かれたときのそれだった。聡い聖の目は誤魔化せない。

「嘘、だ……」

 さっき、病院で別れ際に言われた甲斐谷の言葉がよぎる。


『どうか気をつけてください。特殊な力を持つ武将の血肉は、アヤカシに強大な力を与えるのです。神子となれば、髪の毛一本、血の一滴さえ、まさしくこの上ないご馳走となるでしょう。それに、神子殺しの称号を得るだけでも、アヤカシにとっては何よりも名誉なこと。故に、神子を狙ってアヤカシ同士が争うことも少なくはありません。浄化人が狙われるのは、決してアヤカシの邪気を浄化できるからだけではないのです。ですから、どうか邪気を感じたら、相手が誰だろうと敵だと思ってください。それが、貴方自身を護ることに繋がるのです』


 聖は、唇を噛み締めた。

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