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ナイトオブブルーローズ  作者: 陽山純樹
第3話

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彼女の変化と学園の騒動

 『キラービー』との騒動から事後処理を終え数日後、ようやく全てが終わり落ち着きを取り戻した時、舞桜は自宅で一人首を傾げていた。


「どういうこと……?」


 出る言葉は、疑問。制服に着替え学園に行こうとした段階で事実に気付き、玄関にも行かず立ち止まっていた。


 舞桜は再度手をかざす。普段、いつ何時事件が起きてもいいように朝支度を済ませた後準備運動として魔法を簡単に使用する。これは月によって使用できる魔法が変化するため、それを確認するという意味合いがある。


 舞桜は一度手に力を込め魔法を発動。魔法の特性が変化したのはおよそ一週間程前であり、通常ならばまだ変化する段階にはない。

 だから魔法を使用すると、手の中で虚無が生まれる――はずだった。しかし、


 手の中に生み出されたのは炎――変化している。


 こんなこと、今まで一度としてなかったのに。


「体に変化が起きている?」


 首を傾げ、この事実をどう判断するか思考する。このままでは授業に間に合わないのだが――舞桜は、一つ結論を出してポケットから携帯電話を取り出す。


 そうして連絡したのは学園。事務的な口調で「今日は午前欠席する。公欠届は後日出す」という旨を伝える。相手も事務的に「わかりました」と応じ、関係場所に連絡しておくと返事を受け、電話を切った。


 仕事の関連でこうしたことはしばしあり、学園側も黙認しているという事実がある。舞桜としては悪いと思っているのだが、仕方ないと割り切ることにした。


「さて」


 舞桜は気を取り直し、今度は日町に連絡を行う。三回のコールで出た相手は、


『……はい? どうした?』


 なんだか寝ぼけた口調だったので、一度ツッコミを入れる。


「寝てましたね?」

『ああ、すまんな。昨日徹夜だったからな……それで、どうした?』

「……実は――」


 と、自身の魔法に関する旨を伝えると、日町は、


『それ、単に魔法の使い過ぎで体のバランスを崩したんじゃないのか?』

「最初、そう思ったんですけど……そもそも体調なんて悪くなっていないですし」

『うーん、だから少し調べてくれと』

「はい。午前は授業を休むので、その間に」

『まあ私は構わないが……そちらに行こう』

「え、大丈夫ですよ。私が――」

『いや、正直人に見せられない状況なんだよ』


 ――ズボラな性格であるため、部屋が相当散らかっているのだと舞桜は直感する。


「わかりました。それでは待っていますから」

『ああ』


 電話が切れた。舞桜は息をつき、ポケットにしまう。


「……なぜだろう」


 そして最後に呟く。それに答える者は誰もいない。

 舞桜は再度手をかざし、魔法を使ってみる。やはり炎。虚無の魔法を使おうにも、一切使えないというのが現在の状況。


 体調具合によって、魔法が変わる時期に変化が起きる経験はしてきたが、それは自身の身体的な問題と複合したもの。第一、今回魔法が変化したタイミングも一週間前で――


「……とりあえず色々考えるのは早いのかな」


 舞桜はポツリと呟いて、リビングの椅子に座る。


「日町さんを待つことにしよう」


 最後にそう言って、舞桜は小さく欠伸をした。



 * * *



 事件以降、応援団にも菜々子の姿は現れていない。


「どうするかな……」


 達樹は午前最初の授業を受け終えた後、廊下を進みながら一人呟く。

 応援団を含め。普通に生活していれば菜々子に出会えるチャンスくらいはあるだろう――という希望的観測だったのだが、数日経って彼女と話すとっかかりすら見つけ出せていない。


 となると、達樹としてもどうするか改めて考える他なかった。


 同じ授業をとっている場合もあったため、広い講堂を見渡せば彼女の姿を見つけることができたケースもあった。なのでそれとなく近寄ってみるのだが、彼女は気付いたかして席を離れてしまう。

 避けられているのは明白であり、達樹としてもどう動くか迷う。


「あの調子だと応援団にも来ないだろうな」


 呟きつつ、今後の対策を考える――とはいっても、とにかく話すチャンスを得ないことには始まらない。


「おい、達樹」


 そんな折、声を掛けられる。優矢だ。


「ああ、どうした?」


 声がした横を向きつつ、達樹は声を掛ける。


「今日の昼だが、いつもの場所で食うのか?」

「え……そのつもりだけど、どうした?」

「いや、少しばかり相談したいことがあってな」

「相談……?」


 珍しいケースだった。普段優矢はあまり達樹にこうしたことを投げかけないのだが。


「内容を簡単に訊いてもいいか?」

「ああ……」


 と、優矢は一度左右を見回し、


「今後の、応援団の方針についてだ……もう少し、立栄さんに近づこうかと」


 嫌な予感がした。


「……具体的には?」


 質問すると、優矢は笑みを浮かべ、


「なあに、簡単な話だ。立栄さんに直接掛け合って、公認をもらおうかと……って、おい!」


 達樹は彼の言葉を無視して歩き出す。付き合っていられない。


(公認って、そもそも無理だろ……)


 彼女の周囲を取り巻く親衛隊ですら、公的なものではないというのに――

 なおも後方から優矢の声が聞こえてくるが、達樹は無視を決め込んだ。


「さて……とりあえず次の教室に」


 気を取り直して歩んでいた、その時――前方で、何やら一方向へと生徒達が走っていく姿を目撃する。


「ん?」


 首を傾げた時、前方から「親衛隊」とか「にらみ合い」とかそういう言葉が聞こえてくる。


「親衛隊……? それににらみ合いって……」


 達樹は首を傾げつつ、胸中では確かな興味を抱き、足が止まる。

 教室の方向は生徒達が進む道とは逆。となれば当然、授業に赴けば親衛隊云々のことは見ることができない。


 僅かな会話を聞いただけであるため、実際はまったくの空振りに終わるかもしれない――次の授業は単位修得は比較的楽だが、途中入室などは基本禁止しているような先生が講師を勤めている。ただレポート提出で単位が決まるものであるし、友人も出席している。一回休んだところでおそらく影響はない。


「……行ってみるか」


 やがて、達樹は決断すると生徒達が流れる方へと歩き出す。

 親衛隊とくれば間違いなく舞桜に関することだろう。パートナーとなる可能性だってある現状では、彼女に関する情報は集めておくべきではなかろうか。


 そういう誤魔化しに近い理由が達樹の頭を支配する。決して授業に出るのが面倒というわけでは、たぶんない。

 達樹は胸中で色々と理由をつけつつ、歩を進める。生徒達が行く方へは結構な人数が流れており、話がかなり拡散していることが窺える。


(……これ、場合によっては舞桜に迷惑が掛かるんじゃないか?)


 そんな可能性が僅かながら浮かび上がり――そういえば、今日舞桜はどうしているのだろうかと思い至る。


「親衛隊に何かあるとしたら、本人がその場にいてもおかしくないような気がするけど……」


 しかし口々に語る生徒達から彼女の名前が出てくることはない。あくまで親衛隊だけであり――


(塚町さんの件が関係しているのか?)


 そう考えると、改めて確認しておかなければと達樹は思う――果たして、

 そこで、チャイムが鳴った。これで授業は出れないと思いつつ、校舎を出る。


 大通りの一角に野次馬の存在が確認できた。間違いなくそこだろうと達樹は思い近づいてみると、


「……もう一度、警告しておきますね」


 女性の声。それはおそらく親衛隊の人物だろう。


「立栄さんについては、学園内で無闇に干渉するべきではないと私達も考えております。しかし、あなたは様々な場所で立栄さんのことを聞き回っていた……正直、捨て置くには目に余る状況です」

「つまり、そういうのをやめろって話か?」


 応じたのは男性。どうやら男性が舞桜に干渉しようとしたらしい――

 達樹は会話を耳にしながら疑問半分不安半分といった按配で、近寄った。


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