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ナイトオブブルーローズ  作者: 陽山純樹
第1話

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彼女との合流

 青井商店の中は以前訪れた時と同様に雑然としており、さらには以前よりも少しばかり散らかっていた。物が所狭しと置かれているのは変わらないが、歩くスペースであるはずの床にも書類や物品が散乱している。


「きっと、黒い騎士がこの中を探したんだと思う」


 まず立栄が切り出した。達樹と笹原は室内を見回しながら、彼女の言葉を待つ。


「ここに騎士が現れたという情報を聞いたのは昨日。警察の人も色々と動き回っていて、その中で九秋重役の三石さんがここを訪れたりしたとも聞いた。そこで私は思ったの。もしかすると、私は根本的に間違っていたのではないかって」

「その根拠は?」


 達樹が問う。彼女は雑貨に目をやりながら、答える。


「漆黒の騎士の存在。逃亡中、青井神斗が騎士を作りだしているとすると、何かしら魔力を必要とするはず……あの騎士は体に魔力を溜め込んでいたから。けど、情報によると青井神斗は単なる増幅器研究者で、増幅器を使わなければ魔法は使えないはず。何かしらの機具を使えば可能かもしれないと考えたけど……私達が必死で捜索している以上、あんな魔力の塊みたいなのを製造していたら、さすがに気付くと思うから」

「そうか……警察もそうした認識なのか?」

「ううん。三石さんからどこかに施設があるのだろうって吹き込まれている。あの人は警察に対し結構顔が広いから、皆信用している」

「立栄さんは違うのか?」

「色々探し回っているから……少なくとも、逃亡中に使えるような施設はどこにもなかったよ」


 立栄は疲れた声で言うと、今度は推論を述べる。


「それで考えたのが……もし青井神斗が主犯でなかったら、本当の作成者は誰なのか……私はまず、三石さんが頭に浮かんだ」

「その前提でいくと、あの人の差し金で俺の部屋に騎士が現れたと」

「あなたの部屋に騎士が?」


 立栄は目を丸くしながら尋ねる。


「ああ」

「そう……それで、菜々子。西白君と一緒にいるのはそれが理由?」


 立栄が問うと、笹原は説明を始めた。ペンダントに関する資料と、騎士の襲撃のこと。


 話を聞き終えると、立栄は憮然した面持ちで声を発する。


「そっか……やっぱり、あの人が首謀者である可能性が濃厚かな」

「目的はペンダントを手に入れること、じゃないか?」


 達樹は言いながら、ポケットからGPSを取り出し、立栄に見せつける。


「座標は九秋の施設内らしい。ここから数日間一切移動していない。俺が三石って人から話を聞いたところ、もう廃棄したって話だった。これはどう考えてもおかしいだろ?」

「確かに。私は立ち合いで処理したのを見たけど、偽物だったのかも。もしGPS自体がペンダントを指しているなら、そこから調べないといけない」


 立栄は腕を組み何事か考え始めた。これからどうすればいいのか決めあぐねている様子。


 そんな彼女を見て、今度は笹原が声を上げた。


「ねえ舞桜。舞桜の権限を使って研究所を調査とかできないの?」

「調査権限は警察しか持っていないから無理だよ。それに、警察にはもう頼れない」

「どうして?」

「三石っていう人は私も少し付き合いがあるんだけど、かなり狡猾な人で、色んな場所に情報を巡らせている。多分ここで私達が会話していることも彼には伝わっているだろうし、警察に報告することすら、彼にはすぐわかると思う」


 言ってから、彼女は小さく息をついた。


「警察に連絡すれば、ペンダントをどこかに隠すか何かして対応を図るはずだよ。私は確かに大きな発言力はあるけど、研究所を無理やり立ち入りして、成果がないという状況になったら、信用が大きく損なわれる。リスクが高い」

「そっか……」

「となると、立栄さんが乗り込んでペンダントを取り返す、とかか?」


 達樹が意見する。立栄は目を細めながら頷いた。


「そうね……一連の黒い騎士を彼が製造していたという証拠を押さえればいい。今はどうにか隠しおおせているけど、露見すればあの人も言い逃れできなくなる」

「後は、青井さんをどうするかだな」

「そうね。彼の行方を探すのも大事」


 すべきことは多くある。だが、警察という人手に頼れない以上、限界もある。


「で、俺達はどうすればいいんだ?」

 ある程度情報がまとまった所で、達樹が立栄に質問した。


「本来なら、立栄さんの邪魔をしちゃいけない立場だと思うけど」

「確かに、資料をこっちに渡してもらえれば、それで完了、だったはず」

「……はず?」


 聞き返すと、立栄は重い表情を示した。


「推測だけど、黒い騎士は多分、私に関する戦闘データを取っている可能性が高い。さっき二人を助ける前にも、あの大きい騎士が十体現れていたから」

「十体!?」


 達樹は思わず叫んだ。最初数に驚き――やはりというかなんというか、彼女にとって重騎士は敵ではないという事実に、驚愕する。

 だが、彼女は浮かない顔のまま。


「現状倒せるから問題ない……けど、半分を倒したくらいで思考パターンに変化が現れて、私の魔法に対応するそぶりを見せ始めた。多分どこかで騎士を統括する場所があって、そこに情報が集積されている。時間をかければ、敵は私に対応する騎士を完成させる可能性が高い」

「舞桜、それじゃあ……」


 笹原が何かに気付いたのか声を上げる。立栄は、即座に頷いた。


「うん。相手は間違いなく、私が今風の魔法しか使えない事実にも、気付いているはず」

「……え?」


 達樹が、声を発した。笹原は事情を察しているらしいのか、表情が暗い。


「え、でも立栄さんって、色んな属性使えるよね?」

「属性だけは、ね。実の所、私は体調の変化によりひと月くらいは同じ属性の魔法しか使えないの」


 これには達樹も驚いた。そういえば優矢が毎月実技試験の時、彼女の魔法は変化し、七色の使い手だと言っていた。その理由は、月一で使える属性が変化するため――つまり、意図して使い分けているわけではないというわけだ。


「……ってことは、敵は風に対する能力を強化した騎士を作る可能性がある、と」

「そう」


 立栄の返答。これには達樹も唸ってしまう。


「じゃあ、どうすれば?」

「ここからは時間勝負となる。どれくらいの時間で騎士が作れるのかわからないけど、魔力で作りだす以上、最悪九秋の研究施設内で簡単に作成できるかもしれない。そうなれば今からでも向かって、製造を止めるしかない」

「放っておくと、最悪勝てなくなるのか……」


 状況の悪さを理解し、達樹は零した。笹原もまた状況を把握し俯いている。そんな中、立栄は腕を組みどう動くか思案する。


「一番の問題は、青井神斗を探した方がいいのか、それとも研究施設へ向かった方が良いのか……彼が何か情報を持っているのだとしたら、保護する必要があるけど、その時間はあるのかどうか」

「……そういえば、何であの人は盗難された時警察に頼らなかったんだろう」


 達樹はふいに疑問を呈すと、立栄は肩をすくめて答える。


「たぶん、報復を恐れたのかも。三石さんが主犯だとしたら、自分がペンダントを持っていることを察せられると、口封じされる恐れがあった。だから警察に頼れなかった」

「それなら確かに筋が通るな……顔が広い三石って人を警戒したというわけか」


 口封じ――本当にあるのか疑わしく思えるが、実際達樹も騎士によって殺されかけている以上、ペンダントに関わる人間を皆殺しにする気なのかもしれない。


「……そうね。ひとまず施設に向かった方がいいかもしれない」


 そこで、立栄の結論が出た。


「青井神斗を探すのにはヒントが少なすぎるし、それだけで時間を消費してしまう。それに製造を止めた後でも彼を探すことはできるし」

「私も同感だよ」

「俺も賛成だ」


 笹原と達樹は共に賛同し――達樹は改めて立栄に尋ねる。


「で、再度訊くけど……俺達はどうすればいい?」

「そうね……研究所に入るのは私一人で十分、というより、二人がいると足手まとい。でも二人をこのまま放置すると、また騎士に襲われる可能性がある。なら方法は一つ」


 達樹は何が言いたいか予想がついた。笹原もまた理解した様子で、立栄を見る。


「私の家なら安全だと思う。さすがに家を襲うような真似をしたら隠し立てもできなくなるだろうし。あ、でも念の為怪我をした場合に備え、日町さんを呼んでおくよ。もし何かあったら、連絡してほしい――」






 三人が立栄の家に辿り着いたのは、それから三十分後だった。時間的には夕方前くらいだが、秋の空は赤みを帯びつつある。

 立栄は道すがら日町と連絡を取り家まで戻ると、まず着替えを済ませた。学校の制服ではなく、青を基調とした衣服。達樹の目には警察服にも見えたが、ボタンすらも青で統一された無地の物。


 格好を見て、笹原が尋ねた。


「戦闘服に着替えたの?」

「本拠に忍びこむ以上、制服だとすぐにわかっちゃうから。ただ、これを着るイコール侵入者という形だから、公になったら誤魔化せないけど」


 彼女は嘆息しながら返事をする。やり取りを見て達樹は首を傾げ――笹原が補足をした。


「あれを着るのは、警察から指定があった時だけなんです。今はそうした事例ではないので、警察にバレればお叱りが待っているんですけど……」

「職権乱用というわけだよ、西白君」


 続いて、立栄の言葉がやってきた。


「ただ状況を考えれば事後報告でも許してくれそうだし、これで首謀者が少しでもたじろいでくれればいいと期待しているよ……それじゃ、行ってくる」


 彼女は言うと、玄関を出て研究施設に向かった。GPSについては特に必要ないとのこと。ペンダントを隠されても、三石をどうにかすれば良いだけとのことだ。

 立栄を見送り、達樹と笹原は家に入った。一人で暮らすには広いリビングに入り、達樹は大きく息をつく。


「何か飲み物を出すよ」


 笹原が台所に向かう。待とうかと思い椅子に座ろうとした時、インターホンが鳴った。


「俺が出る」


 手が離せない彼女に代わり達樹が声を上げながら出る。日町だった。


『事情は聞いている。開けてくれないか』

「わかりました」


 達樹は玄関に行き扉を開ける。そこには前と同様白衣姿の日町の姿。


 彼女を中に入れリビングに戻ると、四人掛けの机の上にオレンジジュースの入ったコップが三つ置かれていた。

 それを見て日町は、笹原に礼を述べる。


「悪いな、菜々子」

「いえ」


 日町は座ると、ジュースを飲み始めた。達樹は彼女の隣の席に座り、笹原が達樹と対面するように着席する。


「……ふう、さてと」


 ジュースを飲んで一息ついた日町が、二人を見て語り出す。


「話は聞いた。相当入り組んだ展開になっているようだな」

「はい……」


 笹原は俯きながら、彼女に応じた。


「正直、舞桜一人で大丈夫かどうか不安ですが」

「引き際を見極めるのは上手いから、きっと大丈夫だろう。ただ舞桜の戦法を分析しているという点は、少し引っ掛かるが……舞桜も完全に実力を見せているわけではないだろうし、逃げることはできるさ」


 楽観的に日町は言う。達樹は彼女の話に心の中で同意しつつ、尋ねた。


「日町さん。九秋の三石という人はご存知ですか?」

「三石……私が関われるような相手ではないが、名前くらいは知っているよ。それと、権力に妄執しているという噂も知っている」


 権力――三石が今回の首謀者だとすると、それが動機なのだろうか。


「ところで二人は、あのペンダントの事情とかは聞いているのか? 私は相談を受けていた手前、事細かに知っている……私は舞桜から事件の内容を話しておいてほしいと言われたのだが」


 訊かれ、最初に答えたのは笹原。


「私は、捜査の経緯とペンダントがどういった形状かを知っている程度です。詳細は舞桜からは教えてもらえませんでしたし、早河さんも舞桜のことを気にしてあまり情報をくれませんでしたから」

「そうか……と、菜々子は早河から情報を受け取って不良達の捜索していたのか……西白君、君は?」

「俺は立栄さんから概要程度を」

「そうか。あまり知らないようだから、最初から説明したほうが良さそうだな」


 呟くと、日町は語り始めた。


「事の始まりは警察への告発だ。名前は明かさないが、学園と手を結ぶ研究機関だと言っておこう。話によると、九秋の研究者が増幅器を精製した。その力は使用者の魔力を限界まで吸い上げ、力に転用するという物。九秋はその研究開発品を試験者に与え、死なせたという話まであった」

「命そのものを、吸い上げる増幅器……あのペンダントが、ですか」


 笹原が言うと、日町は「そうだ」と答えた。


「普通の人間が魔法を使う場合、増幅器を使ったとしても限界はある。ならばその限界を引き出せる容量を増やすしか、魔法使いに対抗できる手段は無いと考えたのだろうな。実際、増幅器の開発初期はそんな研究が大半だった」

「今は、されなくなったんですか?」


 達樹が問うと、日町は肩をすくめ応じた。


「それによって、被験者が死亡したケースが続出すれば、二の足を踏むのは当然だろう? どこの国もそういう結果となったため、今は事例も少なくなった。しかし、今回のように秘密裏に研究が進められている場合もある」

「そうですか……無茶苦茶ですね」

「まったくだな……話を戻そう。要は昔の研究を彷彿(ほうふつ)とさせる情報に警察は動きだし、最終的に舞桜が調査に参加する運びとなった。告発時点では、ペンダントは既に九秋研究所からは消えていた。ここからは舞桜の情報を元にした私の推測だが、青井神斗という人物が、危険を察知しペンダントを盗み、隠したのかもしれない。だが首謀者である三石は実験内容から警察にも言えず、人間を雇って捜索させていた。その時、警察が告発により動き始めた」


 達樹は説明を受け、最初GPSにより出会った不良達を思い出した。彼らがペンダント捜索を引き受け、まんまとそれを手に入れたのかもしれない。

 だが、疑問もよぎる。


「日町さん、一つ質問が」

「どうぞ」

「不良達がペンダントを持っていたことから、彼らが首謀者に雇われて青井さんからペンダントを盗んだのはわかります。しかし、なぜ彼らが所持していたのでしょう? 普通なら、すぐにでも相手に渡すはずですが」

「三石は実験の露見に警戒していたのではないか? もし実験が露見すれば研究所から追い出されるだけでなく、刑務所行きだ。さらに魔法関係の実験による致死は重罪。だからこそ絶対にバレてはいけない……さらに、三石は重役だ。おそらく不良達も彼が依頼主だとは知らないだろう。私の見立てでは、絶対に見つからない状況を整えるため、しばし彼らに保持させていた。バレないように万全を期するようにしたことと、後は多少の油断だろう」

「油断?」

「盗みおおせたのだから、見つかるはずがないという、勝手な推測だ」


 答える日町に――達樹は最初の戦いを思い出した。リーダー格と思しき相手は確か、合流できていないという風に呟いていた。類推するに、彼らはペンダントを渡すまで連絡待ちだった可能性が高い。日町の言う通りかもしれない。

 考えていると、日町はさらに続けた。


「さて、次に菜々子も出会った不良についてだ……警察はまず、盗難という事例から様々な可能性を視野に入れ……不良達が盗み働いていると思い、色々と情報収集をしていたわけだ」

「あ、それは舞桜も言っていました」


 笹原が小さく手を上げる。


「そうした人達が盗みを働いている可能性がある以上、彼らにペンダントの詳細を聞いていけば、見つかる可能性があると」


 ずいぶんと気の遠い話だと達樹には思えた。とはいえ、紛失した物を探すにはそういう所から当たるしかないのも事実。


「で、俺が出てくるわけか」


 達樹が発言する。それに日町が頷いた。


「そうだな。君に青井神斗が協力を頼んだのは全くの偶然だろう。話によると彼はあくまで研究員で魔法使いではないため、盗まれても対処できなかった。しかし運良く増幅器を使えば十分戦える君に出会えた」

「笹原さんと出会ったのも、偶然という訳か……」

「ですね。ただ私の手に渡っていたら、事件は迷宮入りになっていたでしょう。GPSといったヒントも無く、三石という人の手元に戻っていたでしょうから」


 確かにと、達樹は心の中で呟きつつさらに言った。


「それで、俺がペンダントを手に入れ、怪我をした……あれ?」


 呟き、ふいに首を傾げた。


「何で青井さんは俺に仕事を?」

「その辺りは本人に訊いてみないとわからないな」

「ですね……で、最終的に結局ペンダントは九秋へと返却された」

「そこはどうしようもなかったな。舞桜も騎士の襲来を、ペンダントを狙う人間の仕業だと判断していたそうだから。あの時舞桜は、自分が狙われていたと、推測していたそうだ……私の推測の部分も多いが、一応話の筋は通っている。後は騎士に関する話だが、これはおそらく、今後の事を考え襲撃したのかもしれない」

「今後の事?」

「今のような状況だ」


 つまり、立栄が九秋と戦うという話。


「三石は立場上、青井が騎士を使役していると豪語できる。だがもしもの時に備え、舞桜と戦うのを見越し対策をしたのだろう。もしくは騎士を動員し青井の仕業だと警察に誤認させることで、色々事を運ぼうとしたのかもしれない。結果的にはそれが功を奏し、ペンダントが戻ってきた。とはいえ、予定外のこともあった」

「それが、GPSですね」


 達樹の問いに日町は「そうだ」と返答する。


「三石はそれを手に入れてこそ、全て解決すると思っていたはず。しかし青井は逃走し、その最中事件の関係者である西白君に荷物を送り届け、今に至っている。敵の計略により情勢は悪いが……まだ最悪の状況には至っていない」

「そうだといいんですが」


 達樹は言いながら、少し気になってGPSをポケットから取り出し、確認した。


「……あれ?」


 声を上げる。その座標は明らかに前とは異なり、移動していた。


「ペンダントが、動いてる……」

「舞桜が探し当てたんじゃないのか? いや、それにしては時間が早いな移動魔法を使っても、こんな短時間で奪取できるとは思えない」

「三石さんがペンダントを持ち出したということでしょうか?」

「行き違いか……その可能性もあるな」


 日町はGPSを覗き見ながら言うと、笹原が携帯電話を取り出した。


「座標を教えてください」


 達樹は言われるまま数字を読み上げる。その間にも座標はどんどんと変わっていき――彼女は神妙な顔をした。


「研究所を離れ、学園方向に進んでいるみたいだけど……」

「でもずいぶんと悠長に思えるよ。行ったり来たりしているし」


 達樹は笹原へ答えた時――ある予感を覚えた。彼女も同様だったのか、顔を上げて口を開く。


「西白さん、もしかして」

「青井さん、か……?」


 二人は互いに視線を交わし沈黙し……少しして達樹は再度GPSを見る。移動はかなり遅いが、それでも確実に研究所を離れるよう進んでいる。


「確認しに行こう。どちらにせよペンダントがあるみたいだから」

「わかりました」

「私は留守番をしているぞ」


 日町が言うと同時に、達樹と笹原は席を立ち弾かれたように家を出た。


 外は濃い夕焼けが照らしており、どこからかカラスの声が聞こえてくる。

 達樹はGPSの座標を笹原に確認してもらい、移動を始める。距離はそれほど遠くない。走れば十分ほどで到着する距離に、ペンダントはある。


「先ほどの騎士のような、気配がありますね……」


 道中笹原が語る。

 戦っている音などは聞こえないが――防音のような魔法を使用している可能性もあるため、気配がした以上警戒する必要がある。


 やがて座標付近に到達する。そこは一軒家ばかりの住宅街の一角。

 ここに至り、はっきり音が聞こえた。加えて道路を駆けるいくつもの足音。


「こっち!」


 笹原が走り出す。達樹が追随し、座標が示す場所に到着する。

 そこには、黒い騎士に追われ、旅行鞄を携えた青井神斗の姿があった。

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