おかしな点
「どこがだ?」
中井は熱く冷静に聞き返す。後輩は多少不安がりながらも
「加藤は…、加藤の後輩と会話が少なすぎるんです…」
「何て言うか、あれはどうだったとかブレーキの効きはどうだったとか一切質問してないと思うんです」
「あぁ、そうだな…」
確かにその通り、何も質問していなかった。
「チューニングもこっちとは違ってここでは確認してないし、どこかの店でもうしてきているか、向こうのチームで済ませてから温める為に人に乗らせてきたんじゃないでしょうか?」
「…なるほどな。チューニングを終えてチェックしないのはすでに温めさせている為か…」
「誰か、加藤の生の駆りを見た奴はいるか?」
「…すいません、誰も…」
皆で顔を見合わせて、そういえば今日初めて見るな…と、後輩達もキョトンとして顔を見合っている。
噂の異様な駆りも、もしかしたらゴローの言う通り機体を見えない所で温めてから峠に持って来ているのかも知れない。
どの噂もヘッドナイトの奴らから聞いたものばかりだしな…
いつもどのチームも峠にはゆっくり吹かして持ってきていたからな…。慣例みたいなもんだったけどルールではない。
なるほど…。
(俺が前日に愛車で港区を二時間かけて駆り回すのと同じ様な事をやっているのかもしれないな…)
(しかも当日にか…なるほどな…)
「ゴロー、ありがとうな」
「いえ、とんでもない…」
深夜のランバトルにはヘッドナイト達が決めたルールがいくつかある。
場所は峠の中腹からスタート。一度山を登ってチェックポイントを通ってからもう一度中腹を過ぎて麓のゴールを目指す。
時間が深夜ゆえに、開始前に音を鳴らしたり、当日街で違反を犯して来ない事等があった。
ゆえに当日の峠でのランバトルは秘密裏に行われていた…
出せる速度も乗車手の腕次第で競った競技になっていたからだ…
その点については負けたヘッドナイト達も今でも誇りにしているはずだ。
時間にすると20分程での決着だが中腹と山頂とゴール手前の麓には色んなチームの駆り屋達が募っていた。
ましてや腕のある中井と噂の加藤の対決とあっては人だかりが出来るのも当然であったのだ。
あと10分でレースは始まる。




