罪袋びふぉ~あふた=
翌日の朝、紫は龍二の寝室に行く。
「龍二おはよう、って……」
ぬぅっとこちらを振り向いた龍二の目の下にはくまが出来ていた。
「龍二……どうしましたの?」
「いや、ちょっと考え事を……そしたら眠れなくて……」
「何考えてたの?」
「別に……」
欠伸をしながら龍二は答える。
昨日の“靈夢”に関して言うつもりは無いのだろう。
昨夜、泣いてしまった霊夢を見ながら龍二は考えていたが、まずは泣き止めさせるのを優先だと考えた。
「と、とりあえず泣くな霊夢……」
「アンタのせいよ馬鹿ぁ!」
そう言いながらポカポカと龍二を叩く。
そして同時に紫が現れた。
龍二を睨むように。
「……私の霊夢に何したの?」
「何もしてねぇよ!いきなり泣き出したんだy「だからアンタが悪いのよ!」話こじれるからやめろ!!」
「へぇ……自分の都合に合わせる為に口を出すなと、私の霊夢にそんなこと言うんだ?私の霊夢に。」
(なんでアンタが怒ってるわけ!?)
何故か泣いてる霊夢と何故か怒ってる紫、そして二人の間にいる龍二はため息をついてしまった。
ついてしまったのだ。
「何ため息ついてんの?ん?」
「え?いやちょちょちょ落ち着けって!」
スキマで瞬時に龍二の目の前に近づき、龍二の胸ぐらを掴む。
流石に龍二も焦りだした。
(中学生くらいなのになんでこんな力あんだ!?身長差的に無理じゃ……)
「落ち着けって?貴方正気でございますか?愛する人が泣かされて落 ち 着 け と ?」
「あ、いやその俺が悪かったですすいま――」
その時、龍二の悲鳴と被弾時の音が響いたとか。
結局靈夢の正体がわからず気になり続けた龍二は眠れずにいたということだ。
しかし、紫の表情を見た限り昨日の最後は忘れているだろうと龍二は思い、詳しくは答えなかった。ただ、1つ紫に聞く以外は……
「なぁ紫、靈夢って知ってるか?」
「霊夢?」
「いや、多分お前の言ったれいむは俺も会ったことあるあの霊夢だろ……?」
「それ以外にいるのかしら?」
「……知らん。」
「変なの。」
「で、何のようだよ?」
「ええ。ちょっと頼みたいことがあって……」
そう言い紫はスキマを開いた。…………龍二の足下に。
そして気づかない龍二はそのまま落ちていった。
「痛っ!」
尻餅をついて着地。
「たくっ普通に連れていけば良いのにあのスキマ妖怪……」
「貴様!今のは、ゆかりんのことか!」
「はぁ?」
知らない女性の声がして龍二は振り向いたが、その姿を見て唖然とした。
(変態か……?)
額に『罪』と書かれた白いマスク。そして下着をつけてる以外何も来ていない女性がいた。
マスクをつけている為素顔はわからないが、声からしておそらく女だ。
「なんだその目は!?私に不満があるのか!?」
「大有りだよ。なんだその格好は……」
呆れながら龍二が聞くと、その女性は鼻で笑う。
「格好よりもまず名前だろ。常識を知りなさい。」
「じゃあ名前を名乗れ。」
「人に名前を聞くときはまず自分かr「被弾しろ!」
ストレスを発散するように龍二は弾幕を放つ。
が、その弾幕は突如現れたスキマの中へと入っていった。
「苛立つのはわかるけどまずは落ち着きなさいな。」
「ほぉ……あいつ相手にか?アンタは出来るのか?」
頬をひきつる龍二に対して紫は冷静な表情を保ちながら答える。
「勿論出来ますわ「やった!ゆかりんが助けてくれた!どうだ青髪やろうざまぁみろゆかりんが来たからにはもう大丈b」前言撤回、ウザいわ。」
そう言いながら傘を女性目掛けて振り回す紫。女性は避けずそのまま当たった。
「あん!」
何故かよろこんでいるが。
「……で、結局名前は?」
ため息をつき、龍二は聞く。
女性は胸を張り答えた。
「私は罪袋№890!!」
「……What's?」
「いやだから私は「本名じゃないだろ?」今はこれが本名!」
言い張る女性、№890に龍二はため息をつくことしか出来なくなっていた。
「それで、コイツをどうすれば良い?」
イライラしながら龍二は紫に聞いた。
「そうね……とりあえず服を着させて欲しいですわ。」
「服?」
「私、ゆかりんのお願いなら服を着るよ!」
急に答えた№890を唖然とした表情で見る紫と龍二。
「………こう言ってるけど?」
「じゃあ着てくれる?」
「わかりました!」
ビシッと敬礼をした№890はすぐに退室した。
「解決したが……」
「そうね……」
「帰っていいか?」
「うーん……まぁ良いわ。」
そう言い紫はスキマを開こうとした。しかし、すぐに№890が現れた。
「おまたせゆかりん!」
(早すぎるわ……)
紫はそう思ったが、思っただけだった。
№890の服はワンピースにフード付きパーカーだった。
「あら、可愛いわねえ?」
思わずそう呟く紫。
まるで龍二にふっているかのように。多分それを察したのか龍二は答える。
「え?ああそうだな……スタイルが良いな。」
「スタイルが良い?フンッ青髪のくせに生意気だな!」
そう言う№890に対してイライラは出ずむしろ呆れしか出なかった。
「いや、顔が見えないで可愛いかわからないだろ。」
「顔が見えない?さては私がまぶしいんだ!?」
「いいえ890。私もスタイルで可愛いと言ったわ。」
「えぇ!?なんで!?」
「だって…そのマスク邪魔。」
紫が告げると№890は衝撃的な顔をする。
「いや、でもこのマスクは取れません!」
「あらどうして?」
「このマスクは……罪袋一族の誇りです。どんな時でもはずせないのです!!」
「そう……マスクとってくれたら私が膝枕してあげようと思ったのに………」
「喜んで!!」
(うわぁ易い誇り……)
「よいしょっと」
№890はマスクをとる。
意外と普通の女の子で龍二は驚いた。
「変態って顔じゃないよな。」
「確かに普通に可愛いわ。」
「やった!青髪やろうはどうでも良いけどゆかりんに誉められた!!」
(言動がウザいな……)
龍二はそう思う。
「で、俺は帰って良いか?」
「まだよ。せっかくだからもう1つやりたいわ。」
(帰って良いってさっき言ったじゃないか……)
「やりたいって何を?」
「この子の名前。№890って可哀想じゃない。」
また可哀想なのかと龍二は思うが確かにとも思った。
龍二もまた、№890という名前に違和感があるから。
「名前か……お前№890の前は?」
「えっと……縁……です。」
「私と同じだったのね。」
もじもじする№890に紫は微笑む。
№890はマスクをとったから顔を隠すものがなくなって恥ずかしくなったのだろう。
「なら、八雲縁で良いんじゃないか?」
「適当ね……と思ったけど名案だわ。」
「いいんですか?」
「勿論よ、私達は家族だもの。貴方は今日から八雲縁よ。」
パアッと明るくなる縁。
これで一件落着かと龍二が思ったその時――
「龍二、貴方は今日から私のことを姉さんと言いなさい!」
ズルッと思わずずっこける龍二。
「ハァ?なんで?」
「だって皆、私のことをババアとか年増とかBBAとか言うんだもの。」
「いや、アンタの見た目的に縁の方がいいだろ!!」
龍二曰く見た目が中学生三年生くらいの紫は、高校男子の自分よりも、見た目がまだ少しだけ幼い縁の方が良いのではということだ。
「良いから!アンタも姉さんと呼びなさい!!」
強制的。
「わかったわかった。でもせめて紫姉にしてくれ。実の姉もそんな感じで言ってたから。」
「………わかった。それで良いわよ。」
少し考えたあと、紫はそう答えた。




