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不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1章 村娘が勇者になったので、従者として一緒に旅に出るようです。
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第18話 竜の宝物

「さっきから何一人だけ逃げているのだ!! お前もこっち来て誤解を解け!!」

「……どこ行ってたの?」


 降りてきて早々に絡まれ、レイラの問いに息が詰まる。

 ……まさか魔王討伐の結末をネタバレされたとは言えない。


 レイラ達にどう説明したものか悩んでいると。


「試練を無事に受かった褒美に、宝物庫へ案内するって話をしてたんじゃよ」

「「「宝物庫!?」」」


 ボルカの爺さんが割って入る。


「……で、どこ行ってたの?」


 おい! 全然話がそれてないんだけれども!?


「悪いな、先に褒美を貰って来ちまったんだ」


 そう言って手に持っていた一振りの剣を見せた。

 台座に刺さっていた……勇者ユテシアの剣。

 いらないと言ったのに半ば押し付けられるように貰ってしまった。


「「「……ふーん」」」


 ジロリと三人分の目線がチクチク刺さる。


「でもこんな自然豊かな場所に、そんなもの本当にあるのです?」

「ふふふーん。坊ちゃん、ワシはドラゴンじゃぞ?宝物庫の一つや二つ持ってて当然じゃ」


 得意げに髭を撫でながら、ボルカの爺さんは言うのだった。


「ワシの宝物庫はかなり凄いぞ」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 俺達は爺さんと共に大樹の根元から地下に降りている。

 台所の隅っこにその入口があり、地下には奥深く長い通路が続いていた。


 上には初代勇者の墓、下には迷宮に宝物庫ときたもんだ。

 村の皆はこの事を知っているんだろうか。

 ボルカの爺さんが実は竜で、山の頂上には竜の巣があるという事を……。


「まるで蟻の巣のようね……ちょっと不気味だわ」

「ワシの友人達がここを採掘場にしておってのぉ。あらかた終わった後、折角じゃからワシがそのまま使っておるんじゃ」

「一体何に使ってるんです?」

「……それがのぉ……実際に使うとなったら何に使ったら良いのか見当もつかんでのぉ……てへっ」

「耄碌しすぎなのです!?」


 本当に何に使おうと思ったんだよ……。


「良いんじゃよ! あやつ等が必死になって作ったんじゃ……これはこのままで良いんじゃよ!!」

「ご老人……その歳で少々乙女すぎないか?」


 何やら気持ち悪いものでも見たかのように顔を背けるステラ。

 辛辣すぎないか? ……気持ちは分かるが……。


「ほれ、もうすぐ着くぞい」


 たどり着いたのは、竜の意匠が凝らされた白い扉だ。


「なんかそれっぽい扉なのです」

「そう頼んで作ってもらったからのぉ」


 爺さんの友達凄すぎだろう。

 思えば爺さんが玄関口と言った場所も凄かった。

 共通する意匠が凝らされている事からも、同じ人間? が拵えたものだという事が分かる。

 本当に何者なんだろう。


「ほれ、開けてみるがいい」

「……罠とか無いわよね」

「無いわいっ!? 流石にここまで来て罠を仕掛けるとか根性曲がりすぎじゃろう!?」

「俺が開けようか?」

「皆で開けましょう!!」


 左側をレイラとイースラ、右側をステラとイクスで開けていく。

 僅かな隙間が生まれると、そこから光が漏れ出てくる。

 思わず目を細めたが、すぐにその明るさにも慣れてきたところで目を見張る。


 中はそこそこの広さを持っていた。

 天井から光が差し込み、文字通り山のような金銀財宝を照らしていた。


「マジかよ!? 文字通り金銀財宝じゃねぇか!!」

「ふふーん、どうじゃこの圧倒的なまでの黄金の輝きを! ワシの試練を乗り越えた褒美じゃ、好きなだけ持っていくと良いぞ」

「よし、全部持っていこう」

「「「「え?」」」」


 え? ダメなの? 好きなだけ持って行って良いって言ったよな?


「ぜ、全部か? これ全部となるとどれだけの重量になるというのだ?」

「いやいや、こんな時のためにステラの魔術があるんだろう?」

「ちょ、私の魔術でもそこまで万能ではないぞ!? この規模の量だと、重力制御……いや、空間制御系の魔術か? ってそれっぽ事言ってみたがそんな魔術なぞ私は知らんぞ!?」

「あぁそうか、魔術だから攻撃系の魔法になるのか……」

「おいなんだその間は!? おいこらボソッと駄目ルフとか言っただろう!! 私の耳をなめるな!!」


 ステラから距離を取ろうとする俺に、ツンツンしてきたのはイースラだった。


「お兄さんお兄さん、これ駄目なのです」

「え?」


 イースラは山ほどある金銀財宝から一枚の金貨を取って見せた。


「これは二千年ほど前の旧アストレア期に流通していた金貨なのですが、今はこの金貨は金貨として流通してないのです」

「……え? それじゃあコレで買い物は出来ない?」

「はいなのです。また流通量も多いので美術的価値もさほどあるわけではないのです。純粋に金や銀としての価値も、無いわけではないですが……この時期の硬貨は粗悪品が多いので、とても労力に見合うとは言えないのです。ざっと見てみましたが、ほぼ硬貨がその時代の物だったのです」

「……ゴミか?」

「限りなくゴミに近い骨董品です」


 …………マジか。


「……確かに、この真珠のネックレスなんてすっかり酸化してしまっているな……あ、崩れた」

「大したお宝ね」

「ふぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 爺さんの良くわからない絶叫が響いた。


 そのまま泡を吹いて気絶した爺さんを放っておき、何かないかと俺達四人はこの宝物庫を荒ら……整理する事にした。

 中には価値があるものがきっとあるはずだ。


「最初の印象にやられたけど、よく見ると汚い部屋ね」


 特に掃除もしていないのだろう。

 塵や埃、煤が溜まりにたまっている。


「ズボラな性格が伝わるのです」

「ふむ、私はそんなに気にならないがな……」

「ステラは放っておくとすぐ本に埋もれるのです。慣れっこのステラが特殊なのですよ」

「お、宝石があったぞ。これとかどうだ?」

「それはただの模造品、硝子だ」

「なんでそんなもんここにあんだよ!?」


 そんなやり取りをしながら、金貨、銀貨、アクセサリー、ゴミと仕分けしていく。

 大半が硬貨で次いでゴミ、稀にアクセサリーといった物が出てきたが、これまた大して価値あるものはなかった。


「おいおい、本当に何もねぇのかよ……」

「期待外れも良いところなのです」

「いっそ金貨を溶かして延棒でも作ってみようか?」

「まだこの鱗の方が価値あるんじゃない?」

「そうですね、竜の鱗も剥ぎ放題……レイラの案は意外と有りかもしれない」

「おぬし等は鬼か!?」


 具体的な内容に入る前に爺さんが起きてしまった。


「私達なんでここに来たんだっけ……ゴミ場庫?」

「命がけの試練の報酬がゴミだったのです」

「むしろ掃除した分損したな」

「おいおい、お前ら言いすぎだろ」

「こ、小僧――

「ゴミの方がまだ肥料になる分役に立――――」

「ぽぺぇぇぇぇぇええぇぇぇぇえ!!」

「奇声を出すなよ!?」

「お、おのれ……ワシの思い出の品々をゴミ呼ばわりしおって……まだじゃ、まだとっておきがあるのじゃ!!」


 そういうと、爺さんはガニ股歩きで隅の方に行き、石壁の窪みに指を突っ込む。

 まるでパズルのように石壁が動き出し、道が開いた。


「この先は宝物庫じゃないんじゃが……ついて来るがいい!!」


 鼻息荒く先を行く爺さん。

 俺達は顔を見合わせ、後に続いた。

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