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【改訂版】Sランクパーティーに捨てられたポーターは実は最強の空間魔法使いだった。~虐げられた世界に復讐して『ざまぁ』するんだぁ!~  作者: ボルトコボルト


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最終話 復讐の果て、あるいは自由への旅立ち

 『黒の群盗』の砦は、完全に騎士団の手によって制圧されていた。


 しかし、その制圧の様子は異様なものであった。砦内に溢れかえっていた土蜘蛛の群れは、いつの間にか全て息絶え、その胸元からは綺麗に魔石だけがくり抜かれている。そして、凶悪なはずの盗賊達はまるで石像のようにカチコチに封印され、身動き一つ取れずに固まっていた。

 

 戦乱の嵐が去った砦を、ユウマはブラックドッグのクロドの背に跨がり、静かに後にしようとしていた。


 周囲の冒険者達は、先ほどAランク冒険者パーティー『豪勇の斧』の一撃必殺とも言える手練れたちが、一瞬で封印され無力化された光景を目撃している。彼らはユウマの底知れない力に底恐ろしさを感じ、誰も声を掛けることができない。騎士達にしても、動けない盗賊達の拘束や、砦内に残された物資の捜査で猫の手も借りたいほど忙しく、一介のBランク冒険者に構っている余裕はなかった。

 

 そんな喧騒の中で、遠ざかるユウマの背中に声を掛けた者が2名いた。


 一人は白銀の鎧を纏ったベーマタ騎士団長。そしてもう一人は、Aランク冒険者パーティー『黒紅の無頼』の探索者、リュウセイである。


「ユウマ! 待ってくれ。……まずは、来てくれて本当に有り難う。君の破格の助力のおかげで、我が騎士団は全滅の危機を免れた。都市に戻ったら是非、相応の報酬を受け取って欲しい」


 ベーマタ騎士団長が、真摯な眼差しでユウマに声を掛けた。しかし、ユウマはクロドの歩みを止めることなく、振り返りもしない。


「いえ。俺は別にあなた達を助けるつもりでここに来た訳ではありませんから、お礼も報酬も要りません。……それに、俺はもうあの都市に戻るつもりもありませんので」


 その言葉に、隣にいたリュウセイが意外そうに眉を上げた。


「おや、都市に戻らないって……じゃあ、これから何処に行くんだい?」


「ん~……そうですね。この国を出ます」


 あまりにも物静かな、しかし決意を秘めたユウマの返答に、リュウセイはふっと寂しげな笑みを浮かべた。


「そうかぁ……。君みたいな面白い奴がいなくなると、色々と寂しくなるなぁ」


「ははは、そうですか?」


「ま、待ってくれ! 何とか、何とかこの国に居て貰えないだろうか!?」

 ユウマの出国宣言を聞き、ベーマタが顔色を変えて慌てて懇願した。


 一瞬にして一国の脅威となり得る盗賊やモンスターの群れを殲滅し、封印してしまう能力など文字通りの国家最高機密、いや破格の戦略兵器だ。そんな存在が他国に渡り、万が一にも敵対勢力の戦力になると思えば恐ろしくて夜も眠れない。騎士団長という国の安寧を背負う地位にいる者としては、どのような好条件を提示してでも、何としても引き留めなければならなかった。


 国という枠組みに囚われない自由な冒険者であるリュウセイと、国家の盾である騎士団長ベーマタとでは、この場におけるスタンスが全く異なっていた。


「いえ、この国に残る気は、もう一ミリもありませんよ」

 冷淡とも言えるユウマの拒絶に、ベーマタは悲痛な声を絞り出す。


「どうしてもダメかぁ……。大金も望まない、富も名声も、騎士としての地位も要らないと言うのだな?」


「そうですね。父親の件を含め、俺の目的は全て果たされました。今はただ、誰にも縛られずに自由に、そして静かに休みたいのです。だから、報酬も地位も何も要りません」


「なるほどね。まあ、世界は広いんだ、また何処かでひょっこり会う事もあるだろうさ」


 リュウセイはベーマタの焦燥をどこ吹く風と受け流し、割と気楽な調子でユウマとの会話を続ける。


「ところでさ、あそこでオブジェみたいになってる『豪勇の斧』の面々は、そのうち動ける様になるのかな?」


「『豪勇の斧』?」

 ユウマが首を傾げると、リュウセイはあごでカチコチのフドウたちを指し示した。


「ほら、さっき君に封印された脳筋の冒険者達だよ」


「ああ、あの人たちですか。ミナト達を探している時に、しつこく邪魔しようとしたからつい。……まあ、半日もしたら自然と解けますよ」


「そうかぁ。それなら安心した。解けてから自力で恥ずかしそうに帰って貰おう」


「……ならば、あの固まっている盗賊達も、半日ほどで動ける様になるのか?」


 ベーマタ騎士団長が、現実的な防犯上の懸念からユウマに尋ねた。もし半日で解けるとなれば、今すぐ護送の準備をしなければ砦内で暴動が起きる。


「いえ、彼らはそう簡単には解きませんよ。丸1日以上はそのまま固まったままです」


「そうか、それなら猶予はあるな。このまま荷物みたいに馬車に乗せて運ばないとダメだな。助かるよ」


「じゃあ、俺達はこれで失礼します。クロド、行こう」


 ベーマタ騎士団長はまだ色々と聞き出したい事がありそうに口を噤んでいたが、ユウマは容赦なく話を終わらせて、そのまま歩みを進めた。


 ――もう、本当に疲れたよ。


 俺とクロドは、こうして数々の因縁が渦巻いた砦を後にした。


 ……ちなみに、黒の群盗が隠し持っていた金目の物や宝物の半分ぐらいを、彼らの捜査が始まる前に密かに俺の亜空間に収納したことは、墓場まで持っていく内緒の秘密だ。ベーマタさんが報酬をくれるって何度も言ってくれていたわけだし、これくらいのセルフ前払いは貰っても罰は当たらないだろうと、今では思い始めている。


  ◇◇


 時を同じくして、崖の上での大乱闘を終えた『風月の戦乙女』とメイも、疲れ果てた様子で砦から引き上げて来ていた。


 がたごとと揺れる撤退用の馬車の中で、元ギルド受付嬢のメイは、凄まじい執念で筆を走らせていた。その目は完全に狂気と興奮に満ちており、崖下で目撃した「あの最高に背徳的な男達の抱擁(大大誤解)」をテーマにした次回作の原稿を、寝食を忘れて必死に書き殴っている。この作品が後にギルド界隈で大ヒット作となるのは、また別のお話。


 一方で、哀れな悪党たちの未来は、あまりにも暗かった。


 素顔を晒されたサキヨマと、槍を持ったまま固まっていたリマサノは、完全に封印された状態のまま騎士団の馬車へと放り込まれ、厳重に拘束されていた。彼らはこの後、都市の地下尋問室で蜘蛛の牙との背後関係の自白を徹底的に強要された後、待っているのは極刑の死刑か、一生光の差さない終身鉱山奴隷としての悲惨な日々だろう。

 

 そして――。


 元Sランク冒険者のミナトは、自身の傲慢と罪の報いを受けるかのように、外傷のない謎の死を遂げていた。


 残されたアオイとヒマリは、何が起きたのかも分からぬまま封印された状態で、静かに騎士団に拘束されていた。リーダーを失い、犯罪組織の幹部として捕まった彼女たちもまた、サキヨマ達と同様に、弁明の余地なく死刑か終身鉱山奴隷の判決を下されることになるのだ。


 因果応報。かつて栄華を極めた者たちの末路は、あまりにもあっけなく、そして無惨なものであった。


 そんな世界の喧騒を背に、ユウマとクロドは、未だ見ぬ新しい空を目指して、どこまでも続く地平線へと歩みを進めていくのだった。

( 第一部 完 )

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

 作中でまだ回収しきれていない伏線や、ユウマたちのこれからの旅路など、描ききれなかった物語がいくつかありますが、第一部は、一旦ここで区切りとさせていただきます。

 またいつか、さらに強くなったユウマやクロドたちと共に、皆さまとお会いできる日を楽しみにしております。その時まで、しばしの間お別れです。

 これまで温かい応援や評価をくださった読者の皆さまに、心からの感謝を込めて。本当にありがとうございました!

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