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線路の上の約束 ― 出発進行の朝に ―  作者: リンダ


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逆送致


41 逆送致


夏の終わりが見え始めた頃だった。

茂の手元に、また封筒が届いた。


今度は、家庭裁判所から。


封を切る音が、やけに大きく響いた。


「……逆送致」


茂がその二文字を口にした瞬間、七海は背筋が硬くなった。


逆送致。

家裁から検察へ。

つまり、少年としての「保護」だけで終わらせず、

刑事の場で裁くべきだ、と判断されたということ。


咲子が小さく息を呑む。


「……刑事裁判になるってこと?」


茂は頷いた。


「そういう方針だ」

「十六歳、集団、暴力、撮影、脅迫、金銭要求――」

「“一度きりの行き過ぎ”としては整理できない、ってことだ」


七海は、言葉が出なかった。


救われたような気もした。

でも、怖かった。


裁判は、正しさを決める場所じゃない。

証拠と構成で“事実を固定する”場所だ。

その固定の過程で、七海は何度も、あの日を言葉にしなければならない。


七海は震える指で、自分の手首を掴んだ。


「……私、また話さなきゃいけないの?」


咲子が即答した。


「話さなくていいようにする」

「できる限り、代理人が守る」

「七海の言葉は、必要な時だけでいい」


それでも、七海は分かっていた。


必要な時は来る。

必ず。



42 刑事裁判の始まり


初公判の日。

傍聴席の空気は、耳に痛いほど乾いていた。


静かに並ぶ席。

静かなざわめき。

静かな好奇の目。


七海はそれを見ないようにした。

見た瞬間、また“晒される恐怖”が戻ってくる。


法廷に加害者たちが入ってくる。


平田沙代里。鎌田静江。市田優愛。笠木孝介。


制服ではない。

でも“子ども”という印象でもない。

中途半端な年齢の、重さだけが残っている。


裁判長が淡々と進行する。


「被告人らは――」


検察官が起立し、起訴状を読み上げる。


傷害。

脅迫。

強要未遂。

恐喝未遂(または恐喝に準ずる行為)。

撮影による名誉・人格への侵害の要素。

そして、投稿による二次被害の拡大。


言葉が並ぶたびに、七海の胃が縮む。


“あれ”が、法律の言葉になっていく。

痛みが、条文の形になる。


それは、救いであり、残酷でもあった。



43 被告人の言葉


裁判長が問う。


「被告人、起訴事実に間違いはありませんか」


沙代里が立つ。

マイクの前で、唇が震える。


「……殴ったことは、認めます」

「でも、こんな大ごとになるとは――」


その瞬間、七海の目の前が白くなった。


まただ。


“こんな大ごとになるとは”。


七海は机の下で、拳を握った。

爪が掌に食い込む。


孝介が続ける。


「……金を取るつもりはなかった」

「冗談のつもりだった」


静江も優愛も、似たような言葉を繰り返した。


「撮影は、止められなかった」

「怖くて逆らえなかった」

「私も巻き込まれてしまった」


責任が、薄くなる言葉。

切り分けられて、誰のものでもなくなる言葉。


七海は思った。


私の傷は、誰のものにもならないのに。



44 民事も始まる――責任を“形”にする


刑事裁判が始まった週、七海側は民事も提起した。


茂が言った。


「刑事は“罰”」

「民事は“賠償”」

「被害者救済は、民事でしか形にならない部分がある」


七海は分かっていた。


罰が下りても、

七海の生活は戻らない。


通院は続く。

夜は眠れない日もある。

学校の廊下の気配だけで、体が固まることがある。


それを支えるのは、現実の費用だ。


治療費。

通院交通費。

カウンセリング費用。

学習の遅れを埋める支援費。

削除対応や弁護士費用。

そして、慰謝料。


茂は言った。


「金が欲しいんじゃない」

「金で戻るなら、戻してほしい」

「でも戻らないから、せめて“これだけの現実が発生した”と示すんだ」


民事の訴状が提出される。

相手方の代理人がつく。

答弁書が来る。


そこには、文字が並ぶ。


「争う」

「因果関係不明」

「過失相殺」

「金額が過大」


七海はその紙を見て、吐き気がした。


また、軽くされる。

また、削られる。


咲子が言う。


「七海、見なくていい」

「ここは大人が受け止める」


七海は頷いた。

でも、胸の奥は痛んだ。


“争う”という二文字は、

七海にとって「まだ殴る」という宣言に見えた。



45 二つの法廷、二つの痛み


刑事裁判の日、七海は「被害者参加」の席に座る。


民事裁判の日、七海は「原告」の席に名前が載る。


どちらも、七海が望んだ場所ではない。

でも、七海が押し込められた場所だ。


そして、七海は気づく。


加害者側は、二つの裁判で違う顔をする。


刑事では、反省を言う。

「二度としない」

「申し訳ない」

「未熟だった」


民事では、争う。

「金額が過大」

「そこまでの損害ではない」

「投稿は別人」

「拡散は第三者」


七海は、静かに壊れそうになった。


反省って何?

謝罪って何?

責任って何?


法廷の中で、言葉は簡単に形を変える。



46 七海の決意――「順番」を、法廷に持ち込む


民事の期日が終わった帰り道。

七海は茂に言った。


「……私、怖いけど」

「言う」

「法廷でも、言う」


茂が七海を見る。


七海は続けた。


「更生とか未来の話は、あとでいい」

「まず、私を救って」

「まず、今の被害を止めて」

「まず、責任を形にして」


咲子が言った。


「うん」

「それが、順番」


七海は小さく頷いた。


刑事裁判は、罰を決める。

民事裁判は、賠償を決める。


でも本当は――

社会が決めなきゃいけない。


“被害者救済が先”という順番を。

拡散の速さに負けない救済を。

証拠を残す権利を。

学校の「限界」を言い訳にしない仕組みを。


七海は、まだ震えている。

でも、もう黙らない。







47 刑事と民事が、同じ日に進む


その週は、曜日の感覚が消えた。

刑事裁判の期日と、民事裁判の期日が、互いの影を踏むように並んでいた。


「今日は刑事。明後日は民事」

茂がスケジュール表を見て言う声が、遠かった。


七海は、制服を着る日より、法廷に行く日が多くなるような感覚に襲われた。

同じ街に住んでいるのに、別の世界で生きている。


それでも、法は進む。

遅く、鈍く、でも確実に。



48 刑事:証拠が“言い逃れ”を塞ぐ


検察官が提出した証拠は、淡々としていた。

淡々としているからこそ、残酷だった。


診断書。

打撲の部位と程度。

治療期間の見込み。


そして、メッセージの履歴。

「金持ってこいや」

「持ってこなければ晒す」


さらに、動画の存在を示す記録。

元データのハッシュ。

投稿時刻。

削除申請の受付番号。

転載のログ。


「軽く押しただけ」

「蹴っていない」

「金を取るつもりはなかった」


そう言った言葉が、証拠の前で音を失っていく。


裁判長は静かに言った。


「それは、提出証拠と整合しません」


その瞬間、七海の胸の奥に、ほんの少しだけ空気が入った。

息ができた気がした。


救いは、拍手では来ない。

こういう、たった一行で来る。



49 刑事:被告人質問――“まさか”の正体


弁護人は、被告人に優しく問いかける。


「あなたは、相手を殺すつもりがあったわけではない」

「深刻な結果になるとは思わなかった」

「反省している」


沙代里は泣きながら言った。


「……本当に、まさか、ここまでになるとは……」


裁判長が、少し間を置いて問う。


「まさか、とは何ですか」


沙代里は言葉に詰まる。

母親の方を一瞬見る。

視線が泳ぐ。


「……ネットが……こんな……」


裁判長の声は低かった。


「被害者が殴られたことについては、まさか、とは思わなかったのですか」

「金を要求する文言を送ったことについては」

「晒すと脅したことについては」


沙代里の涙が止まった。


孝介が続く。


「俺は……撮影は止められなかった」

「投稿したのは、俺じゃない」


検察官が静かに言った。


「あなたは、金銭要求の文言を送っています」

「そして“晒す”と脅しています」

「撮影が行われる状況にあなたが同席している」

「“はめるつもりだった”という発言もあります」

「止められなかった、という言葉は、誰の責任を指しますか」


孝介は黙った。

黙ったまま、机の一点を見た。


七海は、その背中を見て思う。


止められなかった。

でも、止めなかった。

その差は、被害者の人生の重さで測るしかない。



50 民事:訴状の中で、現実が積み上がる


民事の初回期日。

七海の名前が「原告」として呼ばれる。


“原告”。


七海は、その二文字が嫌いだった。

訴えたいわけじゃない。

普通に生きたいだけだった。


茂が提出した資料は、分厚い束だった。


1)七海本人の損害

•治療費

•通院交通費

•薬代

•カウンセリング費

•学習支援費(遅れを埋める費用)

•削除申請・証拠保全に伴う費用

•弁護士費用(相当額)

•慰謝料(暴行・脅迫・拡散による人格権侵害・二次被害含む)


そして、ここで茂は、もう一つの束を机に置いた。


2)両親の損害(休業損害)

•警察対応(事情聴取・相談)

•学校・教育委員会対応

•医療機関の付き添い

•裁判準備・期日出廷

•七海の安全確保(登下校の同伴等)

これらのために、仕事を休まざるを得なかった日数と、その結果減少した賃金。


裁判官が確認する。


「原告両親の休業損害も請求していますね」


茂は頷いた。


「当然です」

「子どもが殴られて帰宅した日から、

 私たちは親として“働きながら放置”する選択肢を奪われました」

「休業は嗜好ではなく、被告らの行為によって強いられたものです」


裁判官は淡々と記録する。

だがその淡々さが、七海には頼もしく見えた。



51 民事:加害者側の答弁――争う、切り分ける、薄める


答弁書は冷たかった。

文字の冷たさは、殴る音より長く残る。


「損害額は過大」

「因果関係不明」

「拡散は第三者」

「投稿と被告らの関与は限定的」

「休業損害は必要性が不明」


“必要性が不明”。


その一文を見て、咲子が紙を握り潰しそうになった。


茂は、息を吐いて、言った。


「必要性が不明、だと」

「殴られた顔の子を前にして、

 何も聞かずに、何もせずに、仕事に行けというのか」


七海は、その言葉を聞いて、涙がにじんだ。

責められているのは自分じゃない。

でも、ずっと背負わされてきた“説明責任”が、また来た。


茂は、弁護士と目を合わせる。


「ここから、崩す」

「ひとつずつ、崩す」



52 民事:反論――「休むしかない」ことを証拠にする


次の準備書面で、七海側は休業損害を“感情”ではなく“事実”で固めた。

•休んだ日付と理由

•職場への届出記録

•有給・欠勤・早退の内訳

•給与明細での減収の確認

•通院・警察・学校対応の日時の整合

•七海の付き添いが必要であった医師所見(心理的安全の観点)


裁判官は言った。


「休業の必要性については、相当程度具体的ですね」


加害者側代理人が言い訳するように言った。


「しかし、両親が休む範囲には裁量が――」


茂が、抑えた声で言った。


「裁量ではありません」

「強制です」

「私たちが仕事を休むことで生活が苦しくなることは分かっていた」

「それでも休むしかなかった」

「子どもが壊れていくのを、放置できる親はいません」


その言葉が、法廷に落ちた。


裁判官は何も言わない。

でも、ペンが止まらなかった。



53 刑事:論告――“更生”の前の言葉


検察官の論告が来る。


「本件は、偶発的な衝突ではなく、

 待ち伏せ、暴行、撮影、脅迫、金銭要求という一連の構造を持つ」

「被害者の人格を踏みにじり、社会的に孤立させる危険性が高い」

「“炎上を想定していなかった”という主張は、責任の軽減理由にはならない」

「被害者の被った傷害と精神的苦痛は重大である」


七海は、静かに聞いた。

言葉は冷たい。

でも、冷たい言葉が、七海を守る盾になる。



54 七海の意見陳述――「順番が違う」


七海は立った。


足が震える。

でも、倒れない。


「私は、加害者が死んでほしいとは思いません」

「でも、私の人生が壊れたことを、

 “まさか”で終わらせないでほしい」


声が掠れた。

咲子の手が小さく震えるのが分かった。


七海は続けた。


「学校は、“お気持ちは分かります”と言いました」

「教育委員会は、“手続きが必要”と言いました」

「でも、その間にも動画は広がって、私は眠れなくなって、学校に行けなくなって」

「証拠を残そうとしたら、校則で止められそうになった」


七海は、そこで一度息を吸った。


「順番が違うんです」

「更生とか未来の話は、責任と賠償の後にしてください」

「まず、被害者を守ってください」

「被害者が“助けて”と言うのに疲れない仕組みを作ってください」


七海の声が、最後だけ少し強くなる。


「私は、次の七海を出したくありません」


座った瞬間、全身の力が抜けた。

でも、胸の奥は少しだけ熱かった。



55 そして、裁かれるのは“行為”だけではない


刑事は、罪と罰を決める。

民事は、責任と賠償を決める。


でもこの二つが同時に進むとき、

裁かれているのは加害者の行為だけではなかった。


学校の「限界」。

教育委員会の「手続き」。

社会の「拡散」。

そして、被害者に求められ続ける「証拠」。


その全部が、七海の人生の上に乗っていた。


七海は思った。


自分は、被害者である前に、

ひとりの人間だったはずなのに。


その当たり前を取り戻すために、

今日も法廷へ行く。





56 論告求刑


法廷の空気が、いちばん硬くなる時間が来た。

論告求刑―それは、言葉が“判決の前段”に変わる間だった。


七海は、手のひらに爪を立てないように指を組んだ。

心臓の音がうるさい。

傍聴席の気配が刺さる。

それでも、顔は上げていた。


裁判長が淡々と告げる。


「これより論告求刑とします」


木槌の音が落ちる。

一斉に息が抜けるはずなのに、誰も楽になれない。

論告求刑…。

次に来る言葉を受け止めるための、短い猶予だ。


咲子が七海の肩に手を置く。


「無理しないで、目を閉じてもいいよ」


七海は小さく首を振った。


「見届ける」


茂は何も言わず、ただ頷いた。



57 検察官の論告――「決して軽い罪ではない」


再開。

検察官が起立する。

背筋が真っすぐだった。声も、揺れなかった。


「本件は、決して軽い罪ではありません」


その第一声が、法廷の空気を一段沈めた。


検察官は、淡々と事実を並べる。

だが淡々としているからこそ、ひとつひとつが刃になる。

•待ち伏せという計画性

•集団による威圧

•腹部への蹴り、頭部への殴打、毛髪を掴んで引くという暴行の悪質性

•その場での撮影

•「晒す」と脅して金を要求する言動

•被害者の人格を踏みにじり、恐怖で支配する構造

•拡散による二次被害の深刻さ


そして検察官は、言い逃れの言葉を切り落とすように言った。


「“冗談のつもりだった”」

「“まさかここまでになるとは思わなかった”」

「“炎上するとは思わなかった”」


「これらは、責任を軽くする理由にはなりません」

「むしろ、“結果を想像しないまま加害を行った”という点で、危険性を示します」


七海の喉が鳴った。

涙が出そうになった。

でも出ない。

今は、泣く時間じゃない。


検察官は、最後に声を少しだけ強くした。


「被害者の尊厳は、法によって守られねばならない」

「加害行為が“勢い”や“ノリ”で正当化される社会を、私たちは許してはならない」


そして、毅然とした態度で求刑に入った。


「以上を踏まえ、相当の刑を求めます」


その言葉は、七海にとって“救い”ではない。

でも、初めて社会が真正面から言ってくれた気がした。


――軽い罪ではない。

――あなたの痛みは軽くない。



58 民事判決の日――「5800万円」


民事の法廷は、刑事よりも静かだった。

静かすぎて、判決文の紙の擦れる音が怖い。


裁判官が席につき、淡々と読み上げる。


「主文」


その二文字が落ちた瞬間、七海の視界が狭くなる。


「被告らは、原告に対し、連帯して金五千八百万円を支払え」


五千八百万円。


数字が、七海の頭の中で反響する。

現実感がない。

でも同時に、そこに“現実の重さ”があるのも分かる。


裁判官は続ける。

治療費、通院費、カウンセリング費、削除対応費、弁護士費用、慰謝料。

そして、両親が仕事を休まざるを得なかった分――休業損害。


「本件により原告およびその両親が被った損害は重大であり、

被告らの行為との因果関係は認められる」


茂の肩が、ほんのわずかに落ちた。

咲子は唇を噛んでいる。

七海は、まだ涙が出ない。


裁判官の声は、最後まで淡々としていた。


「仮に支払いが履行されない場合、

民事執行手続により、資産の差押え等が可能である」


差し押さえ。


その言葉で、加害者側の席がざわついた。

保護者の顔が白くなる。

誰かが「無理だ」と小さく漏らす。


でも七海は思った。


無理なのは、私が元に戻ることだ。

無理なのは、殴られた夜をなかったことにすることだ。

無理なのは、晒された記憶を消すことだ。


“支払えない”は、免罪符ではない。



59 法廷の外――怒号


退廷の間際、加害者側の父親が堪えきれず叫んだ。


「こんなの払えるわけがない!」

「うちの生活はどうなるんだ!」


その声が、七海の背中を叩く。


七海は立ち止まりそうになる。

でも、茂が前に出た。


振り返らず、ただ言った。


「うちの娘の生活は、もう壊れました」

「壊したのは、あなた方の子どもたちです」


咲子が七海の手を握る。

七海はやっと涙が出た。


泣きたかったのは、勝ったからじゃない。

判決が出たからでもない。

ただ――ここまで来るのが、長すぎた。



60 七海の胸に残るもの


帰り道、七海は小さく言った。


「……お金で、戻らない」


茂が頷く。


「戻らない」

「でも、“戻らない”ことを世の中が認めた」

「それが、今日の判決だ」


咲子は七海の背中をさすった。


「七海の痛みを、

“気のせい”にも“お気持ち”にもできなくなった」


七海は空を見上げた。

空は変わらない。

でも、今日だけは少し違って見えた。


法は遅い。

社会は冷たい。

学校は逃げる。

教育委員会は手続きを盾にする。


それでも。


今日、二つの法廷で、言葉が形になった。


「軽い罪ではない」

「五千八百万円を支払え」

「支払わないなら差し押さえが可能だ」


それは七海にとって、救いではない。

でも、次の七海を守るための“杭”にはなる。


七海は、握りしめた拳をほどいた。


「……終わりじゃないよね」


茂が言った。


「終わりじゃない」

「これから、履行だ」

「支払いと、拡散の完全な封じ込めと、学校の制度の改善」

「全部、ここからだ」


七海は頷いた。


涙はまだ止まらない。

でも、今日は止まらなくていい。






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