いかせないよ!
気を失わせたベノムとブラッククロウが目を覚ました。
ワイトロウも縛られたままだよ。
説得したけどあんまりいい反応は貰えなかったんだ。
そんな時にワニの人が緊急の報せを持って来たの。
国の軍にこの場所がバレたみたい。
解放されたワイトロウが指揮を執って戦う感じ。
私は助けたいって二人を説得したんだけれど、やっぱり来てくれないんだ。
一人で戦場に行って両軍を戦わせないようにどっちも倒すことにしたんだよ。
ちょっときつかったけど、ベノムとブラッククロウが駆けつけてくれたよ。
ここは町に続く細い道。
二つの軍が交わる場所だよ。
「てえええい!」
「おらあああ!」
「拙者の斬撃をくらえ!」
私達三人はそこで両方から襲ってくる人達を弾き飛ばしているの。
それでもどっちの進行も止まらないんだ。
ハウリングウルフも国を護りたいと思っているし、ワイトロウの方も仲間達を護りたいと思っているから止まれないよね。
気持ちはすごく分かるけど、死なないぐらいでしか手加減は出来ないよ!
「どっちも数が多過ぎだろうが! そろそろ止まればいいのによ!」
「隊長、よく喋っている暇がありますね。こっちは結構手いっぱいですよ!」
「わはは、お前とは鍛え方が違うんだよ!」
二人とも私が手を貸さなくても大丈夫っぽい。
それに下手に殺したりはしていないの。
相手もまた起き上がってくるから辛いけど、そのまま戦いを続けていると、
「お前達は一体どっちの味方だ! 関係ないのだから早く消えてしまえ!」
ワイトロウから怒りの声が聞こえて来た。
「嫌だもん! ワイトロウこそ早く逃げちゃえばいいのにー!」
私は戦いながら反論したよ。
「総司令官たる俺が簡単に逃げられるものか! もういい、全軍距離を取って遠距離攻撃を開始しろ! 奴等が防ぎきれないぐらいの矢や魔法を放つのだ!」
ワイトロウの命令は直ぐに実行されたんだ。
ハウリングウルフの軍を防ぐ私達を利用するように離れていくよ。
そこから一気に遠距離の攻撃に変ったの。
相手側も進めないならと同じように戦法を変えたんだ。
「チィ、接近戦ならともかく、これはちょっとキツイぜ!」
「拙者の刃一つでは防ぎようが!」
前と後ろから同時に飛んで来る攻撃は二人には辛いのかも。
特にブラッククロウは切り傷やかすり傷が多い感じ。
私はキャットスレイヴを大きな盾にした。
ついでに近くに倒れている人達に当たらないようにもしないとね。
私は色々しながら白猫ちゃんを召喚して治療させたもりしていたの。
撃ち込まれる攻撃は全部防いだけれど、視界が塞がれちゃうからあんまりよくはないのかも。
「今だ、突撃いいいい!」
「敵に後れを取るな、こちらも行けえええ!」
『おおおおおお!』
『おおおおおお!』
この隙をついてまた戦場が動いちゃった。
私の目が届かないところでぶつかり合う二つの軍。
もういい加減にしてほしいよ。
この膠着状態を崩すにはもう一つ何かあったら……。
「ワイトロウ様、住民の避難が終わりました! そろそろ先頭は町を脱出出来る頃です!」
何度か聞いたことのあるワニの人の声。
皆の避難が完了したみたい。
「む、そうか。報告ご苦労。お前も脱出通路に急げ! こちらも順次撤退する! 遠距離攻撃を展開しつつ全軍後退しろ!」
そしてワイトロウの軍が少しずつ離れていくよ。
でも逆側の攻撃はまだまだ止まらない。
ドンドン突撃してくるから対処しなきゃ。
「はぁはぁ」
「し、死にかけた」
「やっと止まったねー!」
それが終わったのは、ワイトロウの軍が見えなくなって暫くしてからだったよ。
ベノムとブラックウルフは肩で息をして結構疲れている感じ。
私はまだまだ動けるからそれでも油断はしてなかったんだけど、ハウリングウルフの軍が止まって一人の人物が歩み寄ってくるよ。
「よくも邪魔をしてくださいましたな。お客人だからと容赦は出来ませんぞ」
出て来たのはリングルードだったの。
顔が完全に怒っている。
「べー!」
と私は舌を出したよ。
「おう、リングルード、ワイトロウは……ホワイト王子はさっきまでここに居やがったぜ。約束の報酬を貰いてぇんだがな」
「リングルード殿……当然拙者の分も頂けるのですよね?」
こんなことになっても二人はお金の話しをしているよ。
「ふざけるな! お前達のせいでどれ程の死傷者が出たと思っている!」
「怪我人はともかくだ」
「死人は居ませんよね?」
「どっちもゼロだよ! 見ていてね、今全員治しちゃうんだから! 猫猫召喚……白猫ちゃんの……大行進!」
魔法の言葉を唱えると、空中に出来た渦からポンポン白猫ちゃんが飛び出した。
その子達は倒れている人達の下に向かい傷をペロッと舐めたんだ。
流れた血も傷口だって、全部まとめて治したの。
もう倒れている人は誰も居ないんだよ。
でもこれを使うとちょっとだけ魔法が使えなくなっちゃうから注意しないとね。
「嘘をつくな、おいお前、至急死傷者の数を調べるのだ! 一人でも怪我人が居たら奴等に責任を取らせてやる!」
リングルードは近くの部下を走らせてその数を調べようとしているよ。
でも大丈夫、ちゃんと皆の気配を感じて治したんだから。
暫くするとさっきの人が戻って来てリングルードに耳打ちしているの。
その報告を聞くと驚いたような表情をしたんだ。
「ご、五十人だそうだ……」
そう云っているけど、絶対嘘だ。
目を逸らしているし。
「おい嘘つくなよ。ゼロだったんだろおい! だったら連れて来いよ、このモモが直ぐに治してやるぜ!」
「モモ殿、またその奇跡を見せてあげてください!」
ベノムとブラッククロウは嬉しそうに私の肩をバンバン叩く。
でも今は魔法を使えないんだよ。
本当に居たらちょっと困るけど、きっと大丈夫だよね。
「うん!」
私は自信をもって頷いたの。
「ふ、ふん、その話はもういい。怪我人をいくら治そうと貴様達の罪は変わらないのだからな! さあ奴等を捕らえよ!」
リングルードが命令を出すと多くの人達が私達を囲んできたよ。
「モモ、ブラッククロウ、今回は手を出すなよ。心配するな、そうたいした事にはならねぇよ」
「分かったー!」
「了解しました」
それはいいけど一人残した御主人が心配だ。
呼んだら来てくれないかなぁ?
「御主人、終わったよー!」
私は大きな声で叫んでみたの。
ちゃんと聞こえたみたいで遠くで御主人の鳴き声が聞こえてくる。
その気配が近づいて、私達を囲んだ兵士達の足の下から抜けてきた。
最後はピョーンと飛び跳ねて、
(モモ、がんばったね!)
「わーい、御主人と一緒だよー!」
私の胸にうずまったの。
「ああそうだ、預けてあった金も返してくれよ。正当な報酬だろ」
「舐めるなよ若造が、貴様等なんぞにやる物などなにもないわ!」
変なことを云うからベノムはリングルードに殴られたりしている。
それを見ていたリングルードはすごくガッカリ項垂れているの。
それで私達は王様の命令で部屋に軟禁されちゃったんだよ。
他国の使者である私達を牢屋には入れられなかったの。
御馳走じゃなくても普通のご飯を出してくれるからそんなに悪くはないのかも?
「ベノム、このまま何にもしないの?」
「ま、現状は動けねぇな。仲間のことも気になるが、奴等もここと同じぐらいのことはして貰えているだろうぜ。心配は要らねぇってことだな」
「隊長殿、拙者の金は! 金はどうなるのですか!」
「……それはまあ、諦めるしかないだろうな。残念だけどな。はぁ……」
「うおおおおおお!」
二人とも落ち込んでいるよ。
やっぱりお金が欲しかったんだよね?
それでも助けてくれたんだから感謝しなきゃ。
私は御主人と一緒にちょっとだけ柔らかいベッドに寝ころんだ。
そのまま三日、同じような生活をしていたんだけど、朝方にガチャッと部屋の扉が開けられたの。
「出ろ、貴様等の処遇が決まったぞ」
やって来たのは部下を連れたリングルードだ。
これから私達はどうなるのかなぁ?
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




