尋問しようそうしよう
リングルードから自称魔王軍を捜し出せと云われて町に出た私達。
でもハウリングウルフは皆逃げ出して話しは聞けなかったの。
それでそれ以外の人に聞いてみようってことになってベノムが人の女性を見つけたんだよ。
その人に話しを聞いても魔王軍のことはあんまり知らない感じだったけど、ハウリングウルフに話しを聞く方法を教えてもらったんだ。
牙の御守りってペンダントなんだけど、持っているだけで良いんだって。
それでも必要な情報は得られなかったよ。
だからね、魔王軍を直接捜す事になったの。
そんな時に迷子を見つけたから助けに行こうとしたんだけれど、実はその子? というか小さな老ゴブリンが魔王軍の一人だったよ。
私はポーンと倒したんだけど、町にはまだいっぱい潜んでいるらしいって。
「おい、テメェ等、子供相手に何を……ってガキじゃねぇじゃねぇか!」
ベノムが倒れたゴブリンを見て来たみたいだけど、これは子供じゃないんだよ。
全然おじいちゃんなんだ。
「このゴブリン? 魔王軍って云ってたよ」
私はベノムに教えてあげたんだ。
「おい、本当かモモ?」
「本当だよー」
「はい、拙者もこの耳で確かに。間違いはないかと」
「ってことはこれで解決か。こいつを突き出してリングルードの奴に文句を言ってやるぜ!」
ベノム解決したことに喜んでいるみたい。
「でもね、他にもこの町に居るって云ってたよー」
私はこのゴブリンが云ってたことを伝えたの。
「そいつは面倒そうだ。だがこいつが魔王軍って云ってるのは本当なんだろ。だったら問題ねぇぜ! そいつらのことはこの国の問題なんだからな! 俺等は高見の見物と行こうぜ! わはははは!」
でも全然関係ないって感じで笑っているよ。
(ああ、もう完全に他人事だね。まああんな態度をされたら仕方ないよね。じゃあこのゴブリンさんを連れて行こう)
「そうだねー」
私はゴブリンのアガートをキャットスレイヴで拘束し、お城に運んで行ったんだ。
「なるほど、このゴブリンが魔王軍の一員だったと、そう云われる訳ですな」
それで前に通された応接室でベノムがリングルードと話しているよ。
「おう、間違いねぇぜ、こいつが自分で云ってたんだからな! だから仲間達を解放しやがれ!」
「しかしながら、このゴブリンとあなた方が仲間でないとは言い切れませんな。いやいや、むしろ仲間だからこそ低俗なゴブリンを差し出したのではないのですか? この程度の存在を自分達の懐が痛まないと考えたのでは?」
これはあんまりいい感じにはならなそう?
「どうあっても俺等がやったって云いたい訳かよ!」
ベノムはギリギリ歯ぎしりしている感じだよ。
「ええ、本当に証明したいのならば敵の首魁を捕らえてきていただきたいですな」
「そうかよ、だったらこいつは渡せねぇな。俺等にとっても大切な情報源だからな!」
「構いませんよ。引き続き調査をお願いします」
リングルードは相変わらずこんな感じなの。
「おい、行くぞお前等。調査再開だ!」
それで私達はまたお城の外に出たんだよ。
「隊長、取りつく島もありませんでしたね」
「いうな、結構ムカついてるんだからよ! あのジジイ、ぜってぇ見返してやるぜ!」
「でもどうするのー?」
「そりゃあまあ、こいつに聞くしかないんじゃねぇの。口を割るかは知らねぇけどな」
ベノムはゴブリンのアガートを睨みつけてる。
「しかし、だ。こんな町中で話を聞く訳には行かねぇよな。人気のない場所に連れて行かなきゃだな」
「ベノム、悪者みたいだよー?」
「うるせぇ、今はそれしかねぇだろうが!」
「モモ殿、今は従っておきましょう。これも仲間達のためですから」
ブラッククロウの意見も同じみたい。
「うーん、分かった」
私は大人しく従うことにしたの。
それで人気のない裏路地に行って人の居ない朽ち果てそうな小さな小屋の中でベノムがアガートをペチペチして起こしたんだよ。
「うぉぉ、ここは……?」
「ようやく起きてくれやがったか。色々と聞きたい事があるんだけどよぉ、快く喋ってくれるよな?」
ベノムはやっぱり悪役チック。
あんまり付き合いたくないんだけれど。
「愚か者め、この魔王軍前線作戦指揮官、アガード・ビーツが口を割るとでも思ったのか!」
「随分威勢がいいじゃねぇか。自分の今の立場を理解してねぇ訳じゃねぇよな?」
「この我に拷問など無駄なことよ。やめておくがいい!」
アガートの方も強情そう。
「そんなの試してみないと分かんねぇじゃねぇの。まずは利き腕でも切り裂いて……」
ベノムも剣を抜いちゃうし、事情を聞くためでもあんまり酷い光景なんて見たくないよ。
「ダメだよベノム、おじいちゃんが可哀想だよー」
だから背後から突き飛ばして止めちゃったんだ。
「うおおお!?」
(うわー)
「た、隊長殿!?」
ベノムは突然の衝撃にビタンと地面に倒れて持っていた剣が空中で回転して首の隣あたりの地面にぶっ刺さったの。
ちょっとやり過ぎたかもしれない。
「あああ……あぶねぇだろうが! 下手したら死んでたぞオイ!」
ベノムも真っ青な顔で怒ってるし。
「でも無事だったから大丈夫だよー」
「俺は大丈夫じゃねぇんだよ! お前は一体どっちの味方なんだ!」
「うーん、お菓子くれる方? ご飯でもいいよー!」
(あー、モモならそういうと思ってたよ……でも今はそういうことは云わない方が良いんじゃないかな?)
「そうなんだね?」
私は御主人をむぎゅってしてみた。
「……よし分かった、菓子ぐらい買ってやるからちょっと黙っててくれ! お前と話していると頭痛がしてくる」
お菓子は欲しいんだけど……。
「でも可哀想だよー?」
「俺だってやりたくねぇんだよ。仲間の為なんだから仕方ねぇだろ!」
「そうですぞモモ殿、まずは仲間の命を最優先に考えるべきではありませんかな?」
(モモだって友達がいなくなるのは嫌でしょ。二人共そう考えてるんだよ)
「うん、知ってるよ。でも可哀想なんだもん」
お年寄りを虐めたらダメなんだよ。
「ふぅ、しゃーねぇな。だったら痛めつけるのは無しにしといてやらぁ。それだけが拷問じゃねぇんだからよぉ。逆に腹がねじ切れるぐらい笑わせてやろうぜ」
「あー、それならいいねー!」
(あ、いいんだ)
「確かにそれならば罪悪感もそれほどでもありませんな。では拙者もお手伝いいたしましょう。押さえている間にその手で昇天させてやってください」
「おう、良かったなジジイ。美女にくすぐられるなんてことは滅多にねぇんだぞ。言いたくなったら云いやがれ。よし、モモ、ブラッククロウ、飛びかかれええええ!」
「はーい!」
「承知!」
私とブラッククロウはアガートに襲い掛かったんだよ。
「愚か者め。我がくすぐりなどで口を割ると思うにゃぎゃははははははははははは!」
直ぐにベノムも参戦してアガートは全身をねじれさせるぐらいに大爆笑しているよ。
しばらく続けていると、お腹がビクビク痙攣して顔も涙を浮かべながら引きつった笑顔のままの状態になっちゃった。
「……わ、かった……言うからやめて……くれ。これ以上は……む……り」
「よーし、じゃあちゃっちゃっと白状してもらおうか!」
「……だが……もう少し待ってくれ。……落ち着かないと真面に喋れん」
「いいだろう」
アガートはまだハァハァいってるから落ち着くのを待ったんだ。
お茶とかあげて待っていると、ようやく口を開くっぽい。
「我等魔王軍は所謂人と認められ無かったり蔑まれて来た者の集まりよ。我等ゴブリンも人の言葉を理解しているのに関わらずモンスターと嘲られて退治されてしまうのだぞ。そんな世界が許せるものか! ならばこそ我等魔王軍は世界に反逆の牙を剥いたのだ!」
それで自分達の組織の主張を力強く述べてるよ。
(この世界でもそんなことがあるんだね)
「ふーん?」
正直私にはよく分かんない。
「ほぉ、じゃあ何でこんな悪戯をしてるんだ。そんなので世界が変わるとでも思ってるのか?」
「まずはその名前を知られるところから。例え悪戯であろうと人々に知れ渡ればそれは成功というものだ! しかし安心しろ。我等は人を滅ぼしたり傷つけようなどとは思っていない。むしろ愛を持って同居しようと言っているのだ。これは素晴らしいことであるぞ!」
「そうかそうか、お前等の主張は立派だな、俺達も仲間が人質に取られてなきゃ賛同してやっても良かったんだがよ。今はそうもいってられねぇんだ。早く仲間の居場所をげろっちまえや!」
「誰が仲間を売るものか! こうしている間にも着々と作戦が実行されているのだ。さあ体力が回復した我はまた拷問にも耐えてみせるぞ。このまま無為な時間を過ごすがいい!」
「そうかそうか、モモ、ブラッククロウ、やっちまえええええ!」
「くすぐるよー!」
「これは仕方ありませんな!」
「ぎゃああああはははは!」
そしてまたくすぐり続けたんだけど、アガートは全然口は割らなかったんだよ。
このまま続けてても無理だってことで別の魔王軍を捜してみることになったの。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




