追いかけよう
千を超えるゾンビの群れに遭遇した私はキャットスレイヴを使って安全に殲滅したよ。
それからディズの気配を辿って大きな扉のある部屋に到着したの。
開いて無かったからズバッと斬って中に入ると、シャンデリアの上にディズが休んでいたんだ。
そこには二人の居たみたい。
どうやらこの国の王様と王妃様らしいよ。
二人を連れてこの部屋を脱出して祈りの間ってところに向かうことになったの。
でもちょっと偉そうで嫌な感じ。
道案内してもらってその部屋に向かったんだけど、小さな部屋で二人っきりで休みたいと云うからそれを受け入れたよ。
私はキャットスレイヴでゾンビが入って来ない檻を作って安全に時間を待っていると、中からグゴゴって音が聞こえたの。
呼びかけても返事がなくて入ってみると二人は居なくなっていたんだ。
何か置いて行かれたみたい?
私とディズは部屋を探して隠し通路を見つけたよ。
そしてその中に入って行ったんだ。
隠し通路の中は天井も壁も床まで煉瓦造りになっている道だった。
かなり長そうで幅や高さもあるけれど、灯りがあって結構明るいの。
今のところはこの場所にゾンビが居る気配はないよ。
それと私達を置いて行っちゃった二人も見える範囲には居ないかな。
その気配はここからかなり離れているみたい。
走って行ったのかな?
「おい、急ぐぞ。俺達なら直ぐに追いつけるはずだ。奴等には色々聞きたいことがあるからな!」
「うん、走るね!」
私達も二人を見つけるために走り出したんだ。
一分もすれば追いつけるかな?
そう簡単に思ってたんだけど、
「うお!?」
この道には結構な罠が仕掛けられているみたい。
走っている速さも相まってもの凄いスピード感で飛んで来る銀色の太い針をディズはギリギリで避けたんだ。
「チィ、王族だから罠の位置も把握してるってことかよ。俺は飛んで行くからお前も気を付けて進めよ!」
「うん、分かったー!」
私はそう返事して勢いを落とさずに走ったんだよ。
通り過ぎた後に落ちてくる天井とか、踏んで通り過ぎたら穴が開いちゃう落とし穴とか、針以外は気にしなくてもいい感じ?
でも何でだろう、もう追いついてもいいはずなのに二人の姿が見えてこない。
気配も遠ざかっている気がするよ。
道がある方向とは違う場所なのかなぁ。
また隠し通路とかあったりして?
ちょっと考えて足を止めてみたんだ。
「おい、何で止まる? 急がねぇと逃げられるぜ!」
「でも気配はあっちの方にあるよー?」
私はその方向に指をさした。
「はぁ? ……いや確かに奴等の足ならもう追いついてるはずだぜ。ってことは何処かに抜け道があったのか? だが流石にここを全部探すのは手間だぜ。さっきの部屋より随分でかい通路だしな」
「適当に壁を切ったら道が出てこないかなー?」
左の壁の方向で離れて行くからたぶんそっちの壁だよね。
「そんな簡単に出てくるなら苦労はしねぇんだが。その剣なら意外とやれるんじゃねぇか?」
「うん、やってみるよー」
私はキャットスレイヴを分岐させて左手方向の壁を天井近くからバラバラになる位に切り裂いた。
崩れる煉瓦の先には土の壁があったよ。
「ここじゃねぇか……って言ってる場合じゃねぇ! 天井が崩れてきたぞ! どうにかしろよおい!」
「うん、防いじゃうね」
斬ってるのとは別の部分をシールドにして落ちてくる煉瓦を防いだよ。
「……物量も変わってるみたいだし、やっぱりそれ便利すぎねぇか?」
「便利だよー!」
それで道を戻って行ったの。
来た時に仕掛けは作動してたから罠はもうなかったよ。
「あ、見つけたよ!」
大体一分もしない内に隠し通路を見つけたんだ。
「よし、今度こそ追いつくぜ!」
それから道を進んで行くと、直ぐに二人の姿を発見したんだ。
「おい待て、言うこと云ってから消えてけや!」
「な、貴様等、どうやってここに!?」
「あの罠を潜り抜けて来たのか!」
王様と王妃様はすっごい驚いてるよ。
それでも逃げようとするけど、
「色々苦労して来てやったんだよ! 良いから止まれコラ!」
ディズは二人の前に回り込んだよ。
私は二人の後ろに居るからもう逃げられないの。
「王に向かって無礼者め! 貴様、こんな時でなければ首を跳ね落としてやるところだぞ!」
「いいえあなた、ここまでくればもう危険はありませんわ。もういっそ殺してしまいましょう」
「なるほど、よい考えだ。では切り殺してやるとしよう! まさか王の命令に逆らいはしないよな?」
王様は王妃様の意見を聞いて腰にあった剣を抜いちゃったんだ。
「そんな命令聞くかバカ野郎。王様こそ俺らに勝てるつもりとは恐れ入るぜ。今まで顎で使われて色々ムカついてたところだ。この国の王様とはいえ、そろそろ仕置きしてもいい頃だぜ!」
何か王様と戦うことになるみたい?
うーん、私はどうしよう。
王妃様の方は戦う意思がなさそうだし。
ここはディズの活躍を見守っていよう。
「行くぜオラアアア!」
ギャンと叩きつけられた剣に反応して受け止める王様。
思ったよりはやるみたいだけど、
「こんな時だ、多少は大目にみてもらうぜ! オラアア!」
「うぐああ!」
ディズは剣の刃がついてないところで王様の手の甲を弾いたの。
それで痛そうに蹲っちゃった。
「あなた、大丈夫ですか!」
心配して駆け寄る王妃様。
私もちょっと近寄って確認してみたよ。
「心配するな、この程度なんてことはない。貴様、王にこんな真似をしてタダで済むと思うな……」
ただ叩かれただけだから血も出てないみたい。
それで怖い顔して王様は起き上がろうとしてたんだけど、
「ぐああああああ!?」
突然胸を押さえて苦しみだしたの。
「ディズ、やり過ぎたのー?」
「バカお前、今の見てただろ。俺はちょっと手の甲を叩いただけだわ!」
「えー、でもすごく苦しそうだよ? 目の横の辺りに青い血管が浮き出てたりしてるもん。顔も青くなってきたみたい」
それになんだか皮膚がグニャってなり始めているよ。
「は? そいつはもしかして……まさかここでゾンビ化か!? ここにゾンビなんていなかったのに何でだ!?」
「いやあああ、あなたああああ!」
「おい行くな、やられるぞ!」
それを見てディズと王妃様が驚いているよ。
これがゾンビになる兆候なの?
色々意地悪されたけれど、目の前でモンスターなんかにさせたくないよ。
王様はまだ人間、だったら助かるかもしれない。
無理かもしれないけど、試すだけはやってみよう。
そう思って私は心の中にある光に意識を集中させたの。
その光は輝きを増して力に変わっていくんだよ。
「猫猫召喚! 出て来て、癒しの猫ちゃん!」
私が呪文を唱えると空中に渦が現れた。
そこから白猫ちゃんが飛びだしたんだ。
ニャーと鳴き声を上げてそっと王様にそっと近づいて行くと、ペロッと体の一部を舐めたよ。
でも、それをきっかけに、
「ぎゃあああああああ!?」
王様からもの凄い悲鳴が。
「お前、王に何をした、私の王に何をした! もし何かしたのならば許さんぞ! この手で成敗してくれる!」
「おい落ち着け、下手なことをしてるようには見えねぇだろ! ちょっと黙ってろって!」
ディズが王妃様を押さえてくれている内に、
「治してるんだよ。ねぇ白猫ちゃん、大丈夫だよね?」
ちょっとだけ不安になったから白猫ちゃんに聞いてみた。
大丈夫と、ニャーと鳴いて胸を張っているよ。
じゃあこれは治すのに必要なことなのかも?
そのまま見続けていると、王様の顔が少しずつ元の顔色を取り戻したみたい。
でもバタっと倒れちゃったんだ。
「おい、どうなった!?」
「ご無事ですか王よ!」
二人が心配しているから私は確認してみたんだ。
うーん、今は普通に息をしているみたい。
もう苦しそうな表情でもグニャグニャにもなってないよ。
「助かったのかも?」
私は白猫ちゃんに聞いてみた。
うんと鳴いて消えていったの。
「そうか、そいつは良かったぜ。だがまだ油断はするなよ。触らねぇようにその剣で運んでやれ」
「うん、そうするねー!」
私はキャットスレイヴで台を作ってその上に王様を乗せたんだ。
「んじゃとりあえずこの城から抜け出そうぜ」
「そうだねー!」
それからこの通路を歩きだそうとした時、
「待つのだ貴様……いえ、お二人とも。我が王をお助けいただき感謝いたします。今までの御無礼をお許しいただきたい。遅くはありますが、私も協力させていただきたいのです」
王妃様が今までのことを謝ってくれたよ。
もう意地悪はされないのかな?
「うん、いいよー!」
だったら私は怒ったりしないんだ。
直ぐに返事をしたんだよ。
「まあ俺もちょっと頭に血がのぼってただけだしな。謝ってくれればまあ……それに聞きたいことがある。どうしてこうなったのか初めから聞かせてくれ」
それから通路を歩きながらディズが質問するみたい。
「ええ、何でも答えましょう。あれは……そう四日前のことでした。グラファア・ズ・ドラグライム、我が国の魔導研究員が数人の同僚を従えて我が王に反旗を翻したのです」
「待ってくれ、そいつはあれか、黒い包帯を巻いた奴であってるよな?」
「黒い包帯? ああ、それは人ではりません。グラファアが作り出した人造人間です」
「人造人間だと?」
「ええ、私も彼と話してみたことがありますが、知能も高く会話さえできるほどのものでしたよ。ただ、その素顔はとてつもなく醜悪なものでしたから私が隠すように命じました」
「なるほど、そいつを操ってこの町を破壊させていたってことだな」
「そうではありません。彼は我等の味方になってくれたのですから」
「はぁ? んじゃグラファアはどうなったんだ?」
「人造人間ギードの裏切りによりグラファアの作戦は失敗しました。彼等は城からの脱出を図り、その際に仕掛けていた罠を使って城に居た者達をゾンビに変えてしまったのです。そのためにまんまと逃げられてしまいました。ですが我等も指を咥えて見ているだけではありません。ここには優れた兵も多く居ましたから。まずゾンビが町に放たれないように結界の壁を作って鎮圧に出たのですが……」
「ゾンビの再生能力でどうにもならなくなったって訳か。城の中じゃ燃やす訳にもいかねぇもんな。だが結果がこうなっちまったんじゃもう覚悟するしかねぇぜ?」
「ええ、我等が脱出した後、この城は完全に焼却しなければなりませんね」
王妃様は悲しそうな感じだ。
助けてあげたいとは思うけど、あのゾンビを倒すには燃やすしかなさそうなの。
グラファア、ちょっと許せないかも!
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




