行方は
妖精を捕まえたけど部屋はドロドロに融けて崩れてくる。
私とベノムはそこから脱出し、熱くなったキャットスレイヴを地面に落とした。
それはベノムに任せて私は待たせていた御主人を迎えに行ったんだよ。
無事に合流して戻ったけれど、ベノムはキャットスレイヴに閉じ込められている妖精を見てどうしようかと悩んでいた。
私は箸を作ってみたけど、それじゃあ持てないからダメなんだって。
それで誰か来るのを待って運んでもらうことにしたんだよ。
燃えそうになりながらも無事にお城の庭に運び、封印術が使えるアリアが呼ばれて炎を封印しちゃったんだ。
それで何か私はこれまでの事を説明しなきゃいけないっぽい。
私はアリアに引っ張られて部屋に戻ったんだ。
「さて、落ち着いたところで話をしましょう。別に怒っていませんけど、ちょっとぐらい相談してくれても良かったんじゃありませんか?」
「うん、ごめんねアリア」
(ごめんなさい)
私と御主人は素直に謝ったよ。
「でもアリアが魔法使えるなんて知らなかったよ。すごいねー!」
「まあ言ってませんでしたから。自分から言うとなにか自慢話みたいでしょ」
「ふーん?」
私だったらいっぱいお話ししちゃうけどなー。
「そんなことよりあの魔物のことを話しましょう。あれはただの妖精ではありませんでした。どちらかといえば魔物のような存在ですね。ですがあの小ささであの炎の力は異常といっていいでしょう。不自然といっていいぐらいです。まるで誰かに作られたかのような……」
「あー、もしかして前にあった……あの、えっと……誰?」
顔は出て来たけど名前が出て来ないんだよ。
「私に聞かれましても分かりませんけど」
アリアにもわからなかったけど、
(あー、もしかしてあの人じゃない? ほら、あの……その……グリマンとかハウマーだよね! 人間じゃなくなって魔物になっちゃったやつとか)
御主人が思い出してくれたんだ。
「うん、そうだった、すごいね御主人!」
(えへへ)
答えが出てスッキリしたし、感謝して御主人の頭をなでなでしてあげたよ。
「ということはグラファア・ズ・ドラグライムの、他国の介入があったということでしょうか? そう考えれば色々と見えてきそうな感じですね。まあとにかくあれは能力的にも町中に居ていいものではありません。そもそもこの町には危険な魔物が入らないように結界が張られているのです。それを通り抜けることは出来ないはずなんですが……」
アリアはちょっと悩んでるみたい。
私も考えてみよう。
「うーん、穴掘ったんじゃないのかなー?」
「地下ですか、確かにその可能性はありそうですね。一番目立たずに侵入できそうなのは……町の最奥にある穴倉の住処でしょうか。ほら、一度グリフ様に連れられて行ったと云っていたではありませんか。あそこですよ」
「あー、私、覚えてるよー! 洞窟の中に人が住んでたところだねー!」
(モモが魔法を使って何人か立ち直らせたところだね)
「あまり時間が経つと手掛かりが消えてしまうかもしれませんね。モモさん、一度行ってみませんか?」
「いいよー!」
私はアリアの提案に頷いたよ。
「でも他の人に言わなくていいのー?」
「ええ、本当にあるか見に行くだけですから。ちょっとした散歩みたいなものですよ。では直ぐに用意いたします」
アリアは自分の部屋に戻っていく。
ちょっと待っていると、
「モモさん、お待たせいたしました」
お出かけ用の衣装に着替えて来たよ。
綺麗なものじゃなくて動きやすそうな短パンとかにしたみたい。
杖とか持ってやる気充分かも。
「モモさん、また誘拐とかされたくないですから、ちゃんと護ってくださいね?」
「ぜーったい護ってあげるよー! 私に任せといてー!」
私は力強く頷いたよ。
(僕もちゃんと見張ってるからね!)
「ええ、お願いしますね」
それから私達は穴倉の住処に向かったんだ。
道は覚えてないけど大丈夫。
ピョ―ンと屋根の上を跳んで行けば迷うことはないんだよ。
「じゃあ二人とも私に掴まってね」
(うん、お願いね)
「まあその方が早そうですね。ではお願いします」
私は二人を抱えながら移動して穴倉の住処に向かったんだ。
そこは前に見た時とほぼ変わらない一人入れるぐらいの雪のかまくらみたいな土の洞窟がいっぱい並んでいるよ。
百個、二百個、もっとありそうな感じで、誰の喋り声も聞こえない静かな場所だ。
「さて、この場所にあるなら何かしらの形跡があると思いますが。ここも結構広いですからね、ゆっくり見て行きましょう」
「うん、探してみよう!」
(また誘拐されないように一緒にね)
「そうだねー!」
私達はこの区域を隅から隅まで見て行ったんだよ。
誰かに襲われるようなこともなくて良かったんだけど、結局何にも見つからなかったんだ。
それでもう帰ろうってことになったんだけど、
「あの……」
穴倉とは別の場所から私達に声がかけられたんだ。
感じからして小さな子かな。
全く危険な感じじゃないけど、私はアリアを護る様に前に出たんだよ。
「なーに?」
やっぱり小さな男の子だ。
少し汚れた感じの衣服だけど、ここの住人とはちょっと違う感じかな。
私は目線を合せるようにしゃがんだよ。
「前にリディを……猫を出してくれたお姉ちゃんだよね。この前はありがとう。俺、ビュートっていうんだ」
目の前の子は私に頭を下げたよ。
そういえば前ここに来た時に子猫を召喚したんだった。
ここで知り合ったルーカは今もお城でメイドの修業中だ。
その時に一緒に子猫を拾ってくれたの一人なのかも。
「ビュート、またここに戻って来たの?」
「違うよ、たまにこの場所に戻って、もう戻らないぞって決意を固めてるんだよ」
「そうなんだー?」
「お姉ちゃん達はなんでここに来たの? また猫ちゃんを出すの?」
「出さないよ。ここにはね、穴? を探しに来たの。ねぇ、何か知らないかなー?」
「穴? 穴ならそこにいっぱいあるよ」
ビュートは人が入っている穴を指さした。
確かに穴はいっぱいあるね。
「いえ、そういうのではなくてですね。このぐらいの小さな穴を探しているんですよ。地面かどこかにあるんじゃないかと思いまして」
アリアが手を使って大きさを教えたよ。
「もしかしたら……」
子供が答えようとした時、カンカンと何かを鳴らす音がした。
「何かの警鐘という感じではないですよね?」
「もうすぐ食事の時間なんだよ。ほら、皆が穴から出てくるだろ。配給される食料を貰ったり食べたりして戻ってくるんだ。でも丁度良いかもね、ほら、皆が居た中までは調べて無いだろ。俺も手伝うから見て行こうよ」
「確かに、そこにあるかもしれませんね。ではモモさん、急いで見て来てください!」
「アリアは行かないの?」
「私達は逆側から行きます。モモさん一人の方が早いでしょ。その代わり何かあったらすぐに戻って来てくださいね。ここはちょっと怖いんですから」
「うん、急いで探して来るよー!」
(モモ、行ってらっしゃーい)
「行ってきまーす!」
私は皆に手を振ってこの場所の端に向かう。
一軒一軒中を見て回ったんだけど、ずっと同じ景色で目が回ってきそうだったよ。
一個、二個、三個、四個、いっぱい、いーっぱい移動し続けて、
「あー、あったよー! アリア、こっちにあったよー!」
穴の片隅にあの妖精が通れそうな穴を見つけたんだ。
意外と大きくて御主人でも通れそうな感じだよ。
私は声を出してアリアを呼び寄せると、それを確認してもらったの。
「これは間違いないですね。あの魔物の魔力残滓が感じられます。やはりここから入って来たのでしょう」
魔法の学校? を卒業しているアリアにはわかるみたい。
「ここの人は気が付かなかったのかなぁ?」
「さあ? 気が付いたとしても報告はしなかったんじゃないでしょうか。人が居ない時を見計らったのかも知れませんし」
「まあ、たぶんそうだね。あの時の僕もきっとしなかっただろうし……」
手伝ってくれたビュートもそう云ってるよ。
「とにかくこの穴を調査してどこから来たのかを調査しましょう。丁度良い大きさの方もいらっしゃいますし」
アリアは御主人を見ている。
(あれ? もしかして僕? 行かなきゃいけない感じ?)
「モモさん、御主人さんの言葉がわかるんでしょ。頼んでみてはくださいませんか」
「うん、いいよー!」
私は御主人を見つめた。
(まあ、やるんだけどね)
「御主人、危なくなったら戻ってね」
(うん、なるべくがんばります)
御主人は恐る恐る穴の中に入って行った。
私はその気配を追って行こうかな。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




