ブレードバード隊
お勉強とかがなくてのんびりした日。
私は部屋ですやすや眠っていた。
でもお腹が空いてちょっと起きようかなと思った頃に知らない二人の気配が近づいて来たんだよ。
やっぱり私の部屋の前で止まって声をかけてきたんだ。
でも眠いから無視しちゃったんだけど、ベノムって人が窓から覗いてバンバンやってきた。
うるさいって言って追い払ったんだけど、もう眠れなくなっちゃったから食堂にご飯を食べに行ったんだ。
でもそこにも二人が居て絡んで来ようとしたんだけど、何か知らないけど逃げて行って美味しいご飯を食べたんだよ。
そしてしつこく三度目でブレードバード隊の隊舎に連れていかれてそこに入団させられちゃったんだ。
私はこれからどうなるんだろう?
ブレードバード隊は人と亜人の混合チームだ。
ベノムと同じく翼が生えた人とか、左腕のみが獣みたいになった人とか、エルフさんとかもいるんだよ。
自己紹介してくれたけど数が多過ぎてまだ混乱中なの。
仲良くなるためにも覚えなきゃね。
今私と御主人はお菓子を食べながら皆の訓練をのんびり見学中だ。
飛んだり跳ねたり戦ったり、実力も結構ありそうな感じ。
「どうだ俺の隊は、楽しそうで良い感じだろ! お前も参加してもいいんだぜ!」
この隊の隊長ベノムが私に声をかけてきた。
でも私は首を横にふってお菓子を口に運んだんだよ。
「おいおい、どんだけ食いしん坊なんだよ。食い物で釣るのは悪手だったか?」
「まあまあ、そういう約束で入隊してくれたんですから良いじゃありませんか。その内打ち解けてくれますよ」
「まあ今日は入隊してくれただけで良しとするか。じゃあ今日は適当に切り上げて……」
という感じだったんだけど、この隊舎に走ってくる気配が一つ。
ガシャガシャ音がしているから鎧を着た兵隊さんかな?
その人はベノムの下にやってきてバッと敬礼したんだよ。
「ベノム隊長、見張り台より伝令です。町で火災が発生したとのこと、至急出撃して出来れば鎮火まで行ってください!」
なんか大変なことが起こってるみたい。
「緊急じゃあしょうがねぇな。テメェ等仕事の時間だ、遅れずついて来いや!」
『おー!』
ここに居る全員が出動する感じだ。
「モモ殿、緊急事態のようです。出来れば手を貸して下さると嬉しいのですが」
私は残っていたお菓子をザっと口の中に流し込む。
(モモ、お菓子とかくれたし、手伝ってもいいんじゃない?)
「うん、いいよー!」
御主人に云われるまでもない。
困っている人が居たら助けてあげたいもん。
「んじゃ出発だ。おいお前、来るんなら遅れるんじゃねぇぞ!」
と、ベノムが私に云ってるけど、
「御主人、一番乗りするよー!」
(モモは結構負けず嫌いだよね)
私は御主人を抱っこして真っ先に走り出したんだ。
「おいコラ、勝手に……って速いなおい!」
ベノムの文句を振り切り町中へ。
場所はわからないけど、火災とかなら直ぐ見つけられるよ。
ほらあそこ、三階建てぐらいの建物から煙がモクモク登っている。
周りにも野次馬が集まっていて分かりやすい。
まだ避難できていない人が居るみたいだ。
その中から助けて、助けてって三人の声が聞こえてくる。
か細い小さな女の子の声も。
(モモ、あそこの窓に人が居るよ! まず助けよう!)
見上げて見ると小さな女の子とその母親、もう一人はお婆ちゃんが熱さと煙ですごく苦しそうにしている。
「うん、御主人はここで待っててね」
早く助けてあげないと。
(そうするね、この毛とか燃えやすそうだし)
「じゃあ行ってきまーす!」
私は御主人を下ろし、ジャンプして三人が居る三階の窓に入ったんだ。
「助けに来たよ。私に掴まって!」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「た、助かりました」
「お姉ちゃん、ありがとう。でもまだ中にメリルが……」
「メリル?」
「この家の使用人なの。お姉ちゃん、メリルも助けてあげて」
気配は……ない?
いや、微かなものを感じる。
もう死にかけているのかも。
「うん、でも先に下ろしちゃうね。ここも危険だよ」
「は、はい。では子供を先に……」
母親っぽい人が子供の背中を押した。
どちらも凄く不安そうだ。
「大丈夫、全員連れて下りるから。私の体に掴まってね!」
「あ、ありがとう、でも大丈夫ですか?」
「無理はしないほうが……」
私の力を信用してくれないっぽい。
「大丈夫だよー!」
少しためらいながらも三人は私の体に掴まってくれた。
「飛びおりるからギュッと捕まっててね!」
でもやっぱり怖いみたい。
皆ギュッと目を瞑っている。
私はそのまま三人を抱えながらピョ―ンと窓から飛び降りたんだ。
かなり高いけれど衝撃なんてないんだよ。
足の指からぜーんぶ逃がしちゃったんだ。
「ほら、もう着いたよー!」
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
「本当に感謝しています」
「お姉ちゃん、メリルも助けてあげて」
「うん、ちょっと待ってて」
気配があったのはたぶん二階のあの辺り。
きっとまだ生きているはず。
「よーし、やっちゃうよー!」
私は胸にあるペンダントに手を伸ばした。
これはキャットスレイヴ。
思った通りに形が変わる便利な剣だ。
ヒョイっと伸ばしてメリルが居る部屋の壁を切ると、ガラガラと崩れて落ちる。
もう煙が充満していたのかブワっと煙が飛び出て来たよ。
(モモ、出来る限り煙は吸わない方が良いからね)
「わかったよ御主人! じゃあ行ってきまーす!」
ちょっと熱そうだけど、私は一気に跳躍してその部屋に入ったんだ。
煙と熱気で焼け焦げそう。
早くしないと私の体も持たないかも。
息を止めてメリルの気配を手繰ると……見つけた。
床に倒れている子を拾い上げ、ダッと走って飛びだしたんだ。
「ぷはぁ!」
うん、空気が美味しい。
あとはこの子を治してあげるだけだね。
私は心にある輝きを感じ取り。
「猫猫召喚、癒しの猫ちゃん! 出て来てー!」
召喚術で白猫ちゃんを呼び出したんだ。
彼女に傷はないんだけれど、猫ちゃんが喉の辺りをペロッと舐めるとメリルがけほっと咳をした。
黒い靄が体の中から抜けて行くみたい。
弱まっていた気配も段々元に戻っていってるよ。
「もう大丈夫だね!」
「お姉ちゃん、メリルを助けてくれてありがとう」
助けた子が笑顔でお礼を云ってくれたんだ。
「うん!」
私は嬉しくなっていい子いい子してあげたよ。
「よくやった、でもお前はもう下がってろ」
でも途中で、ベノムに頭を掴まれた。
「もう皆助けちゃったよー?」
「火を消さなきゃ他に燃え移るだろうが」
「あ、そっかー」
人を助けても火は消してないし。
放って置いたらもっと燃えちゃうよね。
(モモ、ここはブレードバード隊のお手並みを拝見しよう。僕達には火を消す方法がないからね)
「そうだね」
私が見守っていると、他の隊員達も続々と到着したんだよ。
皆はベノムの指示で配置につかされると、水の魔法を使える人が建物に向かって放射したり、避難を誘導したりしている。
そのお陰もあり周りに燃え移ることも無く一つの建物がなくなっただけで済んだんだ。
この親子はちょっと家をなくして可哀想だけど、まだ命があるから良かったかなぁ?
それで今から何でこんなことになったのか子供の母親に事情を聞くんだって。
私も気になるから近くで聞き耳を立てているんだよ。
「で、何でこうなった? 火の不始末か? それとも別の原因か?」
「信じてはもらえないかもしれませんが、家の中に小さな妖精を見たのです。その妖精は絨毯やカーテンに火を放って家を燃やしてしまったのです」
「はぁ、炎を操る妖精だと? そもそも妖精なんかがこんな町中に居るはずはないんだが。何かの見間違いじゃねぇのか?」
「それでも見たんです! 信じてください!」
母親は真剣な顔で訴えている。
嘘じゃない感じだ。
「……ま、一度調べてみるしかねぇな。そんな奴が居たならまた同じことが起きちまうからな」
「是非見つけてください。私達の家の仇をお願いします!」
「おう、任せとけ」
そうベノムが約束すると、助けた三人が隊の皆に連れられて何処かに移動していく。
仮設の住処に行くんだって。
「おいお前、俺達は調査を続けるけど、お前はどうする?」
「もちろん、手伝うよ!」
私は頷いて返事をした。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(ブルースに頼まれて特訓中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




