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魔力炉の暴走は

 シープと出会った私は魔導研究所で検査を受けたの。

 でも特に何も変わったことがなかったみたい。

 今日はたまたまシステムのメンテナンスがあるってことで、その間に制御キーを取りに行かなきゃなんだ。

 私は警備のある中を掻い潜ってその部屋に到着したの。

 制御キーは私の知っている物だった。

 その力を使って脱出に成功したんだ。

 シープのところに戻ったんだけど、なんだか囮に使われてしまったみたい。

 でもせっかく手に入れたんだからってことで、炉の状態をチェックしにいったんだ。

 あと一分もしない内にオジサン達が到着しちゃう。


「シープ、機械に問題はあるの?」


「問題は……ある。何時の間にかコードが見た事のないものになっている。しかも私が書き換えたものが瞬時に元に戻ってしまうしな。これは何時何が起こってもおかしくない状態だ」


「えー、もう皆来ちゃうよー?」


「分かっている!」


 シープが作業を続けているけど、ついにオジサン達が到着しちゃった。


「もう無駄な抵抗はやめておけ! 何をしているのかは知らんが、これ以上罪を犯すな!」


 私達を囲んでジリジリ近づいてくるの。

 完全に悪者扱いだよ。


「どうしよう?」


 キャットスレイヴは起動キーとして使っているし、子供の私に抵抗する術はないんだ。

 でも、もしかしたらシープがすっごく強いかも?

 ちょっと期待を込めて見つめるけど、


「はぁ、もうどうしようもないな。諦めろ」


「えー」


 もう諦めている感じだよ。

 このままじゃ二人とも捕まっちゃう。

 その時だ。

 ウゥ―ン、ウゥ―ンってこの場所に警戒音が響いたの。


『警報、警報。システムに侵入者を確認。全精力を以て排除を開始。お近くの方は避難を開始してください。トリニティ、行動三秒前……二……一……行動開始!』


 そしてこの声、草原にあったあの場所で聞いたものと同じだ。

 上部にある壁がウィーンって開き、中から三体のトリニティが現れたんだ。

 当然だけど、私が付けた傷なんて何も無いんだよ。


「なんだ、トリニティ? そんな物の存在、私は知らないぞ!」


 ここの研究者であるシープも信じられないという感じ。


「トリニティってすっごい強い奴だよ。今の私じゃ勝てないかも」


 私達が慌てていると近くから悲鳴が聞こえてくる。

 オジサンの仲間が襲われているみたい。

 それはドンドン近づいて……。

 こうなったらもう戦うしかないよね。

 私は制御キー、キャットスレイヴに手を伸ばしたんだ。


「取れないよー!」


 でもグッて引っ張っても抜けないし、形を変えることもなかったの。


「今使用しているからな、ロックがかけられているから取り外すことはできないぞ」


 だとしたら場に流されるしかないよ。

 恐ろしいほどの悲鳴の数々、ここには逃げ場もないしどうしよう。

 そう思っていたら、ピョンピョンってウォームラビット達が流れ込んできたんだ。

 混乱が混乱を呼んできた感じだけど、赤いスカーフのラビッシュが私達の前に。


「あっち。あっちに非常用のハッチがあるです。早く行くのです!」


 よくわかんないけど助けに来てくれたみたい?


「シープ、行こう!」


「騙されるな、そんな場所にハッチなどない! そいつらも狂っているぞ!」


 シープが指摘すると、ラビッシュがケタケタ気持ち悪い笑い声を上げたの。

 私達はドンドン追い詰められて三体のトリニティが到達したの。

 鋭い爪が伸ばされて、なす術なく切り裂かれて網目の床に転がったんだ。

 薄れゆく意識の中で見たのはラビッシュが魔導炉を操っていた姿だった……。


(モモ、起きてモモ!)


 御主人の声が聞こえる。

 目を覚ますとそこは窪んだ草原の上だったの。

 今までのは夢だった?

 ううん、切り裂かれた痛みはこの体に残されているんだ。

 あれは間違いなくあったこと。

 とにかく目を開けよう。


「御主人、ただいま」


 私はむくって起きて御主人に挨拶したよ。


(ああよかった、こんな所で倒れたからどうしようかと思ったよ)


「えっとね、私過去に行ってきたんだよ。この腕輪があって助かった……あれ?」


 私の腕に腕輪がなくなっているよ。

 周りにもないみたいだし、うーん、まあいっか。

 でもあちらのラビッシュが狂っていたなら、こっちのラビッシュはどうして狂っていないの?

 すごく不思議。


(何かあったの?)


「ううん、大丈夫!」


 とにかく何も無かったみたいだし、もう帰ってご飯食べよう!

 私は御主人を抱っこしてウィーディアに帰って行ったんだ。

 でもね、そこにラビッシュの姿はないの。

 アリアに聞いてみても何時の間にか居なくなっちゃったって云っているよ。


 私もリーズとカリンの力を借りて捜索とかもしたんだけど、一週間ぐらい経っても結局見つけられなかったんだ。

 ちょっと心配しながらも日常を取り戻した私は何時も通り美味しい物を食べたりしていたの。


「モモ殿一大事です!」


 何時も通りといえばやっぱり何時も通り、今度は青鎧のブルースが私に相談しに来たんだ。

 うーん、ここは相談所じゃないんだけれど?


「何かあったのー?」


「ええ、実はモモ殿が見つけた魔導炉があった場所に巨大な建築物が突然現れたと。ご捜索されているラビッシュ殿に関係があるのでは?」


「そっか、そこにラビッシュが居るかもなんだね。行ってみるよ!」


 探していたラビッシュが居るというならちょっと行ってみたくなっちゃった。

 私は返事をして早速お出かけの準備をしたよ。


(モモ、本当に一人で大丈夫?)


「うん、また倒れたら御主人が困っちゃうもんね。だからここに居てね」


(僕のことは気にしなくてもいいんだよ)


「御主人がここに居てくれるから私は頑張って帰ってこられるの。だからね、待っていてくれると嬉しいな!」


(……そっか、絶対戻って来てね。僕待っているから)


「うん、約束だよ!」


 私は一人、窓から飛びだしたんだ。

 お城の屋根に飛び乗って、ポーンって跳んで見張り台に。

 そこから飛び下り町に進み、走って走って草原へ。


 何も無かったはずの窪んだ場所に大きくて工場みたいな建物が。

 生き物ですらないのに、地面から何かを吸い出して脈打っている感じ。


 もしかして埋まっていた部分が上がってきたのかも?

 あそこにラビッシュが居るかもしれない。

とにかく近づこうって思ったんだ。

 入り口は……どこだろう?

 建物の周りにそれらしい物はないの。

 やっぱり壊して入るしかなさそうだね。


「たああああ!」


 私は手近な壁をキャットスレイヴでザシュっと切り裂いた。

 赤黒い油のような物が壁の中からドロっと溢れ出たの。

 それが落ち着いてから私は中に入っていった。


「モモ様、よくお出で下さいましたです。あなたのお蔭でこうして復活の兆しが見えましたです」


 目の前に現れたのは、学者のような恰好をしているラビッシュだったよ。

 可愛らしい感じだったのに、真っ赤な目がギラギラ輝き、もう邪悪そのものなの。

 これは倒さなきゃいけないのかな?

 でもその前に、


「私に何をしたのか教えてくれる?」


 過去で何を行っていたのか知らなきゃね。


「ええ、もちろんです。手を貸していただいて感謝していますので。ご説明してさしあげますです。あなたを過去に送ったのは今後起こる未来を変えるため。これから始まりの魔獣、クリアルクスを復活させるためなのです」


 元々魔導炉はその魔獣を封じるためのものだった。

 魔法が生まれたのはその副産物だって話だよ。


「過去の私はあの暴走により自由を得られると信じていたのですが、結果は見ての通り、今現在も封じられたままなのです。しかし過去を変えては今現在がどうなるか分かったものではない。ならばほんの少しだけ手を加えて起こるべき未来の在り方を変えてしまえばいいだけのこと。この時代、この時に復活することをな!」


 ラビッシュの体が建物に取り込まれてドンドン巨大かしていくの。

 まるで自分こそがその魔獣なのだと言わんばかりに。

 このままじゃ私もそれに取り込まれてしまいそう。

 こじ開けた壁から一気に飛びだすと、建物全体が大きな獣として誕生したんだ。

家猫のモモ

御主人ごしゅじん(ヒロ)

王子シャーン

王女ルシフェリア

王女イブレーテ(長女)

シャーンのお母さんテルナ

グリフ・リスマイヤー

青鎧のブルース・グライブス

教育係アリア・ファイリーズ

赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)

桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)


ベノム(ブレードバード隊、隊長)


ルーカ(孤児)

プラム・オデッセイ(里帰り中)

ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)


クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)

シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)


剣と魔法の世界 ミドレイス

翼の生えた子供 ウリエリア

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