海沿いの街の異変
さて、翌朝にはナスカでの用事も全て済ませたので、ジェフリー達と合流すべく、海沿いの街に転移をした。
王家の別荘に転移をすると、皆が別荘でのんびりをしていた。
ただ、ジェフリーだけが別荘にはいないようだ。
「アキト兄、お帰りなさい!ナスカでの用事は終わったの?」
リリスちゃんが抱きついて、ナスカでのことを聞いてきた。
「無事に終わらせて来たよ。あっちでお世話になった人や友人にも会えて楽しかったよ」
「アキトさん、お帰りなさい。
良かったですわね。アキトさんの転移があるからこそ出来ることですよね」
ユーリアも実際にエルフの里とこの街を移動して長期休みを満喫しているので、実感があるのだろう。
「アキト。もう何も用事がないなら、一緒に模擬戦をするのだ!
獣化での模擬戦をしたいのだ!」
「アキトさん、お帰り早々申し訳ありませんが、ダキニさんの相手をして貰えませんか?
普通の状態ならばお相手出来るのですが、流石に獣化をされると近接戦闘ではかなわないので」
ダキニは俺との模擬戦を所望して、シーラも自分では相手しきれないからと俺に相手をしてあげて欲しいと頼んできた。
確かに、ダキニの獣化を近接戦闘で相手するのはくたびれるだろう。
ただ、シーラも遠距離の属性魔術中心でやれば、そんな一方的な展開になることはないだろうに。
多分、ダキニに合わせようとしていたんだろうな。
「じゃあ、ちょっとだけだぞ。今日は街の市場に行っておきたいと思っているからな」
「やったのだ!アキト早くやるのだ!」
短時間だけなので、ダンジョンまではいかずに別荘の庭で模擬戦をした。
まぁ、短時間といっても、ダキニの魔力量も上がって来ており、獣化の時間も長くなって来た。
この調子ならば、そろそろ二尾から三尾に成長してもおかしくない気がする。
そんなダキニとの模擬戦をこなして、俺は街の市場へと足を伸ばした。
ちなみに、今日は1人で街へ行くことになった。
他のメンバーは、俺がいない間で街の散策をしていたので、今日は別荘でのんびりするそうだ。
ただ、王都へ帰る直前にお土産を買いにいきたいので、付き合って欲しいと言われた。
俺と言うよりも俺のアイテムボックス目当てだろう。
まぁ、それくらいは全然よいのだが。
市場で何を買うかというと、今日のお目当ては魚介類である。
ブレアフル辺境伯のところでも、ナスカでもお土産に魚介類を大盤振る舞いしてしまったので、俺のアイテムボックス内のストックが減ってしまったのだ。
まぁ、もう転移でここまで来られるから急いで補充しなくても良いかも知れないが、ここの魚介類は本当に美味しいので常にストックをしておきたいと思ってしまうのだ。
しかも、俺の物質創造で地球産の魚介類も出せるのだが、地球産のよりもここのが味が濃くて美味しい気がする。
最近、特に実感をして来たのだが、食材のそのままの味に関しては地球よりもここの方が全体的に美味い気がする。
もしかしたら、食材にも魔力が含まれていて、俺の身体がその魔力を欲しているからかも知れない。
そりゃ、地球には魔力が無いから、魔力の含まれた食材なんて存在しないからな。
さて、実際に市場で魚介類を探しているのだが、何だか様子がおかしい。
ここの市場は手土産用に以前にも買いに来たのだが、その時に比べて売られている魚介類の量が大きく減っている。
誰か大貴族が大量に買い占めたのかとも思ったが、それならばもっと嬉しそうに店じまいでもしてそうなのだが、そんな様子もない。
ちょっとある小魚と多少の貝類並べて、辛気臭そうな顔をして売っている。
「あの、魚介類を貝に来たのですが、あまり置いていないようなのですが、どうしたのですか?」
俺は以前、魚介類を購入したこともある店で声をかけた。
「あぁ、あんたはちょっと前に大量に購入してくれたお兄ちゃんじゃないか。
今日も買いに来てくれたのかい。ごめんね。
今は漁が出来なくて、全然入荷していないのよ。」
店のおばちゃんは申し訳無さそうにそう答えてくれた。
「それって、何か原因があるんですか?」
「私も詳しいことはわからないんだけど、何でも遠洋の方にいる魔物が近海まで出て来ているらしいのよ。
今まで、そんなことがなかったから、こっちも困っているのよ。
なんとか、浜の地引網で取れる魚や、近くで取れる貝類を並べているんだけどね」
「そうなんですか、お話を聞かせて頂いてありがとうございます。
それでしたら、店先に並んでいる物を全て買わせてください」
色々話をしてくれたからね。これくらいの量ならば全て買い取らせて頂こう。
と、思っていたら、大した量もないのに結構な金額になってしまった。
まぁ、商品が入って来なければ、どうしても値段が高騰してしまうのだろうが、こちらとしては損をした気分だわ。
お店のおばちゃんも、高いから無理しなくても良いよとは言ってくれたが、こちとら一度口に出したことを取り下げるのも恥ずかしいので、無理をして買ってしまった。
実際、結構な稼ぎはあるので、財布が痛むってほどじゃないから良いけどさ。
おばちゃんの店をあとにして、他の市場の店舗も隅々まで回ってみたけど、やはり同じ状況のようだ。
今の一時の事態で済めば良いが、この海で取れる魚介類が街の主力産業になっているはずだから、このまま続いてしまえば街の存続にも繋がりかねないだろう。
そんなことを考えながら、別荘へと帰ってきた。
「アキト、お帰り。もうナスカから帰って来ていたんだね」
別荘に帰るとジェフリーも屋敷に戻っていたようだ。
ちょっと話があるようなので、2人でジェフリーの部屋で話をすることになった。
「それで、話って、もしかして漁に出られないってことに関係している?」
「なんだ、アキトも知っているのか。その件に関して、この街の領主から相談を受けていたんだよ」
「やっぱりか。あれってかなり深刻な影響が出そうなのか?」
「あぁ、これが続けばこの街は間違いなく終わりだ。
遠洋にいるはずの魔物が近海に来ていることが原因だが、なぜ魔物が近海までくるのかが分からないんだよ。
ここの領主も調査隊の準備をしているが、王都へも調査協力の依頼を出したらしい。
王都への口添えの手紙を送って貰えないかと頼まれて、私も一筆したところだ」
「それで、俺にも調査をして貰いたいと」
「あぁ、まぁ厳密にはアキトとコアに協力を願えないかと思ってね」
「確かにコアだったら、何か良い方法で調査が出来るかも知れないな」
「僕の個人的な予算を使って、Bランク冒険者のアキトに指名依頼をしても良い。
それに、アキトもここの魚介類が好きだろ。
それが手に入らないってことになったら、協力してくれるかと思ってね」
「それじゃ、断るわけにはいかないだろ。
しかし、ジェフリーも俺に頼もうなんて考えるな」
「これでも、王族の1人だよ。
国民が困っていれば、使える手は何でも使ってやるさ。
僕の一番の手がアキトだったってだけだよ」
「まぁ、今回は俺にも利があることだから、手を貸すけどいつでも何でも手伝うわけじゃないからな」
「あぁ、それは肝に命じておくよ。
それじゃ、早速冒険者ギルドに行って指名依頼をしてくるから、アキトも一緒に行って受注してもらおう」
そういうと、ジェフリーは立ち上がって、この街の冒険者ギルドへ向かうのだった。
俺もその後ろに付いて行く
まぁ、ジェフリーにはああ言ったけど、ジェフリーならば自分で出来ることならば自分でやってしまうだろうし、どうしても困っていれば、いつでも助けてあげるくらいには、信頼をしているんだけどな。
お魚大好きアキト君。街の異変の調査に協力をします。




