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Sクラスとゲルト・ブレアフル

その日の依頼を終えて、ブレアフル邸に帰って来ると、執事さんが魔術学園から届いた手紙を渡してくれました。

借りている部屋で1人、手紙を開ける・・・


ふぅ、無事にSクラスでの入学となった。


皆さんに期待をされていたので、Sクラスの合格が出来て本当に良かった。

やり過ぎで、低いクラスも覚悟していたから、一安心だ。


さて、魔術学園は基本的に寮での生活をするように推奨されている。

ただ、王族や貴族の一部では王都内の邸宅から通うものもいる。

俺もエクベルトさんから、王都のお屋敷から通っても良いとも言われていたが、流石にお世話になりっぱなしなので、魔術学園の寮へ引っ越すことにしている。

ということで、元々、大した荷物もなかったし、その荷物すらアイテムボックスに仕舞えば良いだけなので、翌日には引っ越しをした。

本当の主もいないなかで、客人として大変にお世話になったお礼に、執事さんやメイドさんに地球産のお酒やお菓子をお渡しした。

最初はお客様から、このような物は受け取れないと固辞していた執事さんでしたが、たまにおすそ分けをしていた、チョコレート等の甘いお菓子がたっぷりあると分かったメイドさん達の圧力に負けて、素直に受け取ってくれた。

この執事さんが好きな日本酒も入れておいたので、内心は喜んでくれただろう。


こうして、魔術学園の寮へやってきました。

Sクラスはその寮の中でも、個室を与えられるらしい。

そういえば、Gランク冒険者の時も冒険者ギルド内で個室を与えられていたな。


部屋はベッドと簡単なテーブルと椅子が置いてある、ワンルームのような感じです。

備え付けのトイレとシャワールームも付いていますが、流石に浴槽はありません。


ブレアフル家では領都も王都もどちらのお屋敷にも大きな浴槽が設置されていましたので、たまに浴槽を利用させて頂いていました。

浴槽のことを考えたら、王都のブレアフル邸から通った方が良かったかも・・・

まぁ、今更、浴槽を借りたいから屋敷から通わせてくださいとは言えないので諦めよう。

いざとなれば、ナスカのダンジョンまで転移を繰り返していって、ダンジョン内でコアに浴槽を作って貰おう。

ただ、風呂に入りたいからって、そこまでするかってのもあるけどなぁ。


さて、寮に入って、一息入れます。

寮でゆっくりしていると、部屋の扉をノックする音が聞こえる。

扉を開けると、身体の大きくガッシリした男性が立っていた。


「はじめまして。君がアキト君で間違いないかな?」


「はい、自分がアキトですが」


「おぉ、やっと会うことが出来た。

私はゲルト・ブレアフル。この魔術学園で教授をしている。

父や弟が大変世話になったようで、挨拶をしたいと思っていたのだ」


この人が、ゲルトさんか。初めて見たけど、兄弟の中ではエクベルトさんに一番見た目は似ていますね。


「ジョルシュさんのお兄さんですね。これから、魔術学園でよろしくお願いします」


「よろしく頼むよ。

あの、ジャンヌ様もいらっしゃると思っていたのだが、今はいらっしゃるだろうか?」


「あぁ、それはですね。

ここでは何だから、部屋に入ってください」


ゲルトさんを部屋に入れて、ジャンヌを召喚します。


「あ、貴方がジャンヌ様でしょうか?」


「えぇ、私がジャンヌです」


そうすると、ゲルトさんが膝を付いて、ジャンヌのことを見上げています。

あぁ、この人は間違いなくブレアフル家の人だわ。


「はじめまして、私は貴方の弟の子孫に当たります、ゲルト・ブレアフルと申します。

ジャンヌ様にこうしてお目通りできたこと、ブレアフル家の一員として大変に嬉しく思います。」


「ゲルト殿。他の現代のブレアフル家の皆様にもお伝えしておりますが、私は既に死亡してスケルトンとなった身。

だからこそ、こうやって主に召喚もされますし、この身体も魔道具によって作られている偽りの身体ですよ。

それよりも、これから魔術学園でお世話になる主をよろしくお願いします」


「えぇ、それは勿論。

それにアキト殿はSクラスでも、史上最高の逸材と思われているので、魔術学園でも全体で支援していきますよ」


え、そんなことになっているの?

ゲルトさんは、普通に椅子に座ってくれました。


「いやぁ、本当は王都に来た直後には挨拶に来たかったのだけど、魔術学園の教授がこれからクラス分け試験を受けようとしている人と会って、不正を疑われてもいけないからね。

それにしても、今回の試験は凄かったね。

魔導人形をバラバラにしたことは勿論、まさか人造魔石の完成を試験中に作ってしまうなんて」


「いやぁ、特別に作ろうと思っていたわけじゃないんですよ。

たまたまって感じで、どうして出来上がったかも、よく分かりませんよ」


「まぁ、その辺は入学したら、是非協力をって試験官をしていた教授が言っていたよ。

お時間のある時で良いので、よろしくお願いします」


「はぁ、暇なときで良ければって感じになってしまいますが」


「えぇ、それで十分だと思うよ」


研究も興味がないわけじゃないけど、それだけに縛られるのは困るからな。

少なくとも、この魔術学園での目標は属性魔術を学ぶことだ。


「そういえば、お茶も出していませんでしたね。

お茶の代わりに、一杯いかがですか?」


元々、アイテムボックスに移しておいた、ウイスキーを出した。


「お、それはもしかして」


「エクベルトさんやジョルシュさんから話は聞いていますよね?

これが、自分がスキルで作り出した、地球産のお酒ですよ」


「おぉ、やはりそうか。

以前、分けて貰って非常に美味しいと思っていたんだよ。

本当に頂いても良いかい?」


「えぇ、どうぞどうぞ」


グラスに氷とウイスキーを注いで、ゲルトさんに渡した。

ゲルトさんは受け取ると、ぐっと飲んだ。


「はぁ、やはり美味いな。

それに、この酒精の強さが他の酒では味わえないものだな」


「料理は結構、こっちの世界のも美味しいのですが、お酒はちょっと物足りない感じですね」


「ふむ、アキト殿はそういう評価になるのか。

確かに、このレベルの酒を誰でも飲める世界ならば、そう思っても仕方がないな」


そう、この世界で色々な地球産の物を渡して来たが、何だかんだで一番喜ばれるのは、お酒の類いである。

ワインやエールは普通に作られているし、蒸留酒も存在するのだが、まだまだ味は改良の余地ありって感じで、蒸留技術が拙いのか酒精の強い蒸留酒はまだ少ないようです。

それを長期間寝かせるってのも、あまり多くないので、味わいの深さが変わってしまいます。


「これくらいでしたら、いくらでも用意出来るので、いつでもお裾分けできますよ」


「おぉ、それは嬉しい限りだ。

実は、今日ここを訪れたのは、挨拶をしたかったのもあるが、是非こういう酒類を譲って貰えないかと思っていたのだ」


よし、懐柔成功だな。

まぁ、別にこのお酒を使って、ゲルトさんに不正をさせようと思っていないが、俺は元々この世界に1人で来たのだから、知り合いも何もいるわけがない。

今までは、デニスさんやジョルシュさん等、本当に良い人に出会えて来たけど、この王都でも同じ様な出会いばかりとは限らないので、味方になってくれる人が大事だと思う。

ゲルトさんは、ジョルシュさんの兄弟でもあり、その奥さんはこの国の宰相の娘さんとのこと。

しっかりと味方につけておけば、何かあった時に助かることもあると思う。


まぁ、ジョルシュさんとの関係性から、ゲルトさんは何もしなくても味方になってくれるだろうが、やはり自分から味方したいと思ってくれた方が絶対に良いだろうしね。


「いやぁ、アキト殿、美味いなぁ。今日はこんなに美味い酒を頂いたのだから、今度は我が家にも遊びに来てくれ。

まぁ、その時も、酒がアキト殿に頼むだろうがな。ハハハ」


うん、上機嫌で本当に何よりです。


アキト君、腹黒いですよw


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