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続・シュレディンガーの鴨葱  作者: ネギ愛好家
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輪輪輪廻転生論

テーマ【自分】


俺はあのときから、自分というものを捨ててしまったのだと思う。


小さい頃、俺は体が弱かった。良く寝込んでは、学校を休んでいた。

年相応にわがままであった自分は、自分が望めばすべてが手に入ると、自分こそが世界の中心であると思い込んでいた。


しかし、体調を崩し連日寝込んで寝飽きたとある正午、遠くから響く子供達の声を聞きながら、切り取られた絵の様な北の窓から見える空を眺めて思ってしまった。


――しかし、自分が消えたら世界はどうなるのか?


自分が消えたら世界は消えてしまう。

観測者である自分が消えたら、現象である世界はないものと同じなのではないか、そう考えた。


しかし、過去に人は数えきれないほど生まれ、死んでいる。

世界はなくなってなどいない。

では、過去の歴史とは自分が生まれるための土台に過ぎないのだろうか。


否、違う。


それだけは幼い自分でもわかった。

では、他人とは世界が用意したNPCなのだろうか。

この世界というゲームに自分という主役が生まれたのだろうか?


否、違う。


ならば自分の認知できない、地球の裏側にまで人がいる理由がわからない。

それに地球の裏側に起こっていることは、本当のことなのか?

ただの情報、作られた結果の情報ではないのか?


否。

そこまで都合の良い世界ではない。


では、他人とはなにか?


自分が死んだらどうなる?

生まれ変わる?

何に?


それは自分以外にだ。


それは人であるかもしれない。もちろん日本人かもしれない、確率的に言えば、中国人である可能性も高い。単に確率の問題なら、人間として生まれることの方が少ない気がする。

魚であったり、プランクトンであったり、昆虫であったり。


しかし、共通するのは

いつか、死ぬということだ。

なら、その次は?

またその次は?


わかることは、いつかはすべての生き物に生まれ変わるということだ。輪廻転生を信じるのであれば。


では他人とはなんだ?


例えるなら、学校で会う人間。あれはなんだ?

簡単だ、他人だ。

いやいや、今までの考えなら自分の生まれ変わりではないのか?

生まれ変わりがあるとしたら、今この地球上にいる人間は、いつかの自分の姿そのものではないのか?


そう考えると、自分だけが利益を求め続けることが、バカらしくなってしまった。

なら、いつかの自分に施してあげてもいいじゃないか。

いつか生まれ変わった自分が喜べる様に。


自分がされて嬉しいこととは、こういうことではないのか?


そう考えてしまった瞬間。

自分中心の世界が音もなく崩れ去って行った。


かのユングが生きていたらこういうのかもしれない。

君は集合的無意識にとらわれていると。


自分が、そこらにいる他人となんの変わりもないということに気がついただけではなく、自分という観念すら揺らいでしまったのだから笑えない。


そんな小5の冬の昼下がり。

この昼下がりの衝撃は、10年以上経った今でも忘れることなく、心のトラウマとして今も心を締め付ける。

こんなことを考えなければ、僕は、今のこんな僕ではなかった自信がある。


今ではない自分にも興味はあるが、こうなってしまった自分というものにも、それなりに愛着は湧いている。


しかし、こうして眠れない夜とともに思い出すたびに、そう思わざるを得ないのだ。

あの時、僕は一度死んだのだと。



【読了後に関して】

感想・ご意見・ご指摘により作者は成長するものだと、私個人は考えております。


もし気に入っていただけたのであれば、「気に入ったシーン」や「会話」、「展開」などを教えてください。「こんな話が見たい」というご意見も大歓迎です。


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