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目指せオーケストラ!!※休載中  作者: 遊莉
悲しみの曲
10/17

始まりの物語

最後は地の文ほとんどありません。

「目が覚めた?ハーティアちゃん」


 クラリスは、優しくハーティアに問いかけた。


「あれ、わたし、……そうだ!!お母さんは!?」


「そのことなんだけど……」


 クラリスは、ガイルにしたのと同じ話をハーティアにした。


「……じゃあ、お母さんはまだ無事なの?」


「ええ、ラストメアはわたしの命の恩人よ?まだ恩も返してないのに、そう簡単に殺してやるもんですか」


 クラリスはイタズラっぽくそう言うと、ハーティアに向けてウィンクをした。


「……お母さんに聞いていたけど、やっぱりクラリスさんはお茶目なの」


 ハーティアの一言に、クラリスは少し顔を赤らめた。


「いやぁ、わたしはそれほどでもないわよ?」


「フラン大先生も言ってたの!!

『クラリスさんは、あんな顔をしているが、なかなか可愛い人だよ』って!!」


 その言葉を聞いて、クラリスは固まった。


「ふ、ふらん?」


 クラリスはどう思っているのか、言動が急に幼くなった。


「い、いえ!クラリスさん!!似たことは言いましたが、顔については何も言ってません!!

 だ、だよな!!ハーティア~!!」


「知らないの」


「すっとぼけるな、ハーティア!!おい、こっちを向k……」


「こっちをむきなさい、ふらん・はーと」


 耳が赤くなっているクラリスは、しかしその顔はフランからしか見えない。


「い、いえクラリスさ、ん…」


 フランは恐る恐るクラリスをみて、固まった。


「クラリスさん、何て顔してるんですか。

 わたし、興奮してきました」


「こんの~、へんたいが~~~~!!」


 クラリスが手を大きく振り上げると、何重にも重なった魔方陣が姿を現した。


「え、ちょ、その量は不味いですって、クラリスさん!」


 フランは必死に止めるが、クラリスはもう止まる気配はない。


「そ、そうだ!!ハーティア!!クラリスさんを止めてくれ!!」


 ハーティアは、フランを見ると、にこっと笑い、目を反らした。


「チックショー!!」


「いっぺん、せかいをめぐってこい!!」


 クラリスがフランを叩くと、フランは消えてしまった。


「フラン大先生は何処に行ったの?」


「……ふぅ、フランは、わたしの作った異世界で、くすぐり一時間の刑に処しました」


 それを聞いたハーティアは、絶対にクラリスを怒らせないと、心に誓った。


「さて、では、フランが釈放されるまでの間に、ラストメア救出作戦についてを話しておきましょう」


 クラリスは、ポケットから一枚の紙とペンをとりだし紙に描いていった。


構築魔法クリエイト・マジック『少しの休息場所ショート・ステイ』」


 クラリスが紙を前方に放ると、二階建ての家が現れた。


「折角だし、なかで話しましょう?」


「うわぁ……、すごいの~」


 感動しているハーティアに、クラリスは微笑みながら頷いた。


「わたしもこの魔法を初めて見たときは驚いたわ。でも、貴女にだって出来るようになれるのよ?」


「本当なの!?じゃあ話の後で教えてなの!!」


「ええ、それじゃあ入りましょうか」


 二人は家の中に入っていった。







「ではまず、ラストメアの状態についてだけど、わたしの結晶に包み込んでいるから死ぬことはなの。だけど、だからといってあのままじゃ、本当に『生きている』と言っていいのか分かんないわ」


「お母さんは、意識はあるの?」


「ラストメアの時間は、結晶になった時からずっと止まっている。だから、精神的にすり減ったりする心配はないのよ」


「でも、出来れば早く助けたいの」


「ええ、わたしも同じ気持ちよ。

 だけど、カーラのことを考えると、迂闊に近づいたらそれだけで殺される。

 だから、今は力を蓄えるのよ」


「わかったの!!だけど、力を蓄えるって言っても、わたしは何をすればいいの?」


「ハーティアちゃんには、音楽活動をして欲しいの」


「音楽活動!?わかったの!!音楽活動するの!!」


「…ああ、ガイルが言っていた『適任』とは、そういうことだったのね…」


「それで、具体的にはどうすればいいの?」


「そうねぇ、ハーティアちゃんは、妖精の特徴について聞いているかな?」


「思いを伝えることなの?」


「その通りよ。だから、世界の残酷さを曲にして欲しいの。勿論、他の曲も演奏してもらっても構わない。だけど、この世界の殆どの人間は、『世界』に騙されていて、この世は美しく、平和だと信じている。そして、この世界の残酷さを知らないし、見ようともしていない。それではカーラには勝てないのよ」


「?今一つ分かんないの」


「えっとね?カーラは、『世界』と繋がっているの。『世界』とは、意志を持ったこの世界の源の一つ、オドの塊のことで、こいつがまた厄介なんだけど……この世界の魂の運命を、ある程度決定することが出来るの」


「運命の、決定?」


「ええ、例えば、フランが二秒後に死ぬ運命を定めれば、フランは死ぬでしょう」


「そんなの!!どうしようもないの!!」


「ところが、そうでもないみたいなのよね~。何事にも例外は存在するのよ。例えば、わたしは運命に左右されない」


「何でなの?」


「わたしには、この瞳があるからよ」


 そういってクラリスは、七芒星の瞳を指差した。


「この瞳は、『パンドラの瞳』と言ってね?貴女の暴走の時のように、魔力を吸い取ることも出来るの。

 でも、この瞳の一番の能力は、『災厄』になることを代償に、持ち主自身が一種の『世界』になることなの。ようは、わたしはこの『世界』と同格の存在なの。だから、わたしは運命に束縛されない」


「でも、周りがすべて敵になれば、そんなの関係ないと思うの!!」


「だからこそ、貴女が必要なのよ、ハーティアちゃん」


「わたしが?」


「この世の人の意志がこの世界との決別を望めば、この世の支配権はわたしに移るの。

 そうすれば、わたしは『世界』をカーラから引き剥がすことができる。わたしは『世界』を滅ぼしたいの。何が、どうなっても」


 クラリスが話を進める度に、クラリスからあふれでる殺気は物理的な破壊を引き起こすまでに至り、建物は悲鳴をあげた。


「き、つい、の、クラ、リ、ス、さん!!」


「はっ!!ごめんなさい、ハーティアちゃん。

 ハーティアちゃんがカーラに大切な人を奪われたように、わたしは『世界』に大切な人を奪われたの」


「運命によって、なの?」


「いいえ、それだけじゃないの。

 アイツは、アイツは!!」


「わ、分かったの!!だから落ち着くの!!」


「……ごめんなさい、ハーティアちゃん。

 それで、ハーティアちゃんは、なるべくたくさんの同士を集めて、『世界』に勝つための種を撒いてきて欲しいのよ。フランをつけるから、よろしく頼むわね?」


「待ってなの、わたしは、どうやって運命と戦えばいいの?」


「言っていなかったかな?ハーティアちゃんは、恐らく異世界の魂をもって生まれてきたんだ、だから、運命の力は君には及ばないんだよ」


「へ、へぇ~~!!い、異世、異世界の魂!?ねぇ~!!な、なら納得なの!!」


「……思い当たる節でもあるの?」


「実は……」


 ハーティアはクラリスに、この世界に来るまでの経緯を、簡単に話した。


「……っぷ!あははははっ!!な、なにそれ、ワケわかんない!!あははははっあ、あんた本物のバカだよね、うくくくく、プハハハハ!!」


「バカじゃないの!!確かに無計画だったけど、今度はしっかりとご飯とお水を持っていくの!!」


「あははははははは!わ、わたしを笑い死にさせる気か!!あははははははは!!」


「むぅう!!アステリアとおんなじことを言うの!!……あ!?」


「ははははは……うん、うくく、どうしたの?ハーティアちゃん」


「アステリアが、わたしがここに来る前に言っていたの!!

 この世界にもう一人、わたしと同じ異世界から来た人がいるって!!」


「なんですって!?な、なにか特徴とか言ってなかった!?」


「うんと、うんと、……あ!!名前!!名前を言っていたの!!」


「何て名前なの!?運命に束縛されない人物がまだいたなんて……!!」


「う~ん………え、エリザベス、何だっけ?エリザベス、エリザベス…そう!エリザベス・イテア・ファキット!!エリザベス・イテア・ファキットって名前なの!!

 アステリアも言っていたの!!

『エリザベス・イテア・ファキットと言う』とかなんとか!それで、よろしく頼むって言っていたの!!」


「よろしく頼むとは?」


「なんか、精神的に少し不安定って言っていたの」


「なるほど、エリザベス・イテア・ファキットか」


「知っているの?」


「ああ、中央大陸の王国の、公爵家のご令嬢だったはず……。確か、ハーティアちゃんと同い年だったはずだけど……そうだ!!ハーティアちゃん、学校に行ってみないかな?」


「……それは、わたしに勧誘をしろ、と言うことなの?」


「ええ、わたしは、不幸と絶望の魔女よ?公爵家とより確実に近づけるのはハーティアちゃんだけなの!!お願い!!」


「まったく、人使いが荒いの」


「でも、直ぐにとは言わないんだよ?

 あと七年、その時、エリザベス嬢は何処かの学校に入学する。君はそれまで、勉強しながら音楽活動をして世界を渡り歩き、時期が来たらエリザベス嬢と同じ学校へと入学する。よろしく頼むよ!!」


「ええ~」


「なんなら、君のしらない曲もプレゼントするから、ね?」


「喜んでお受けするの!!さぁ、曲を寄越すの!!きょーく、きょーく、…」


「何て扱いやすい子ども何だろう……」




 ここからが、物語の始まりである。

これで、悲しみの曲、終了です。

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