表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルバイトを探していた俺が異世界に体験入店する話  作者: シャドウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/3

村人体験

俺の名前はタケル。28歳のフリーターだ。

仕事先を転々として、親からはいい加減身を固める様にと催促されているが、俺は1つの仕事より複数の店を体験してみたいのだ。

というのは言い訳で。1つの会社に身を固めると人間関係とかめんどくさくて、俺はそれが嫌なのだ。

1人で働く仕事などもあるが、結局の所誰かと会話しなきゃいけないし完全に1人と言う事は無理である。だったら、転々と店を回っていれば人間関係に困らずに自由にのびのび生活出来るって計算だ。

バイトも結構掛け持ちしていてキャリアは積んであるので高待遇で迎えられる事が多い。


今はバイクでの荷物の宅配員と、在宅ワークのコールセンターの補助役係、祝日限定で介護施設のヘルスサポートなどで生計を立てている。

だけど、結構スキマ時間が多く、何かスマホ1台で空いた時間に働ける仕事がないかネットで探してみる。


アルバイト スキマ時間 短時間 未経験OK

の項目で調べていく。

バイト先で気をつける事は、勤務時間である。

勤務時間が長いバイトは拘束時間が長く、無駄に残業させられたりするのがほとんどだ。

だから、1日1時間からOKのバイトを選んだ方が後々自分のスケジュールとかも組みやすいし、いざ辞める時も後腐れ無く辞められるということだ。

変に仲良くなって、人間関係に巻き込まれたら本当にめんどくさくなったりするから…。



「お、なんだこれ?」


スマホでスクロールしていると、気になる項目を発見する。


『異世界体験♩未経験者大歓迎♩自分のペースで働きたい時に働ける♩』


「異世界体験?気になるけど…うーん。詳しい詳細が載っていないな…どうするか」


この手のサイトも中にはいくつもある。悪質な職業で、それこそ変な壺を買わせたり…。

月50万!とか月100万!とか匂わせておいて、いざ登録してみると転売サイトだったり、初回の登録にお金が発生したりとか、サイトに飛んだだけで情報を抜き取られ、悪用されたり。

こういうのは基本的にスマホにフィルターブロックをかけていれば、サイトに飛ぶ前にブロックがかかり警告文が出てくるからその先に行かなければ大丈夫な仕組みとなっている。だから、仮に怪しいサイトでも警告文が出なきゃそこはとりあえず安心していいということになる。もちろん、その後はちゃんと見定めないといけないけどね。

おっと、話が逸れたな。


恐る恐るページをタップしてみる。よし、警告文は出ないな。えっと…何々?

『ありがとうございます♩この度、タケル様は異世界体験の被験者に選ばれました♩これから1分後に村人として異世界転生を行います♩向こうでの時間はこちらの世界の時間と異なって居ますので、ご安心ください♩それから、向こうで手に入れたアイテムなどは紛失しますのでご注意ください。スキルなどはこちらの世界に持ち帰り可能なので、出来るだけ多くのスキルを手に入れて、これからのタケル様の人生に役立ててください♩最後となりますが、任意で行き来する事は出来ませんのであらかじめご了承下さい。それでは時間になりましたので、今から転送致します』


長々と説明を読み終えた頃、突如スマホが光り出した。慌ててスマホを手から離すが、光りがどんどんと俺を包み込む様に部屋中に光りが溢れ出した。

えっと、これって…!!



ーーー


「こりゃ。いい加減起きんかタケル」

「ん…ここは?」

「寝ぼけておるのか?はよ支度して畑作業に行かんか!」

「ちょ!押さないで!ってあんた誰!?」

「あんたとは何じゃ!口の聞き方を忘れたのかい?」


ポンポンと杖で殴られる。痛みはないが、不愉快な感触だ。目の前に突如として現れた婆さん。見た事無いはずなのに、何故だか名前を知っていた。


「ごめんってダリ婆!用意してすぐ行くよ」

「まったく…」


頭に咄嗟に浮かんで来たダリア婆さん。ダリ婆と愛称を込めて、村人から呼ばれているらしい。

ん?村人?


周囲を見渡してみると、先ほどまで自室に居たはずなのに、ボロっちい小屋の様な場所に居た俺。

時代劇に出てくる様な物ばかりが置いてあり、家の中だと言うのに臭いがキツい…。すごく鼻に残る臭いだ。何の臭いか分からないけど、とにかくとても気になる臭いだ。


「うわ!扉とかないじゃん!そりゃ臭いが充満するわけだ」


小屋の隅に置かれた藁の様な束。そこは、トイレだった。大きな穴が空いていて、臭いの元はそこから来ていたのだ。どうりで臭いわけだ。後で蓋しよ。


ダリ婆の監視もあり、俺は畑作業に向かうことにする。やった事はないけれど、この身体の持ち主が身体で覚えているのか、俺はそこまで困る事はなかった。腰を曲げ稲を植えていく。実った野菜を鍬の様なモノで刈り取り、籠の中に入れていく。


「お、今日は早いなタケル!…それに、いつもより手際がいいな。何か良いことでもあったか?」

「おはようレンジ。…それから、おはようシュイ」

「…おはようございますタケルさん」


レンジとシュイ。兄妹で、俺と同い年のレンジ。妹のシュイは2つ下の女の子だ。

レンジは明るく、笑顔が眩しいヤツだ。元気で村1番の人気者。

シュイは可愛らしい見た目の女の子で、どうやらタケル…基、この身体の持ち主が好きな相手の様だ。

彼女を見ると胸の鼓動が高鳴り、心音が早くなったからそうなのだろう。


「ダリ婆に起こされて…まだ少し眠たいよ」

「はは。お前は村1番の寝坊助だからな!ダリ婆も心配だったんだよ。あんまし悪く言うなよ?」

「分かってるさ。とりあえず、籠を交換してくれないか?」

「了解!おお、今日の野菜達はツヤといい大きさといいかなりの収穫になりそうだな!ほら、シュイ。タケルのサポートをしてやれ」

「はい、お兄ちゃん」


そう言って、レンジは俺とシュイを残し別の箇所の野菜の収穫の場所へと向かって行った。

残された俺とシュイは、2人で野菜を収穫したりしていた。籠と籠を交換する際に触れる手と手。その度に身体が反応するのはどうにかしたい所だったが…まあいいか。いつか慣れるか。


「…今日のタケルさん、いつもと違うような?」

「そうかな?自分では分からないんだけど…というか、いつも俺を見てくれているの?」

「…ッ!やっぱり、何だか変だよタケルさん。急に扱いが…」


喜べこの身体の持ち主よ。君とシュイは両想いだ良かったな。などと思いながら、畑作業を終わらせた。



「おー終わったか。お疲れ様タケル。シュイもえらいぞー」

「お疲れ様レンジ。そっちはどうだった?」

「こっちも大漁の収穫だったよ。太陽神様の機嫌が今日はすごく良いみたいだな!」

「太陽神様?」

「忘れたのか?ほんと、いっつもボケーっとしているからだぞ!太陽神様は、今も空の上で輝いているだろ?日によって、太陽神様の輝きが違ったりするんだよ。いつもはこんな豊かに野菜が実る事はないんだが…機嫌が良いとしか思えないな」


聞き覚えがあった。この世界には幾つもの神々が存在していて、神々の恩恵で人々は暮らしているという。しかし、太陽神様ねぇ…。


太陽を直視出来ないから空を見上げてみる。俺の居た世界とは変わらず、眩しい。特に変わってるとは感じないけれど、異変が起きているのだからレンジの言う通りなのだろう。俺はあまり深く考えず、手や服についた泥を落とす為に川に向かう。


「そうだ、この後暇かタケル?」

「特に用事はないな。どうかしたのか?」

「隣町に農作物を売りに行くんだよ!で、俺は魔物を狩って来るから、シュイと2人で売りに行って来てくれないか?」

「シュイと?」

「そうだ。な、シュイ」

「…はい。私も、隣町行ってみたいです」

「そういうことなら。一緒に行こうかシュイ」


満面の笑顔でこちらを向くシュイ。タケルよ、お前は女の子を見る目があるな。可愛くていい子じゃないか。


【スキル 年下マスターを入手しました】


?何か、頭の中で声がした様な気がしたが…気のせいか。



それから。馬車で俺とシュイは隣町に向かう事にする。この村から、馬車で半日かけて着ける距離にある町で、タケルの記憶では結構大きめな町の様だ。雑貨やら売っていて、かなり賑わっている。

野菜の新鮮度が良いから、余ったお金でシュイにプレゼントでもあげようかな。



この世界の貨幣は、コインのようで、日本円にすると銅貨1枚が100円。銀貨1枚が1000円。金貨1枚が1万円。大金貨1枚が10万円。その上に金板があって、それは1つで1000万円くらいの価値みたいだ。1円や10円という単位は無く、最低が100円から…つまり、銅貨1枚からとなっている。


この世界に来て気が付いたが、どうやら俺はスキル持ちの様だ。先ほど、頭の中で響いていた声は、スキルの獲得を意味していたのだろう。

ステータスと頭の中で念じてみると、ゲーム画面の様なスクリーンが目の前に現れた。



ー名前 タケル 職業 村人

年齢28

レベル 3/50

力 25

魔力 0

防御力 50

素早さ 20

知能 35

運の良さ 100


スキル ・農作物の知識…畑の栽培法など、ありとあらゆる知識が詰め込まれている

・異世界からの使徒(仮)…異世界転生者に与えられる特典。レベルアップ時にステータス値が大きく上昇する※体験なので、本来の1/2。

・太陽神の加護…神、太陽神からの寵愛。畑作業時、収穫物の出来の良さがランダムで良くなる。運の良さに比例する。

・年下マスター…年下の女の子からの好感度が上がりやすくなる。ー


最後の部分にツッコミたいが、何だかRPGの様なステータスだ。そういう概念がある世界なのだろうか?先ほどは言わなかったが、レンジも魔物を狩って来るとか言ってたし。

何にせよ、初めての事でかなり楽しい。

今はゲーム気分で楽しめているが、その内魔物とかと対峙したりするのかな?


などと考えながら、時折シュイと談話しながら町に着いた俺達。野菜を売り、いつもより多く儲けた俺は、雑貨屋で見つけた青のネックレスとトイレの臭いを取る芳香剤みたいなモノを購入した。

青のネックレスを、シュイにプレゼントすると喜んでくれていた。

その後、俺たちは馬車で揺られて村へと戻って行った。




ーそんな日々を続けて1ヶ月が経とうとした頃。

収穫した野菜を売りに行った帰りだった。村から煙が上がっていた。馬車を引く力が強くなる。まさか、まさか…!


「なんだよ…これ…」


村が半壊していた。畑は荒らされ、家は壊されていて見るも無惨だ。


「レンジ!!シュイ!!ダリ婆!!村の皆!!!」


馬車から降り、村の中へ走る。所々燃えているのか、煙の臭いが鼻を通り抜ける。その臭いに紛れて、鉄の様な臭いもした。血の匂い!?


「どこにいるんだ!!!皆…皆…?」



村の中央に重なる物体。積み重なっていて、それが何なのか瞬時に分かってしまった。

人、人、人の山。真っ黒になった人の山だった。

あまりの光景に嘔吐する。気持ち悪い。頭がガンガン揺れる様だ。何なんだ?一体これは?こんなのが現実であっていいのか?


「頭ー!!生き残りがいやしたぜ!」

「連れて来い!」


どこから現れたのか、大人数の人があちこちから出て来た。頭と呼ばれたヤツの身なり、盗賊の様だ。

俺はソイツらに取り押さえられ、頭の足元まで連行される。身動きが出来ない。


「コイツで最後の村人か。まあ金目のモンも盗ったし美味しい思いもしたし今回は豊作だったな」

「へい。ひひひ」

「それにしても、最後の女は最高だったよな。まるで誰か助けに来てくれると信じていたのか…思い出して来ただけでゾクゾクしてきたぜ」

「最後の女…」

「もしかして、待っていたのはテメェだったとか?ひゃはは。こりゃ傑作だ。ほら、その女が持っていた形見だ」


無造作に俺の前に投げられた青のネックレス。突如として、シュイとの思い出が頭の中にフラッシュバックする様に流れる。レンジとの思い出、ダリ婆との他愛のないやり取り、心暖かい村人達の皆。俺に優しくしてくれた人達の無惨な骸の山。

色々な感情が頭の中を駆け巡り、声にならない怒りと悲しみが同時に湧き出てくる。


「ひゃはは。いいね、いいなその表情!!全てを失った野郎のその顔を見るのが俺達ノーヘル団の愉しみなんだよぉ!!テメェも良い声で鳴いてくれよ?ひゃはは」

「最後の女をなぶった時の顔が今でも忘れられねぇぜ。タケル…タケルとか言ってて、手足をもがれてもずっと鳴いてて本当に最高だったよ」

「テメェら!!!よくも、よくも!!!」

「ひゃはは。テメェも、あの世で俺らの活躍を見ているこった」


斧が俺の頭に突き刺さる。そこで、俺の意識は途絶えた。




ーーー



「シュイ!!!」


意識が戻る。見慣れた部屋、どうやら俺は元の世界に帰って来たようだ。

しかし、村人のタケルになっていた記憶が鮮明に蘇り、急激な怒りと非日常な出来事で嘔吐する。

トイレに駆け込み、俺はゲェゲェと吐く。

レンジ…ダリ婆…村の皆…それからシュイ…。


『パンパカパーン。異世界体験はいかがでしたか?貴方には謝礼金として300万円支給される事になります♩おめでとうございます♩』


「何がおめでとうだ!!ふざけるな!!」


突如通知されたスマホの文を読み、俺はスマホを地面に叩きつける。幸せだった日常が、一瞬で無に還る非常。こんなのが許されていい訳がない。

操作をしていないのに、スマホから機械音が聞こえてきた。


『何を怒ってるのですか?アレは異世界体験であって現実ではないのですよ?その証拠に、貴方は死んでいませんよね?』


「ふざけるな!」


『おやおや、これは困りましたね。一体、どうしたいと言うんですか?』


「…もう一度、俺を村人のタケルとして異世界体験させてくれ」


『それは出来ないですよ♩体験と言っても、あの世界で起きた事。つまり、もう死んでしまっている人間に宿る事は出来ないんですよ』


「なんだよそれ…こんな後味の悪い事があってもいいっていうのか!?」


『それも含めて異世界体験なのですよ♩我々はそのサンプルを集めて居るのです♩今回はとても満足のいくものでした♩それでは、また機会がありましたらその時に♩』



そこで、スマホから聞こえていた機械音は止んだ。

拾い上げて見てみると、まるで最初から無かった様にそのサイトは無くて、調べてみても一切の情報を見つける事が出来なかった。

アレは、夢ではない。現実で起こった出来事なんだ。

現に、銀行通帳には300万が振り込まれているし、ステータスと唱えると頭の中で自分のステータスが浮かび上がっている。


ー名前 タケル 職業 フリーター

年齢28

レベル15/50

力 75

魔力 30

防御力 85

素早さ 60

運の良さ 250

スキル

農作物の知識…畑の栽培法など、ありとあらゆる知識が詰め込まれている

・異世界からの使徒(仮)…異世界転生者に与えられる特典。レベルアップ時にステータス値が大きく上昇する※体験なので、本来の1/2。

・太陽神の加護…神、太陽神からの寵愛。畑作業時、収穫物の出来の良さがランダムで良くなる。運の良さに比例する。

・年下マスター…年下の女の子からの好感度が上がりやすくなる。

・死からの生還…異世界体験で死んだ者に与えられるスキル。復活時、ランダムで1つのスキルを獲得する事が出来る。

・死者蘇生…その場に留まっている魂を呼び寄せ、肉体を再構築して蘇生できる。成功確率は運の良さに比例する。


「死者蘇生…」

もしかして、この力があれば…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ