アイとユウ
「なるほどぉ…! そんな事があったんだねぇ…!」
「はい…それで…」
私は今玲奈の研究室に来ており、玲奈にユウとアイの事について話していた。何故話しているのかと言うと、玲奈に教えてと言われたのもあるけど、なによりも…
「アイくんとユウくんが共存できないか…だったよねぇ…?」
「はい…!」
二人が共存できるのであれば、そうさせてあげたい。二人が一人の体で存在し続けるには、体への負担もあると思ったから。
そしてなによりも二人にとって、私と関わる時間が丸一日ない日がある訳で、それによって不満が溜まったりして喧嘩にでもなっちゃったらと思うと嫌だった。
「現状不可能ではないと思うよぉ…! アイくんの場合、別人格が芽生えた上で、身体を保有しているからねぇ…!」
「…! なら…!」
「でもぉ…正直な話、かなり危ないんだぁ…身体的な危険はないんだけれどぉ…精神が耐えれるかは怪しいんだよぉ…」
「それって…どうしてなんですか…?」
「ユウくんとかはぁ…用意された身体に機械によって作られた自立型の精神を注入しているから問題ないんだけどぉ…アイくんの場合はユウくんから作られた人格だからぁ…ユウくんから離れると人格が消えてしまうかも知れないんだぁ…」
消えてしまうかも知れない。アイは私に勇気を出して秘密を打ち明けてくれた。少しでも力になれればと思ったけれど、いくらなんでも危険すぎる…!
「ちょっと…相談してきます…」
「そうした方がいいよぉ…」
私は家に帰り、ずっと考えていた。
ユウやジーナさん達を作った。それは新しい命を生み出している訳で、危険が無いわけではない。当たり前のことなのに、現実味がなさすぎて忘れかけていた。
「奏さん…? 何悩んでるんですか? 話せることなら話してください。相談に乗りますから…」
アイは大切な家族の一人。失いたくない。話してしまうと、アイが危険を顧みずに了承してしまうかも知れない。そう思えてしまって、話すのが怖かった。
「アイは……ユウから自立できるってなったら…する…?」
「…! どういうこと!?」
「あのね…玲奈に少し相談したの…アイとユウが同時に存在できないかって…そしたら、不可能じゃない、だけど危険だよって言われて…」
「それでアイにどうしたいか聞こうか……」
「したい…! 自立できるのならしたいよ…!」
アイは私に迫るようにして話す。その反応は、私にとってはあまり嬉しくない反応だった。
失う可能性があるならこのままでも良い。これは私のわがままだ。でも、このわがままを聞いて欲しかった。
「でも…! もしかしたらアイは死んじゃうかもしれ…」
「命を生み出すのに危険があることくらい承知の上だよ! それで死んでしまうのなら私が弱かっただけの話だし…」
「本当に…やるの…?」
これは私の最後の希望。『やらない』という言葉が聞きたいけれど、そんな反応が返ってこない事くらい分かってた。
「やる…!」
「そっか…うん、分かった…! 玲奈に言っておくね…! 明日にや…るから…」
私がどんな顔をしてるのか分からない。アイの決断を受け入れようとしているのに、笑顔でこの話を終わらせようとしてるのに、笑えてる気がしない。
「奏さん…! 大丈夫だから…! 私は絶対生きるから!」
アイの私を抱きしめる。その体はとても暖かい。アイは今…生きている……
ここはユウとアイが現在唯一存在できる場所【夢の世界】………
「アイ、本気でやるの…?」
「あぁ…! やる…!」
「アイも分かってたはずだろう…? 奏の辛そうな顔、お前に危険な事をしてほしくないって事くらいお前が分からないはずがない…!」
「分かってる! やってほしくない事くらい…! でも、これは私のチャンスでもあるんだ…! 今のままじゃ、奏さんとの時間は足りない…! 振り向いてもらうには…もっと時間がいるの…!」
アイの顔は決意に満ちている。何をやったって、何を言ったって変わることはもうないだろう。でも……
「それで死んだら意味ないだろ……」
「……………」
静寂が僕達を囲んでいた。僕達は時が来るのをただ、待っていた………
そして翌日、私達は玲奈の研究室に来ていた。
「キミがアイくんかぁ…! なかなか可愛いボディをしてるねぇ…! ……ほんとにいいんだね?」
「あぁ…! 私はもう逃げない…!」
「なら…そこに横になってくれ…」
玲奈が指示した台座……そしてその隣には、大きな機械があり、機械を間に挟んで台座にアイとほぼ一緒の身体が置かれてある。
「これって…!」
「キミから教えてもらった情報をもとに予想して身体を作ったんだ…我ながら完璧すぎて驚いたよ…」
玲奈は何かの作業をしながらそう話す。
そして、準備が出来たようだ。
アイの頭には機械が取り付けられている。中央の機械を介して精神を注入するらしい。
「少なくともアイくんの体はユウくんに変わるはずだ…後は、あの身体にキミの精神を注入できるかだが…準備はいい…?」
「はい…!」
アイの返事は、自信と不安を誤魔化しているのが混ざったような返事だった。
「それじゃ…いくよ…スタート!」
玲奈がスイッチを押す。すると、機械が作動し、大きな音を立て始める。
しばらくの間、静かに時間だけがすぎていく。しかし、10分を過ぎた頃だった。
アイの体が光りだし、そしてユウの体へと変わっていく。
「精神は取り出せた…!後は注入できるかだよ…!」
後は注入できるかどうか、そんな時に、突然機械がボンッ!っと音を立てた。そしてアラートのようなものが鳴り出す。
「なにこれ…!?」
「機械の補助装置が壊れた…! 負荷に耐えきれなかったのか…!」
私はその情報を聞く頃にはパニックになっていた。
「アイは!? ユウは!? 助かるんだよね!?」
「少なくともユウくんは問題ない…! 補助装置が壊れた以上…アイくんに自力で頑張ってもらうしか…」
……………何かが鳴る音がする。そして、今までの思い出が見える。これは…ユウが拾われた時のやつか……ははっ!まだろくに言葉も話せてない! 奏さんの教育って凄かったんだなぁ…
あ…!ユウのやつ、奏さんと毎日お風呂に入ってたの!?羨ましい…!私も帰ったら一緒にお風呂入ろうかな……
………キスシーンだ!ここは…ベッドでキスしてる…いいなぁ…奏にキスしてなんて、私も言われたかったなぁ……
でももう…………
意識が遠のいていく。今までの時間は少なかったけど、まぁキスしてくれたんだし、幸せだったよね………
「おい! アイ!? しっかりしろ!」
「アイ…? 返事して…!」
うるさいなぁ…こんな思い出知らないし…!
「この淫乱詐欺師!語るだけ語って死んでんじゃ……」
「誰が淫乱詐欺師だ! つーかお前なに奏と一緒に風呂入ってんの!? 羨ましいんだけど!」
「起きた………」
「アイ!!」
私は何故か奏に抱きしめられている。とても暖かい、涙が肩に落ちる感覚もあるけど…目の前にはユウがいて…?私、死んでるんじゃ…?
「私…死んだんじゃ…?」
「はぁ!? お前死んだつもりでいたの!? なに諦めてんの!?」
「生きてるよ…! ちゃんと生きてる…!」
そっか…生きてるんだ…成功したんだ…!奏がずっと喜んで泣いてるのに、ユウのやつときたら暴言ばっかり……?
「よかった………」
………ユウが泣いてる。涙出してる……ユウのやつ……ただの照れ隠しって事か!可愛いとこもあるんだな〜!
「なんだ! ユウ、私が生きてて嬉しいんだな〜! 安心しろ…! 今日から私がお前のお姉様になってやる〜!」
「裸で抱きついてくんな! つか動くなよ…!」
「ちょっと二人…どうしたの…いつもと違うね…」
「ちょっと……ユウのせいで私のクールなイメージが…!」
「知るか…! こっちだって口調隠してたのに…!」
「二人のこと、私…まだまだ知らない事いっぱいあるんだね…!」
なんとか精神の分離に成功し、私はユウと同時に存在できるようになった。
これで、奏との時間を増やせたらいいな……
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