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92.レオナルド君は休みたいようです part3

大胆な変態行為はヒロインの特権



 なお、その一方では、



「いやあ……一時はどうなるかと思ったけど。まあどうにかお前らのくだらない喧嘩が治まって良かったぜ。もしもあのままだったらアタシは他の宿を探さないといけなくなるとこだったし……」



 こちら側でも似たような光景であった。

 レオナルドとクロムの男性陣が和気藹々と世間話に花を咲かせながら、浴場へ向かう途中。

ほぼ時を同じくして()()()も部屋を出ると、



「レオナルド……誰にも渡さないの……それにあんなエッチな鬼になんて……絶対に負けないの」



「ったく……お前も相変わらずだな。どこまでレオナルドの事が好きなんだか……確か現役の時もアイツに言い寄ってくる奴を追い払ってたもんな。それも猛獣も尻尾巻いて逃げだす形相で――」



 そう、初っ端から若女将シュテンと口論を繰り広げたエミリアとムーンの女性陣二人も、また彼らと同じく部屋にあった風呂桶と着替え片手に温泉への廊下を並んで歩いていた。


「猛獣も逃げ出すなんて……酷い言い草なの……せめて……死神も死を望む程って……言って?」

「一気に凶悪化したんだが!?」

「……恋する乙女の視線は最強……なの」

「物理的に最強になってどうすんだよ!?」


 それもまた何気ない会話を交えながら。

 するとそんな何処か物騒ながら段々と弾みの付いてきた女子トークに夢中になっていたせいか、


「おっ、そうこう言ってる間にいよいよ鬼の里の温泉だぜ! 最近ずっと原稿に齧り付いていたからな。ここで少しでも肩こりを減らしたいぜ」


「うん……私も【この時】を待っていたの」


 二人は気が付けば脱衣所の暖簾手前に到着。

 あとはこのピンク色の女湯暖簾を潜れば、待ちに待った大人気の温泉は目前という位置。


「じゃあ……ムーン……また後で」


 そうすると、先んじてエミリアが一歩前へ。

 隣で軽く肩を回すムーンより先に、その()()()()()()()を潜らんと動きだした……のだが?



「おい……待て」



 ふとムーンは彼女にそう声をあげた。



「なあエミリア。お前、何処行く気だ?」


「……えっ?」


 加えてそう意気揚々と足を速めるエミリアの浴衣の襟首を掴み、その動きを強引に制止したのだ。



「どこって……温泉……入るんでしょ?」

「いや、そうだが。お前は()()()だぞ?」



 して……その理由はというと。



「むむ……違うの……だってそっちは()()……」


「いやそんなん言われんでも見れば分かるわ! いいか! 私が止めてんのは今お前が嬉しそうに入ろうとしてんのが【男湯】だからだ! なんで男湯に堂々と侵入しようとしてんだよっ!?」


 今のムーンの発言通り。


「さっき……レオナルドお風呂行くの見たの……だから私が男湯を覗きに行くの」

「いやお前が覗きに行くんかい!?」


「……これも若さ故の過ち……なの」


「それ普通()()()()()()()だからな!? 女性の裸見たさの好奇心と、少年の童心が入り乱れるアホな展開に使われる言葉なんだが!?」


「だからムーン……私は男湯に行くの」


「ダメだ……私まで無駄な恥かくのはごめんだからな。 ここはグッと我慢して、諦めて私と背中の洗いっこするんだ! 分かったかエミリア」


「いや……私はレオナルドの裸見るのっ!」


「大声で告白してもダメッ! ってかよくもそんな恥ずかしい事大声で叫べるな!? むしろその周囲を顧みない圧倒的な度胸を分けて欲しいよ!」


 するとそんな一端の乙女らしからぬ大胆発言。

 まるで男女の性を入れ替えたような食いつき方で、エミリアは何食わぬ顔でレオナルドのいる男湯に侵入せんと企んでいたのだった!


「むうぅ……それに男の人より怪力なムーンに洗われたら……背中の皮なんか無くなるの……」


「いや無くなるわけねぇだろうが!? なんつう恐ろしい事言いやがる!? ってか、お前かつての仲間に向けてそんな事言うか普通!? 泣くぞ!? いくら私でも大声で泣いちゃうぞ!?」


「止めて……私が……いじめてるみたい」


「いじめられてるから泣きたいんだが!?」


 だが、ムーンは当然これを阻止。

 同じ女友達としてそんな事を認可する訳にもいかず、しかもせっかくの慰安旅行でこれ以上面倒事を起こされたくない彼女が必死に阻んだのだ。


「むう……これだから乱暴な女の人はダメなの……繊細な乙女心ってのを理解出来てないの……」


「繊細な乙女なら堂々と男の裸を覗きません! ほら、分かったら諦めて女湯入るんだ! いくらレディーでも超えてはならないラインはある!」


「それに……きっとレオナルドだって……女の子の裸見たいに決まってるの……だから私の裸で満足させて……ついでに私もレオナルドの裸を見れる……つまり一挙両得のチャンス……だから」


「はいはい、それ以上危ない発言すると憲兵に突きだしますよ。まあ代わりに私の裸を好きなだけ観察して良いから、ほら背中洗いっこするぞ!」


 よって、そんな男顔負けの覗き計画は水泡。


「いやぁぁぁぁぁ……レオナルドの裸ぁぁぁ……」

「へぇへぇ、分かった分かった」

「ムーンの馬鹿……いけず……暴力女……ぼっち」

「……壊れそうな心に効く温泉、あるかな?」


 結局エミリアはそう彼女に引きずられながら悪口をぶつけつつも、しょんぼりしながら()()()()()()()()()する羽目になるのだった。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

これが前話で繋げたかったメイン(ヒロイン暴走)部分でした。

次話については現在執筆中の為、完成し次第にて【近日更新予定】です。

それとこの幕間は後2~3話くらいで完結予定なので、もう少しお付き合いくださいませ。


ではでは最後にもしよろしければブクマや評価であったり率直な感想などお待ちしております!!

皆様がくださる評価等はこの【黒まめ】のモチベに直結するので……あとは飛んで喜んだりもします(´・ω・`)


※それと先に修正してしまい名前は分からなかったですが、前話で誤字脱字報告をしてくださったユーザ様……本当に感謝いたしますm(_ _)m

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