77.勝つ事しか見えなくなっていたようです
正直なところ……。
「く……くそっ!」
競儀の開始直後にてマティルダはこの勝負は楽勝だと思いこんでいた……だが、
「あらあら……マティルダお姉様ったら動きが段々鈍くなっておりますわよ。そろそろ疲労の方も溜まってきているのでありませんか?」
「うっ……うるせぇ! ヴィクトリア!」
ブオンッ! キンッ! ガキンッ!
ジャキッ! ジャキンッ! キンッ!
既に半時間ぐらい経過しただろうか。
そんな剣と剣が激しく交わり刃同時が擦る音。
刃の衝突が散らす火花の音が何度も鳴り響き、その度に観客が彼女達の勇ましく戦う姿に興奮し熱狂する声がコロッセウム全体に轟く中で、
(ちくしょう……流石は私の妹達か……)
長女である彼女、マティルダは苦戦していた。
例え知力と負けても、腕っぷしの強さ、体力などの身体能力においてヴィクトリアやメアリーとは比較にならない程に屈強な彼女だったのだが、
(ハアハア……ヴィクトリアの【入れ知恵】か)
どうした事か今こうして息を切らしていた。
そしてそれは装備している鎧の重さでも、その手に握る武器の重量が原因でも無く、彼女が得意としている筈の“戦闘面”で苦戦していたのだ!
しかし!
キンッ! キンッ! ジャキンッ!
「くっ!? 流石……お姉様ですわね」
「ヴィクトリアお姉様!? 大丈夫ですか!?」
「ええ……どうにか。ありがとう、メアリー」
「くそ、まさか『こんな展開』になるとはな!」
通常の彼女であれば余裕の勝利の筈だった。
いくら剣術が巧みな“技”で戦うヴィクトリアであっても、威力は低くとも素早い身のこなしで相手をじわじわと追い詰める“速”のメアリーであったとしても“豪力”の彼女には絶対敵わない。
何故ならば……ここまでその両者の剣の指南をし、才能と奥義を引きだすまで鍛えたのは――
(まったく……幼い頃からお姉様が考案した地獄の剣術特訓メニューで鍛えられたおかげですわ)
(あの時は血を吐くかと思いましたが、必死に付いて行ったおかげで、“こんな戦い方”ではありますが私でもお姉様と戦えるまで強くなれました!)
そう……まさかのマティルダ自身だったから。
だからこそ本来であればその師匠である彼女に膝をつかせ、勝利しようなどそう易々と為せるものでは無いのだ……………………けれども!
「ゼェゼェ……ったく卑怯な妹達だぜ……」
「はい……その言葉につきましての異論は一切ありません。ですがマティルダお姉様、これは立派なヴィクトリアお姉様の戦略なのですよ!」
「ああっ!? これが戦略だと?」
彼女が戦っていたのは二人だった。
一対一対一、これが今回の最強の儀の形。
マティルダ、ヴィクトリア、メアリーの三名がそれぞれの武器を手に勝利を目指して互いに戦い合うというのが本来の戦闘ではあるのだが……、
「ちいっ……そういう事かヴィクトリア! まずお前達二人が【手を組んで“単騎”では絶対に勝てない私を先に叩こう】って寸法かよ!? くそ! どこまでデキた妹達なんだよ!?」
そう! なんと二人の妹は共闘!
たとえ幼き頃より共に剣術を学び、観察して来た彼女の剣筋はどうにか読めたとしても、流石のその圧倒的な力技やずば抜けた身体能力の前では【一対一】など不利どころか敗北必至。
「ええ……そうです。お姉様の仰った通りですわ……ですが規則に反している訳ではありません! 共闘がダメという規則も! ましてや一人では勝てぬ相手を前に共闘して挑んではいけないというのもありませんの! それに私達にも――」
「こんなワタクシ達でもワタクシ達なりに【女王になる動悸】があるのです! ですからマティルダお姉様! この戦いはワタクシ達かヴィクトリアお姉様のどちらかが勝たせていただきます!」
だからこそ、二人は堂々と彼女へそう向ける。
そして卑怯なのは百も承知、さらにこの後で長女から罵声を浴びせられようとも、どれだけ怒られようとも全て覚悟の上で自身が女王になる事を望み、自他共に認める三姉妹最強の長女へ――
「いきますわよ! メアリー!」
「はい! ヴィクトリア姉さま!」
「ぐっ!? お前達は一体なにを――」
「一気にお姉様へ畳み掛けますわ! それではお姉様、後の事は私達二人にどうかお任せくださいませ……ではいきます! 我が剣刃よ! 一斉に舞い立ち塞がる者を翻弄しなさい! 双剣舞!」
「マティルダ姉様……ごめんなさい! ですが私もヴィクトリア姉さまと同じ気持ちなんです! 散りなさい鋭き剣先よ! 五月雨突剣!」
ヒュォン! ズシャ! ズシャシャャ!
まずヴィクトリアがその両手に握る剣に力を込め、技名通り踊るような鮮やかな動きで剣を振るって斬撃を一斉に彼女へ放ち……さらに!
ヒュン……ビュンビュン! ビュオォ!
ほぼ同時にメアリーの奥義。
持久力の少ない彼女は剣先の一点のみに意識を集中し、目に留まらぬ早業で剣先を前へ突く様に振るって、次女と形状は異なるが槍の如く鋭い連撃を風切る音を伴わせ放っていく!
「う……ぐっ! くそっ!」
対してこれには流石のマティルダも動揺。
その剣技の成長ぶりにも驚かされていたが、何より戦いの場とはいえ、それを見事に協力して自分へ向けてくるなどとは思いもしなかったのだ。
そして……だからこそ彼女はそんな一気に迫りくる“斬撃”と“突撃”の連携奥義を前にして、
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
ヒュオンッ! ヒュオンッ! ビュン!
ガキンッ! ガキンッ! ガキンッ!
「さすが……ですがまだまだいきますわよ!」
「私達の強さも味わってくださいませ!」
「うぐ!? くそっ! もう……これ以上は凌ぎきれ――――ぐわああああああああああああ!」
どうにか持ち前の武器や超人じみた直感で一部の斬撃は弾き返したりしたものの、全ては間に合わず結局は防ぎきれなかった攻撃を受けて、最後はその勢いままに彼女は闘技場の壁に吹っ飛ばされてしまったのだった……。
※読みやすいようにまた過去話の一部を添削しました。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
次話も明日投稿予定です(/・ω・)/
時間は今回のように夕方~夜くらいの時間でスマホ投稿出来ればと思っています。
ではでは最後にもしよろしければブクマや評価であったり率直な感想などお待ちしております!!
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