64.開幕の時のようです
「さてさて、今日は実に楽しみですな」
「はははは! そうですね。何せいつもと違って滅多に見れない催し物ですからねっ! まあ、その分チケットの入手に苦労しましたが……」
「わははははは! 確かに……この催し物だけは見物客もいつも以上に集まりますからな!」
太陽が眩しい清々しい程の晴天の下。
その日は特にざわついていた。
「貴方は誰が勝つと思いますかな?」
「僕はヴィクトリア様を推します、そちらは?」
「私は純粋にマティルダ様ですなあ」
このアルテミアーナ最大闘技場である“アマゾディア・コロッセウム”にて、そう多くの観客が【それ】の開催を待ち望み、場を賑わせていた。
収容人数合計、約7万人であるこの円形闘技場。
通常時であれば猛獣やモンスターとの勝負、他には猛者の戦士による一騎打ちなどの激しい格闘劇が定期的に執り行われており、その歴史は建国時まで遡る程で入場券の多額な利益等も含めて国の収入共々実に歴史の深い建造物である。
「ホント……凄い人数ですわね。驚きました」
「おや、お嬢さん。このアルテミアーナ最大のイベントに参加されるのは初めてなんですかな?」
「え、ええ……一応お噂には聞いていたのですが、まさか全席満員になっているとは到底思えませんでした……貴方様は以前に来られたのですか」
「はい、実は先代の女王様の時に一度。初めは私も驚きましたよ。まさかここまでの人数が――」
だが、しかし!
今回はその賑わい方が特に凄まじく、通常時は精々集まっても2~30000人が関の山と言うこのアマゾディア・コロッセウムではあるのだが、
「マルクーナ、トンダル……はて、あの装束は砂漠の国ダルキナの住民でしたかな……いやはや本当に、今回はあちらこちらの国からやって来るのですな。なにぶん初めてなもので驚きですよ」
「まあでも仕方ありませんよ、旦那。何せ【女王決定戦】だ。一体どんな女性がこのアルテミアーナを治めるかは何処の国にとっても気になるというものですし、興味深い催し物ですからな」
「フハハハハ、まあ確かにそうですな!」
「ああ、そうだ。もし初見の方ならば最終戦までの期間中は気を付けた方が良いですよ。その指定席のチケット、裏では高値で取引されてますからね。特に最終戦は数倍に跳ねあがるとかなんとか……ですから盗難にはご注意くださいね……」
「ほほほ……それは恐ろしいですな……」
それが今日に限っては完全に“満席”。
なにしろ周囲の大国に負けず劣らずの武力を持つ事で名を馳せているこの強豪国の新たな頂点を決めるというのだから、その注目度も相応に大きく、他国に住まう人々もわざわざこれだけの為に来訪するほどであった。
そうして……。
カッ……カッ……カッ……カッ……。
「おおっ……ついにお出ましですか……」
「ゴク……いよいよ始まるというわけですな」
「さてさて、此度はどうなるのやら……」
カッ……カッ……カッ……カッ……と。
そんな履物のかかとが地面を鳴らす音が響きだすと同時に、会場の空気は一変。
「「「…………………………………」」」
「「「「……………………………………」」」」
瞬く間に闘技場の賑わいは静寂に変貌。
先まで客同士の間で勝手に盛り上がり、ヒートアップしていた熱気が一気に冷めるかの如く……、
カッ……カッ……カッ……カッ……。
「「…………………………(ご、ごくり)」」
「「「……………………(ドキドキ)」」」
カッ……カッ……カッ……カッ……。
参加者の入場口奥より次第に近くなっていく足音に初見問わず、全観客たちは即座に反応し一斉に沈黙し、そうただひたすらに待機していた。
主催者である“彼女“によるその挨拶を……。
カッ……カッ……カッ……カツン!
「ふむ、素晴らしい。主催者の登場で皆が空気を読んで一斉に黙ってくれるとは。これほど進行させやすい環境もそうはないな……」
いつしかその足音が止み……そして。
「そして相変わらず凄まじい数だな。いつもこれくらい観光客が集まれば、我が国もウハウハで、女王である私ももっとリッチな生活が出来るというものなのだが……まあ流石に仕方あるまいか」
満を持して現れる。
多くの観衆の目が集まる闘技場の中にて彼女。
アルテミアーナ現女王である“イザベラ”がこの場の凄まじい集客具合に軽い冗談を交えつつ、
「さて、では一仕事しよう」
そのまま彼女は闘技場中央へ移動。
再度履物の音を鳴らしながら設けられた宣誓台へ上がり、軽く全体を見回した後。
「ええと……前回の母君の開催時はどう言ってたか……ああ、そうだそうだ! 思い出したぞ!」
拡声器を前にして始める。
「さて……この度は皆様お集まり頂きありがとうございます。まず初めにこの国の統治する女王としてお礼を申し上げます。そして軽くではありますが、私がお見受けしたところ我が国の国民だけでなく、他国の方々までに至るまで――」
まあ冒頭こそフランクな彼女らしからぬ、そんな定型的な堅苦しさを覚える挨拶だったが……。
「この場にいる者、もしくは残念ながらチケットの抽選に外れ、映像受信具にて、この中継されている映像を見ている者――」
イザベラ女王はこの決定戦を開始するにあたり最も大切な【儀】であり、尚且つ己の登場にて静まり返った観客を“一気に沸かせるあの宣言”を後回しに、形式に基づき丁寧な言葉を連ねゆく。
「此度の催し物におきましても、多くの忠実なる国民である皆、そして我が国の国益を支えてくださっている他国から支援や協力により、本日まで国を維持できた賜物に寄るものであり――」
そのまま詰まる事無く数行、数十行と。
国の変革を示す格式ある儀式である以上。
イザベラ女王は覇気のある声で己に注目している者達へ演説を続けて行き…………そして!
「さて……それでは伝統的ながらも、堅苦しい恒例の前口上はこれ位にするとして――」
(おお…………いよいよか!?)
(ふふふ、すっかり待ちわびていました)
(ああ、早くしてくれ! 耐えらんねぇ!)
(さあ……ここから盛り上がりますぞ!)
イザベラ女王の演説直後。
声には出さずとも会場および中継される映像を見守る観客全員が既にざわつき、密かに胸を躍らせていく中で……彼女はこう大きく発した!
「ではこれより! この旧女王イザベラの名にかけて宣言する! 次の世代へと希望を託し、国の繁栄と栄光を任せるに値する最強に相応しい者を選ぶ儀式! 女王決定戦の開始を宣言する!」
高らかで、堂々と、勇ましく。
イザベラ女王は腹の底から出しきった様な大声で会場中にそう女王決定戦の開会を宣言した。
すると!
「「「わあああああああああ!!」」」
「「「来たああああああああ!!」」」
「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」
「「待ってましたあああああああ!」」
静寂していた会場が再び沸騰。
会場の至る所から一斉に歓声の声が沸き始めたかと思えば、それは連鎖的に周囲へと広がっていったかと思えば、いつしか声だけでは無く。
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
パチパチパチパチパチパチパチ……と。
そんな盛り上がる声に乗じて、拍手の嵐。
約7万人相当が座る会場から一斉に巻き起こる盛大な拍手の音を背景に……ついに幕が開いた。
この国最大のイベント【女王決定戦】が……。
ここまで読んでくださりありがとうございますm(_ _)m
ひとまず現在完成している分だけ投稿しました。
そして次話の投稿については現在執筆中のほか、先日再就職をしてそろそろ仕事が始まるので少してんやわんやするかもですが合間合間でなるべく筆を進めていきすぐにでも投稿していく予定です(*'ω'*)
ですのでまた近いうちにお会い出来ればと思っております(*´ω`*)
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