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63.王女との強制デート?のようです part4



「レオナルド! レオナルド!」



 本当に……とても長い一日だった。



「おい! 聞いてんのかよレオナルド!」



 高貴さとは遠い乱暴な物言いの王女マティルダ。

 そんな彼女との行動は恐らくこれまでの僕の生きてきた日常の中でも、トップ10……いや、下手をすれば五本の指に入りそうなくらいにとってもとーっても長く感じられた。


「なあなあ、レオナルド! これどうだ、このドレス似合うか! 店員のオススメみたいなんだ!」


「アア……イインジャナインデスカ? ソノドレス、ボクハトッテモ、オニアイダトオモイマス」


「おい、せめてこっちを見てから感想言え。お前が話しかけてるのは“マネキン”だ。あとなんだ!? その清々しい程の棒読みは!?」


「エッ……ソンナコトアリマセンヨ、アハハ」


「顔が全く笑ってないぞっ!? そんな使い古されたボロ布みたいな疲弊した顔で言うな!」


 僕が彼女の持つ人徳に感心を抱きつつ、ベンチで三段アイスをどうにか完食してからというもの。

 多くの食物という燃料を得た影響によってマティルダの傍若無人っぷりはますますヒートアップ。

 最早、その彼女の姿はまさに暴走機関車の如く。


「レオナルド! 次に案内する場所はな――」

「もう……お好きになさってください……」


 休憩や休みとか言う甘っちょろい選択肢など一切挟まずに、まるで僕を馬車馬か何かの様に【観光案内】という名目で町中引きずりまわしては……毎回こんな感じに、


「どうだ! 凄い武器の品揃えだろ! ここはこのアルテミアーナの中でも特に上質な武器が揃ってるんだぜ! 少し値は張るけど別国の行商人が高値で転売する為に来訪する位なんだ!」


「へぇ……それは凄いね」


「だろ! しかもここだけの話……この店は夜になると、マリナっていう滅茶苦茶エロくて強い女性職人が店頭に姿を現す事でも有名なんだ! 本当にエロいんだぜ……そりゃもうおっぱいとお尻がすんごくて、まさにボン、キュッ、ボ――」


「わあ……この“椅子”凄い作り込みだね。ここは良い【家具屋】さんだね? マティルダ?」


「私の話を全然聞いてねぇな!? レオナルド、ここは武器屋だって今説明したよな!?」


「ああ……ごめん、そうだね。で……夜になったら、確か滅茶苦茶ムキムキのおじさんが出てくるんだよね? 胸筋とお尻の筋肉が特に凄いボン、キュ、ボンなパワフルボディの職人が――」


「全然違うぞ!? もうそれだと見た目どころか性別の時点で明らかに別の人物じゃねぇか!?」


 武器屋、道具屋、防具屋、風車小屋。

 商店街、公園、遺跡、憩いの場、初代女王の像、石碑などなど……一ヶ所に留まるという事など一切無く、もうとにかく次から次へ場所を移動。

 それでいて時間制限は”一方的過ぎる早口な説明”+”見物時間は数秒”だけというそんな観光と言う言葉の意味を再定義したくなる程にひたすら忙しなく、落ち着いて見た建造物と言えば最初に寄ったステーキ屋くらいであり、


「よし、レオナルド! 次は南西にあるブルーガーデンっていう名所を案内してやるぞ。湖の上に古い遺跡が浮かんでるロマンティックな場所でな、特にカップルの間では人気のばしょ――」 


 もうとにかく【走る・着く・走る】の繰り返しだったんだ。


(あれ、僕さっき何を見ていたっけ?)


 だからこそ……そんな予定はグチャグチャ。

 ルートは自由奔放でハチャメチャな案内の中にて頭に辛うじて残っていた記憶はたったの【二つ】。


 ある種の殺人メニューとも言えた朝食の【ジャイアントステーキ10段盛り~究極の満腹死を添えて~】の何とも肉肉しい凄まじい見た目の料理であり、もう一つは【無限段インフィニティ】とかいうアイスクリームの意味不明なサイズ表記の二つだけ。

 

 それでその二つだけはギリギリ頭に刻まれて覚えてたんだけど……


「あの……マティルダさん?」

「ん? どうしたレオナルド?」


 以降に強引に案内されて目で入った建造物の名前の殆どは完全に忘却……いやむしろその時の僕の頭はさらに最悪な状態になっていたのか、深刻な問題はこの後であり……



「その“レオナルド”って【誰】ですか?」

「ほぇ?」


 果てにはこの始末。


「はあ!? いやいやいや!? どう聞いても、どう考えてもお前の名前なんだけど!?」


「れおなるど……そうですか。疲れすぎたせいか自分の名前も忘れてしまいました……あはははは……ところでれおなるどって誰の事ですか?」


「うわ! やべぇ、どうしよう!? レオナルドが軽い記憶バグを起こしてやがる! なに、お前そんなに疲れてたのかよ!? 早く言えよ!」


「言わなくても……分かると思ったんだけど」


 最早このザマ。


「お……オッケー! 分かった分かった! じゃあ次は休憩挟むから! だから元気出せって!」


「ほ……ほんと? ホントに休憩を入れ――」


「ああ! だから休憩がてら元気を出す為にも“今からもう一回【ジャイアントステーキ】を食い”に行こうぜ! 今なら腹ペコだろ? 次は10セット(肉100枚)頼んでやるからな!」


「神よ、どうやらお迎えが近いようです……」


 と、途中からの僕の様子は終始こんな感じ。

 耳栓でも埋め込んでいるみたいにマティルダの名所説明の類は一切耳に入るどころか、完全拒絶。

 加えて僕の疲労度はドンドン高まり、風化していく建物かの如く体力はそのまま削られていき、終いには自分の名前すら忘れる始末だったんだ……でももっとヤバかったのが……。



「いやあ! 今日は中々楽しかったな!」

「不思議だね……僕は全く楽しくなかったよ」


 名所めぐりが終わった日没の頃……。


「でも、これで観光案内は終わったんだよね?」

「ああ、そうだぜ! 今日一日でこのアルテミアーナの名所や有名店は全部回ったからな! この国での案内はこれにて終わりだ。お疲れさん!」

「ホッ、よ……良かった。じゃあこれで明日はゆっくり出来るって事だね! それなら僕は明日図書館にいるから、何かあれば呼ん――」



 一気に体内の疲れが噴き出たのか、もう視界はクラクラで記憶はあやふや、体はヘロヘロ。

 さらには足元はフラフラというこんな事態であっても、


「は? お前何言ってんだ?」

「へっ?」

「明日は【国外】の案内に決まってんだろ?」

「………………………………………うそ」


 過労地獄が終わらなかった事だった……。


 ―― ―― ―― ―― ―― ――



「おーい……レオナルド?」


「……………………………………」


「もしもーし、レオナルド生きてるか?」


「……次返事無かったら死んだと思ってください」

「じゃあ今は少なくとも生きてるって事だな」


 そうして。


「よし、じゃあお疲れのとこ悪いが“決定戦”の会場【アマゾディア・コロッセウム】に向かうぞ。既に国民達も皆客席で待機しているらしいからな」


「はい……分かりました、イザベラ女王」


 結局のところ……ほぼ二日間の間。

 僕はマティルダに好きなように振り回され続けた結果、ろくに僕の身体休まる暇も無く気が付けばあっという間に日数が経過した今現在では、



「……にしても酷い顔をしてるな。あれか、マティルダの仕業か……ったく、いつもはそこまで強引じゃない娘の筈なんだが、お前は余程気にいられたみたいだな! ハッハッハッハッハッハ!」


「笑い事じゃないですよ……どんな教育受けたら異世界からのゲストをこんなになるまで振り回せるんですか……もう本当に疲れましたよ」


「ハッハッハ、すまんすまん。まあ審査員であるお前の出番はまだ先だからな。それまではくつろいでおけ。じゃあ案内するから私に付いて来い」


「はい、お願いします」


 と……こんな感じでどうにかマティルダから解放された、僕は城内での軽い朝食を済ませた後。

 未だ溜まっている疲労を身に感じつつ、気遣ってくれるイザベラ女王に連れられる形でこの国アルテミアーナ最大の催し物である儀式。

【女王決定戦】の一回戦となる“料理の儀”が開催される会場に足を動かす事にしたんだった。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

次話は明日投稿予定です。

正午以降【直接投稿】致します。

それでは最後にもしよろしければブクマや評価、感想をお願い致します。私としてはユーザ様の声はものすごく励みになりますので……あとすんごいモチベに直結します(´・ω・`)

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