59.女王の依頼を受けるようです
【アルテミアーナ城 地下】
キラキラ、キラキラ、キラキラ。
ピカピカ、ギラギラ……キラキラ。
そんな陳腐ながら、この空間の雰囲気を最も的確に表す擬音は他に早々存在しないだろう。
「すっ……すごい。流石は一国の【蓄え】だ……もしここがダンジョンの最下層とかなら、どうやって山分けするかで4、50分は議論する位だよ」
そしてレオナルドはそんな眼前の煌めく光景。
通路の端に幾つも置かれており、一部に関しては口から宝物がはみ出てさえいる宝箱の列。
「もし盗賊だったリックがこの光景を見たら、多分喜びと感動で失神するか、もしくは暴走して部屋中を気絶するまで走り回る所ですよ……女王」
他にも随所に盛られた金貨の山、黄金で出来た石像、宝石輝く装飾品、果てには金塊の山までと。
もう四方八方が宝、宝、宝というそんなとんでもない光景に、かつて冒険者だったレオナルドとしては思わず興奮を抑えられずにいたのだった。
「一応……注意しておくが触れるなよ。金貨一枚でも触れた時点で私はお前を本気で殺さなくてはいけなくなるからな。オッケー、レオナルド?」
「ハハハハ……分かってますよ。大丈夫です、安心してください女王。確かに家には帰りたいですが、流石に土に還るのだけは御免ですので……」
「アッハッハッハ! そうだな! では一先ず……改めて紹介だ。ようこそレオナルド、見ての通りこの空間こそ今回お前に見せる必要があり、尚且つ我が国の多くの財産を納めた【宝物庫】だ」
そう……今イザベラ女王が告げた通り。
この空間こそが“女王の血を引く者のみが開錠を許される”魔術が仕込まれた両扉の奥に封じられしこのアルテミアーナ城の宝物庫を、二人は会話を交えつつ奥を目指して進んだ。
―― ―― ―― ―― ―― ――
「さて……では何故にレオナルド。我々王族の血を引くわけでも無く、ましてこの世界の人間でも無いお前を宝物庫に案内したかというとだな……」
そうやって女王イザベラの案内の元。
娘の自慢話を終えた彼女がレオナルドを引き連れ、足を踏み入れたこの宝物庫を進んだ先で、
「先の【魔法】の有無についての質問の返答、そしてお前に見て欲しい物があったからなのだ」
「僕に見て欲しいもの……ですか?」
「ああ……それが【これ】だ」
彼女はそう口にしながら宝物庫の最奥部。
その突き当りの台座にて厳かに奉られた品を隠していた紫色のヴェールを取っ払い、その姿を晒した。
すると……。
「こ……これって」
「ああ……これが【金の冠】だ」
「金の……冠……」
まさに“宝物庫の王”と呼べる一品だった。
たとえ素人目であっても、その黄金に輝く円環。
さらに随所に等感覚で散りばめられ、高貴さをより際立たせるダイヤモンドを筆頭に埋め込まれた宝石の数々などなど……一目で値が付けられないと容易に判断できる【豪華な冠】が現れた。
「どうだ? 凄いだろ! いくら旅慣れてそうなお前でもこれ程の逸品は見た事があるまい!」
「ははは、そうですね。僕達の元パーティーの盗賊だったリッ……お宝好きの仲間に見せたら感動と喜び下手すれば失禁すると思います……(ゴクリ……にしても本当に凄い冠だ、かつての冒険者としての血が騒いでくるくらいだよ……)」
そしてそれが放つ魅力は最早冠自体が、“他のお宝は見なくていいから俺を見ろ”という自我を宿したかの如く、周辺の財宝ですら霞ませる程でこのレオナルドですら思わず目が眩む程だった。
(…………………………)
しかし……。
「……? あれ? これってもしかして――」
「ほほお、違和感に気が付いたか。流石だな」
彼は直後に“ある事”に勘付く。
「これ、魔力……が宿っているんですか?」
あくまでケース越しではあったものの。
レオナルドはその肌の表面を焼く様な妙な感触。
例えるならば日焼けした後の肌の如く表面に僅かにピリピリとした気配、違和感を感じ取った。
「そうだ、実はこの“金の冠”は簡単に言えば”私の今かぶっている銀の冠”と姉妹らしくてな。残された文献によると【無限の力】を授けるという如何にもヤバそうな伝説があったそうだ」
「無限の力ですか……」
「ああ、だが残念ながら歴史によるとその余りに強大過ぎる力は最強の女王とされた初代女王イカルスでも扱いきれなかったらしくてな。以降、この金の冠は王族内で管理しておるのだ」
「では、そっちの銀の冠は大丈夫なんですか?」
「ハッハッハッハ! 心配するな! こっちは金と違ってそれなりに抑えられているのだよ!」
イザベラは話を聞いた途端に不安そうな目を向けるレオナルドへ、冠の説明をこう端的に向けた。
金の冠は【常時】“力を与え続ける”物体。
逆に銀は【適宜】“力を授ける”物体と。
「そこでお前の言っていた【魔法】とやらについてなんだが……正直言ってその“魔力”という力を誰も保有してなくてな。お前を呼んだ召喚の儀式にはこの銀の冠の力を借りたというわけなのだ」
さらに続けて、イザベラは彼の質問。
この世界に魔法があるのかどうかという先刻の問いに、こういった特殊な魔法の道具の力を借りているのだと正直に答えていき……そして。
「さてレオナルド、これは二度目になるのだが」
「? イザベラ女王?」
彼女は安置された冠から、首を傾げるレオナルドの方へ視線を向けると率直に告げた。
「レオナルドよ……今回の報酬として“コレ”で引き受けてくれてはくれないだろうか?」
「へっ!? コレって金の冠をですか!?」
「ああ、そうだ。これを成功報酬とする」
「でも……本当に僕がこれ受け取って良いんですか? 絶対に国宝とかだと思うんですけど……」
「よいのだ。どの道これは我々の手に余る代物でな。過去に他国がこれに眠る無限の力を求めて戦争に発展したという暗い歴史もあるくらいだ。それに、召喚の儀や祭り事に使う分にはこの銀の冠だけで十分だしな」
そうして……彼女はさらにその発言の直後。
心中に迷いがあったのか、こう続ける。
「それで……これは私の正直な意見だが……」
「……はい」
「その……私は“マティルダ”を王女に推したい。確かに粗暴で短気だが、アイツには【優しさ】と【強さ】をしっかりと兼ね備えている。あまり娘達に優劣を付けたくはないが、王とはそういうものだと私はこの座に就いて感じ取ったのだ」
本人が告げた通り娘達への愛情の深さに差があったわけではないが、幼いながら自ら守るべき妹をきちんと見定め、嫌がる事無く自主的にその面倒を請け負った長女の姿勢。
「だが……今回の私はあくまで傍聴席の一員だ。審査員が左を向けと言えば、自分の考えを捨ててもそれに従って私もその者に王座を譲る……」
母親だからこそ知っている長女の真の顔。
その点に抱いた迷いを彼女は吐露した。
「ですが……特別扱いは出来ませんよ?」
「分かっている……だからこそだ。だからこそレオナルド、今一度お前に確認する。身勝手な願いだが異世界からの召喚者、此度の女王決定戦の審査員として我が娘の誰が真の女王に相応しいかを見極めてはくれないか? ……無論平等にだ」
「イザベラ女王……」
「頼む……この通りだ」
だからなのかレオナルドは彼女のそんな本音。
先の自慢話も含めたうえで女王という立場としてだけでは無く三人の娘の母として、その行く末を案じるイザベラの心中を聞いたことにより、
「……分かりました。では今回のイザベラ女王の依頼。此度の女王決定戦において公平な審議を下す審査員として責任を持って僕が引き受けます」
「おお……ありがとう、感謝するぞ」
そう改めて、彼は今回の異世界審査員として女王決定戦への参上依頼を引き受けるのだった。
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次話は明日投稿予定です。
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