54.特製ポーションにはご用心!のようです part4
ここまで読んでくださりありがとうございます。
これにてこの幕間は終わりとなります。
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レオナルドさんのかんさ×××
若返りポーションの効力と経過のまとめ。
経過日数【4日目】 経過観察【良好】
レオナルドさんに成長ポーションの製造を急かされる中、今日でレオナルドさんが幼児化してから四日目に突入しましたが、様子を見た感じだと変わらず良好みたいでス。
後遺症などの懸念していた体調面にも特に大きな変化は見られず、それどころか私が文句を言えば100%反撃し、怒りに身を任せた激しいツッコミで容赦なくこのハンサムな顔面にグーで返してくる程でス。
まったく……私はただ研究目的で利用しているだけで一切、非が無いというのに、ツッコミで殴られる身にもなってほしいものでス。
ですが! 私も殴られるだけの道化で済ませるワケにはいきません!
ですので私も仕返しにと成長ポーションを作る為に必要だからとレオナルドさんを騙して、ちゃっかり採取させてもらった皮膚の細胞を観察してデータ採集をより捗らせてもらいましタ!! ざまぁ見ろでス!!
いやあ……しかし本当に便利なモルモットを見つけられたものでス。
短期間しか観察できないのは悔しいところですが、自分で飲むリスクを考えるならば流石にそこは致し方無いところですネ!
それに一般の人間ならまだ躊躇しますが……あのレオナルドさんだったら、実験に使いやすいと思った私の思考は間違ってなかったみたいでス!
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幼児化した僕レオナルドが【母性覚醒状態のエミリア】によって朝昼晩のお子様ランチや、風呂場では体の洗いっこの強要などにより安息などとは程遠い日常に悩まされる中。
悲しくも当初は不便だと思っていたこの幼児の体にも次第に慣れ始めつつも、時間だけは無駄に経過していった――
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経過日数【5日目】 経過観察【良好】
よしよし、今日も実に良い感じでス!
実験に付き合ってくれたレオナルドさんのおかげで、試験薬のテストも経過状況の把握もぜーんぶ成功してデータ収集も見事に完了しましタ。
そこで私は改めてこの【若返りのポーション】の量産体制に入る事を決意し、手始めに即効性のある《10本の若返りポーション》を作成しました。いやはや流石は私ですネ! この調合の素早さには自分でも惚れ惚れしまス!
ですが……この状況を知ってしまったレオナルドさんはお怒りになってしまい、せっかく量産したポーションを廃棄されるところでした、危ない危ない。
さらにレオナルドさん曰く、明後日までに作らないと殺意を持ってホラー小説の化け物並みに地平線の彼方まで追いかけ回すって怒鳴られました……もう、これだから短気な被検体は苦手なんでス。
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それで肝心のドクター・ルドルフについてなんだけど、僕に殴られるのを警戒してか日記を人前で書かなくなり、今頃あの“ポーション馬鹿”がどんな愚痴や腹黒い事を考えて日記に殴り書きしているかは分からなくなった。
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まあ……他者に命令されるのは癪な話で、強要されるのも何よりも嫌いですが……確かにポーションを作る研究者としてはもしもの時を想定して、治療薬である成長ポーションの作り方を心得るのは当然なのでス。
こればかりは絶対でス!!
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……でも、そんなまさに人間の屑の鑑みたいな。
恩人だろうと知り合いだろうと誰だろうと罠にかけ、研究対象|にしようと謀を企む奴ではあるけど――
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だからこそ、私は明日責任を持ってレオナルドさん治療の為に徹夜で成長のポーションを真剣に作りまス!!
レオナルドさんから採取した細胞の情報から若返り成分の解析は完了している以上、あと私の頭脳があれば余裕で成長のポーションなんて作れまス!
それに幾ら実験が大好きとはいえ私だって研究者の端くれ。性根的に被検体を煽り嘲笑ったり、逐一観察をしたりはしますが、そのまま放置するという事だけは私の美学に反するので絶対にしませン!!
よって、明日は研究に没頭でス。
食事も睡眠も日記にかける時間すらもこの成長ポーション作りに回しまス! 己の美学にかけて、キチンとこの実験を締めるのでス!
これは研究者としての意地でス!
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なんやかんやで最後は元に戻すという点。
態度は気に食わないし、やる事なす事滅茶苦茶で大迷惑な所はあるけれど……それでも僕がルドルフを買っているのは自分が為した事に対する“責任感や覚悟”があるからだ。
じゃないと、あんな奴を僕の家に泊めて大切な地下のアトリエまで貸すもんか。
だからこそ僕は認めるアイツの数少ない信念とか美学とやらを信頼して、期限である明後日まで待ってやる事にするんだった。
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「はい、完成しましたヨ! これがレオナルドさんのご注文通りの【成長のポーション】のサンプルでス!」
マジで設けた期限の一週間ギリギリだった。
まあ、それでもルドルフは約束通りに僕の幼児化した体を元に戻す成長のポーション、飲む気を減退させる不気味な青色の液体を詰め込んだフラスコを渡して来た。
「これでようやく元の姿に戻れるってワケだね……そういえばエミリア見なかった?」
「ああ、彼女でしたら朝一番に私のアトリエで見かけましたよ。新薬の色や材料を見たいとかで。ですがそれからは知りませんネ。もしかしたら部屋で私の真似でもしてるんじゃないですカ?」
「……あとで止めに行かないと」
こんな奴の真似をされたら堪ったもんじゃない。
ただでさえエミリアは調合した媚薬を料理に混ぜようとするんだから……。
これ以上余計な知識を身に着けられたら、今度こそ僕の安息の時間は消え失せちゃう。
「まあまあ……エミリアさんには後で報告するとしテ、さあ景気良く一気に飲んじゃってください! 量的には前回のポーションと同じ量ですから」
「……やけに素直だね。てっきり飲む前にポーション代の請求でもされるかと思ったんだけど」
「いいえ、お代は要りませんよ! その代わり“成功するか失敗するか”の実験ですので!」
「相変わらずのクソ野郎ですね!? えっ……失敗したらどうなるの!? 今度は僕どうなっちゃうの!? どんな酷い目に遭っちゃうの!?」
「…………………………」
「言えよ!? そこは何か言ってよ!?」
やだ、急に手が震えて来たんですけど!?
飲むの滅茶苦茶怖くなってきたんだけど!?
「……レオナルドさん、申し上げにくいのですが遺書のご用意は出来ていますカ?」
やめて!!
そんないつになく真剣な眼差しで妙にトーンを下げた声で警告を促さないで――
―― ―― ―― ―― ―― ――
……まあ、でも結局のところ。
「いやあ、元通りになって良かったでス」
「……本当にね。成功して良かったよ」
即効性だったのか僕の体はすぐに元通り。
鏡で確認した瞬間はどこか懐かしさすら覚えるまでに、失敗する事無くちゃんと元の成人状態のボディに戻る事が出来たんだった。
「にしても……エミリアってば本当にどこ行ったんだろ? 世話してくれたのは助かったけど、元に戻る時くらいはいてくれても良かったのに」
「アッハハハハ! もしかしたらレオナルドさんが元通りになる事に拗ねて、今度は自分に構ってもらおうとしてるんじゃないんですカ? 先程、私の見間違いかアトリエにあった若返りのポーションも1本足りなかった気がしますシ!」
「ハハハ! それは気のせいだよ、ルドルフ!」
もう……全く笑えない冗談はやめてよ。
逆に的確過ぎて寒気すら覚える嘘だよ!
「さすがのエミリアだってそんな馬鹿な事するわけ無いでしょ? ポーションが足りなかったのも君の見間違いだよ。きっと!」
「アッハハハハハ! そうですよネ! これはお騒がせしましタ」
「……まったくだよ!」
もう……ルドルフってば本当にギャグセンスの欠片も無いんだ……か……ら?
「……………………あ゛っ」
「おや、レオナルドさんどうしましタ? 急に思いつめたような顔をして、まさか私が作った成長ポーションがそんなにマズかった――」
「ヤバいよルドルフ【緊急事態】だ! 急いでエミリアの部屋に行くよ! さあ早くっ!」
「へっ!? ちょっ……なんですカ!?」
瞬間、僕は全身に激しい悪寒が走った。
それと同時に僕はルドルフを強引に連れて部屋を出ていき、深く考えるよりも先に困惑する彼の手を引っ張ってエミリアの部屋へと向かっていったんだ!
脳裏によぎった最悪の結末を防ぐ為にっ!!
―― ―― ―― ―― ―― ――
ヤバい、ヤバい、ヤバいヤバいヤバいっ!
僕の脳裏を超絶に嫌な予感がよぎっていく。
さっきのルドルフが言ったエミリアの目撃場所、それと後で発覚した発言“10本あった若返りのポーションが9本に減ってた”という話。
つまりそれが指し示す意味は――
「エミリア! 早まっちゃダメだ!」
「エミリアちゃん! 別に怒りませんからくすねた私のポーション返してくださイ! 仮にもそれは売る為の――」
とにかくお互いに嫌な思考を巡らせながら、僕とルドルフは彼女の部屋を開けてその“無謀な行動”を制止せんと大声と共に勢いよく飛び込んだんだ!
すると、そこには……。
「れおなるど……【だっこ】ちて?」
……………………。
…………………………。
………………………………。
ふう……なるほど。
「……ルドルフさんや」
「……はい、何でしょう? レオナルドさん」
残念ながらもう既に手遅れだったため。
僕は繰り返された【悲劇】を前にして、隣で呑気につっ立っているポーション博士に向けて、
「急で悪いんだけど……もう一本だけ成長のポーションを追加で作ってくんない?」
「……10,000ゴールドでどうですか?」
「じゃあ10倍払うから今日中にお願い」
「了解でス! じゃあ速攻で作ってきまス!」
今度は有料で追加注文をするんだった。
そう……これで全てが元通りになったと胸を撫で下ろしたのも束の間、どうやら僕にはまだ心を休める為の時間などは許されないらしく――
「れおなるど……れおなるど」
「どうしましたか? エミリアさん?」
「わたし……れおなるどの……おっぱい飲みたい……飲ませて?」
「出るかあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
僕はいつにもなく甘えてくる幼児化したエミリアを抱っこしながら、偉大なる天才様が悪夢を早く終わらせてくれる事を祈るんだった……。




