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102/105

101.栄光を掴んでいたようです


 まるで夢の様な光景だった。


「博士! こっちを向いてください!」

「ヴィクター博士! もっと笑って!」

「博士! こちら側もお願いします!」


 パシャリパシャリと絶え間ないカメラのシャッター音。そのやたら目に焼き付く眩い閃光が場を煌めかせる会場に私、ヴィクターは立っていた。


 しかし、演者や出場を眺める傍観席ではない。

 そう、まさかの()()()()()()()()()なのだ。

 さながら女優モデルの如く注目されている。


「博士! 今回の研究についてどうか一言!」

「いや、どうか我が社だけで独占インタビューをさせてください。報酬は望むままに結構です!」

「おい、そこ抜け駆けするな! 弱小会社め!」


 そして全てのきっかけは些細なものだった。

 ほんの10日程前に私の研究所へ訪れた大手新聞会社グランドタイムズの記者達。そんな彼らが記した新聞の記事こそがこの景色を産むに至る歯車に化けた発端。


 ちょうど蓄えていた資金が底を尽きかけていたという悩みもあってか、私は彼ら(記者)を追い返したりする事もせずにそのまま取材に協力。

 まあ真相を明かすなら、その莫大な報酬額に目がくらんだという不純な点も確かにあったが……、


「ヴィクター博士! お話によると傷ついた組織を復元する再生細胞なるものを研究中だとか! どうか詳しい研究内容をお聞かせください!」

「いいえ、是非とも我が社にもご協力を!」


 だが……最大の目的は私の一族の為だった。

 天才と呼べる祖父の代から脈々と受け継がれてきたこの生命の研究。けれどもそんな素晴らしい研究結果が今の今まで大衆の目にも晒される事も無く、中々に日の目を見る事が無かった。


 だからこそこの数代に渡り受け継がれ、研磨されてきたこの結晶を世間の目に浴びせる事。それこそが私が研究に奮闘する最大の理由だった。



「ヴィクター博士、一旦こちらへ。あの記者達をワタクシどもが追い払い、その後にお車を用意しますので、どうか休憩室の方へお願いします」


「あ、ああ……おや? 君は以前までの秘書(マネージャー)とは違うね。以前まで補佐してくれていた気の良いバーディーという青年は何処に?」


「はい。(バーディー)親会社(グランドタイムズ)の指示もありまして、急遽別の秘書を務める事となりました。ですので、これからはワタクシ『ミレーネ』が博士の専属秘書を務めさせていただきますので。どうかよろしくお願いします」


「そうか、ではよろしく。ミレーネさん」



 そうして……ついに私はその日を迎えた。



「博士! どうか一言だけでもお話を!」

「お願いします! 我らを救うと思って!」

「他にも何か研究されているのですか!?」

「ヴィクター博士! 何卒お願いします!」


 そのきっかけこそ予想もしない展開だったが、私達フランクリン一族が為してきた様々な研究はこうして大衆の目に留まり、今もグランドタイムズの新聞や箱型映像機器(テレビ)の報道や特集を通じて伝えられている……実に喜ばしい。



 パチッ! パチッ!


「はーいっ! お集まりの皆様!」


 …………うん?


「本日はどうかお引き取りくださいませ。ヴィクター博士は既に研究や発表会でお疲れです。ですので皆様どうかこの会場よりお引き取りを!」


「おいおい! 冗談言うなよ!?」

「俺達は朝からずっといたんだぞ!」

「せめて何か一つだけでも博士の話を!」

「ヴィクター・フランクリン博士! ほんの数分でも構いません! 簡単な質問だけでも――」



(…………あはは、そうか……そうだな)



 確かに記者(彼ら)もまたここまで熱心に仕事に励んでいるんだ……ならば何か一つでも質問に答えてあげれば素直に帰るだろう……よし。


「では私の現在している研究の進捗を――」

「もしも大人しく退出出来ないという事でしたら、警備員の方々と協力して強制的に追い出される羽目になりますが……それでもよろしいですか?」



「うっ……くっ……そ、それは」

「けっ! そんなのはただの横暴だ!」

「やれるものならやってみろ!」



「分かりました。ですが……一つだけ温情として忠告しておきますが、強制退場の際に皆様が大事に抱えている()()()()()()()()()()()()()しても、我々は一切責任を負いかねますのでご了承を」


「「うっ……く。くそ……」」

「「……仕方ない。大人しく出るか」」

「「カメラの弁償代は洒落にならねぇからな」」


 おっほほぉ……。

 何というか今回の秘書は実に厳しい女性だな。


 以前までのあの温厚そうな青年(バーディー)とは違い、今度は攻撃的と言うかビシバシと物を言う性格だ。まあこれはこれで頼りがいはあるし、


「では、博士。一旦こちらへ」


「ああ分かった。休憩室だったね。それと……悪いがもし手が開いていたら、砂糖とミルクをたっぷり入れたコーヒーを持ってきてくれるかい? どうも頭が糖分を欲しているみたいでね」


「はい。了解しました博士。では後程に」


「ああ、頼んだよ。それじゃあ……」


 ひとまずは一任するとしよう。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

久し振りの更新となりましたが【新作】の方を完結させ次第、本腰を入れてこちらの執筆に戻る予定ですのでどうかこれからもよろしくお願いするのです!!


そして、もし皆様の《貴重なブクマ》や《ありがたい評価》をいただけるのであれば、この黒まめのモチベに直結し一気に燃え上がること請け合いですので……よろしけばお願いしますなのです(≧▽≦)


それでは次回でお会いしましょう(>_<)

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