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第六十四話 ヒトと星

 右手に持った剣のマギア、レディンに紅い炎を纏わせる。全身に波導を流して筋肉を強化し、熱と炎で爆発的な出力を生み出す。

 正面に立つ『王』は両腕を若干広げつつ波導を放出し、


「君はまったく知らないだろう? 我の波導術について。分身がアルス・エルバート相手にほんの一部は披露したが」



『王』の背後に無数の武器が展開された。古来からあるであろう棍棒・剣や近代的な銃火器に加え、見たこともない機械的な武器、異常な波導を放つマギアなどが出現する。


「『ヒトが思い描く過去・現在・未来の具現化』。

 それが我の波導術。化石や鉱石といったものから描かれる過去、ヒトが造り出した現在のすべて、そして今を礎とした未来への展望と空想。ヒトの力こそ、我の力」


『王』の合図と同時、展開された武器が起動する。

 勝手に振り抜かれる剣と棍棒。

 高速で飛来する矢と弾丸。

 謎の仕組みの砲撃と斬撃。

 馬鹿げた火力が俺に襲いかかる。だが、このくらいは処理できる。



 レディンに特大、超高熱の炎を纏わせて振り抜く。衝撃が武器を弾き、数少ない炎を貫通してきた攻撃は問題なく避けられる。


 今、カノンとの戦闘で上空には俺の波導が溜まったままだ。それを利用して攻撃する。


「今度は俺の番だ。


 "地獄より天地を穿つ(ヘルズヴェイン)"!」



 宙空に現れる巨大な灰と炎の剣。何もかもを焼く熱と膨大な質量を『王』に向けて落とす。


『王』は余裕を浮かべながら近代的な建物、古代の植物を出現させた後、この星から吸収した波導で強度を上げていとも簡単に灰の剣を受け止めてみせた。



「この程度かい? バーンモルト。我は残念――」


「まださっきの一撃は完成してねぇよ。



 "氷塊流星(ダイアイステラ)"」



 カノンから受け取った氷の波導術。俺では『エネルギーの減少』レベルの能力は使えないが、上空に巨大な氷塊を出現させるくらいは可能だ。


 高速で落下する巨大な氷。灰と炎の剣に直撃して押し込む。

 さらに波導を追加して勢いと強度を上げ、『王』を押し潰しにかかる。


 建物や巨大な植物、さまざまな物体を出現させて受け止める『王』。その間に炎を纏わせたレディンを構え、波導を集めた脚で駆け抜ける。そして、



「"緋炎九重(ひえんここのえ)"」



 九本の炎の斬撃を『王』にぶつける。赤色の炎が暴れまわり、光と熱が溢れていく。しかし、



「先ほどの言葉は撤回するよ。想像以上ではあった。我に敵うかは、また別だがな」



 防がれた。

 何枚もの盾が斬撃をすべて受け止めたのだ。しかも、盾にはヒビの一つも入っていない。未来の武器か、マギアか。どっちみち単純な力押しで破れるものではなさそうだ。


「硬すぎだろ……。だったら!


 "灰外殻(はいがいかく)・融翼(ゆうよく)"!」


 融けた灰を放出し、四本の触手を盾の間を縫うように『王』目掛けて伸ばす。


 が、その先端は届かない。



 ドロドロのスラグ状になっていた灰が固まっている。

 周囲には雪と冷たい風が吹き荒び、先ほどまでのクレール王国の環境の面影はない。



「氷河期のうちの、氷期って言うんだっけ? 二万年くらい前だったかな。ああそうだ。氷を見て思い出したんだが、カノンはどうしたのかな?」



 突如周囲が氷に覆われ始める。『王』の言葉を信じるなら、辺り一帯に氷期が再現されたのだろう。急激に冷却されたことで灰が固まり、さらに氷河によって先端は止められた。



「カノンなら死んだ。俺が、殺した。あいつは俺に、お前を倒せって言っていたよ。だから、負けるわけにはいかねぇんだ」


 丁度良い。カノンから貰った力ならこの環境で有利に働く。周りの氷も使わせてもらおう。



「"永久凍土・(ネバーメルト・)氷河城(ゼロフォートレス)"!」



 地面から伸びる氷。周囲の『王』が出現させた氷河を巻き込みながら城が出来上がる。そして、灰の剣と氷塊。今もなお『王』が波導術で受け止め続けているその二つに氷の城を倒しながら衝突させる。

 圧倒的な質量の暴力。強度を波導で上げながら重さを増やしていくが、『王』もそう簡単には潰れない。次々と波導術で出現させた物体で防御を厚くしつつ、一部の武器や過去の生物を操ってこちらの攻撃を削っていく。



 拮抗しているように見えるこの状況。

 だが、最後のピースは、一(・)番(・)重(・)い(・)物(・)は俺の手の上にある。



「レディン、完全起動・最大出力」


 最大出力のレディンの重さは星の重さそのもの。受け止められるようなものではない。




 レディンに埋め込まれた核のもととなった魔獣、その名はピズディンジャ。

 特殊な個体名が与えられ、アヴァリティアス王国を悩ませた存在である。

 数十年前、俺がまだ『六天』 クロス・ライナーの部下だった頃に遭遇、その重量と防御力に苦戦したもののなんとか討伐に成功し、マギアに加工した。それ以降、騎士団時代は使い続けてきた相棒とでも言うべき武器だ。




 氷の城の頂でレディンを構える。刃を氷で覆い、叩きつける。


「潰れろ――


 "剣影矮星(けんえいわいせい)"」



 超常の重さにより空間が歪む。

 城が傾き、氷塊が押され、灰の剣が大地を割る。

 吹き飛んでいく『王』の波導術。建物が砕け、古代植物は根から折れ、生物は衝撃で死滅する。

 この大陸に影響を及ぼす威力。

 遠く離れた場所も揺れていることだろう。



 しかし、


「はははは!!! 素晴らしい威力だよ、バーンモルト。このままいけば、我を潰せるだろうなァ。


 でも、一つ忘れていないかい? 

 そのマギアは、ヒトの手で加工されたものだろう?」



「まさか――」


 飛び散る灰。

 砕け散る氷。

 押し返されるどころか、この一撃に使った全てが破壊された。


「そのマギアはヒトが造ったものだ。なら、我が手にあるのも当然じゃないか? それに、本来の姿も星の波導で産み出してあげたよ」



『王』の手の内には展開されたレディン。さらに、『王』の背後に出現していたのは魔獣 ピズディンジャ。



 俺は崩壊した城の瓦礫と灰に飲まれながら落ちていく。

 さっき食らった超重量のカウンターと落下のダメージ。この二つのせいで体が動かない。しかもレディンが破壊された。流石に二倍の重量には打ち勝てない。


 うつ伏せの状態でなんとか頭を上げる。


 そこには、魔獣の足。星の重さが迫っていた。



 氷や灰では押し返せない。炎でも焼き尽くせない。万事休すか。




 踏み潰される直前に思い出した、先ほどの戦闘でのカノンの言葉。何か、ヒントがあるように感じた。


『貴方の波導術もなかなかだね。今の、炎が発生した瞬間から出力が高かった。本来、波導で火種を作ってその後火を大きくするのが炎系波導術の使い方。だから一瞬ラグが生じる。なのに貴方は火力の高い炎を瞬時に出現させていた』


 これは、俺が炎を取り出して出現させているからだ。灰も同じく取り出して、放出している。


 じゃあ俺は、ど(・)こ(・)か(・)ら(・)灰(・)と(・)炎(・)を(・)取(・)り(・)出(・)し(・)て(・)い(・)る(・)ん(・)だ(・)?

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