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第三十四話 Burn Again

「"地獄より天地を穿つ(ヘルズヴェイン)"!」


 突如地面から炎が吹き出す。辺り一面が焼け野原と化していき、残っていた氷の壁が消えていく。

 雲を割って現れたのは超巨大な灰の剣。ヴェルザを核とし、紅蓮の炎とともに地上へ落ちる。


 直撃すればゼリアの街全体を吹き飛ばしかねない一撃だ。同時に、アルスなら周囲への被害を最小限に抑える受け方をしてくれるという確信があった。


 肝心のアルスはというと、


「ふふっ、ははっ! 流石だな、バーン。全盛期ほどじゃないが、相当な出力じゃないか。相手がオレじゃなければどうなっていたことやら」


 嬉々として笑っている。

 アルスの足下、地面が隆起していく。周囲に俺の炎とは別の熱が発生し始め、街が揺れる。

 アスファルトを割り、建物を薙ぎ倒しながら出現する火山。


「"終末因・大噴火(テロス・エールンペレ)"」


 盛り上がった地面から溶岩と火山灰が噴き出す。


 熱と礫を撒き散らしながら天へ昇る火山。

 灰と炎に包まれながら地に落ちる大剣。

 両者が激突する。


 光。

 熱。

 衝撃。


 街の上空では波導の渦が空間を歪め、地上では突風が吹き荒れる。

 アヴァリティアス全土に轟くような爆発の後、灰の剣と火山は消えていた。

 街に届いたのは爆風のみ。


 アルスは俺の最後の一撃を上空で消滅させてみせた。


「完敗だな、こりゃ」


 俺はそう呟いて、気を失った。





 アルスが倒れたバーンモルトに近づく。肩に担いで騎士団員らのもとへ歩く。多くの団員が驚いて目を見張っているなか、彼は高らかに宣言する。


「これがバーンモルトという男の強さだ。『灰貌』? 『裏切りの英雄』? 単なる敵として殺すには惜しい。反対する者がいることを承知で言う。

 オレは、バーンモルトを騎士団に引き入れたい!」


 裏切り者を入れるなんて正気じゃない、危険すぎる、といった声が騎士団から上がる。その声を受けてシエルとレレアは、


「私も賛成しましょう。無論、彼の調査と処罰を終えた後、徹底的な監視の下で、ですが」


「アタシも賛成ー。情けないけど、六番隊は『灰貌』に助けられちゃったからねー」


 すると、騎士団員らからは、


「まあ、味方として戦力になるのは心強いか……」


「監視や権限次第なら……」


 というような声が上がる。アルスが再び口を開き、


「元『六天』なのも納得の実力だろう? 実際の処遇は本局を含め、騎士団全体で決めることになる。賛成するか反対するか、皆考えておけ。


『ACE』は撤退し、ゼリアのひとまずの安全を確保できた。要注意人物の捕縛も完了した。以上を持って、本作戦の終了を宣言する!」


 壊れた街で、人々は動き出す。

 喜びを分かち合うため。

 日常を取り戻すため。





 その夜、アルス・エルバートは首都キャンドにある騎士団本局を訪れていた。


「コール、本当だったのか。ジーデンの死とマティクの裏切りは」


 アルスの問いに、本局局長コール・ポーターが答える。


「ああ、本当だ。厄介なことになったもんだ。二番隊と五番隊が壊滅、ついでに胃もストレスで壊滅だ……


 どうしてくれんだよ本当にィィ!! 

 こんな時期に、こんなことになったら終わりだろ!! マティク・ワイルズ!! あんの野郎……! 優男風の顔面張っ付けた裏でなに考えてやがったァ!!」


 キレるコール。

 ドン引きするアルス。

 ハッと理性を取り戻したコールがアルスに話しかける。


「コホン……。それで、騎士団全体にこの事は伝えておくとして、何か手はあるか? 現状、『ACE』とクレール王国相手じゃ戦力不足だ」


 アルスが答える。


「一つは同盟国、ポテンティアにも動いてもらう」


「それは当然だ。クレール王国との戦争になりゃ確実に手を貸してくれるだろう。他にもあるのか?」


「あるにはある。アンタの胃に目を瞑れば、だが。

 バーンモルトを手に入れた。かなり弱くなっているが、下手な第一等級の騎士よりは明らかに上だ」


「バーンモルト? バーンモルトってあの二十年前の?」


「ああ」


「死んだ筈だろ? というかお前がトドメ刺さなかったか?」


「心臓の近くを貫いたが、崖の下に落ちていったと伝えただろう。あの傷じゃ死ぬと思っていたが、どうやら生き延びたらしい」


「それで、引き入れられそうだと? 待て、二十年前、どれだけあいつに手を焼いたと思ってる。もう一度暴れられたらどうなるか――」


「そのときはオレが殺す。今のバーン相手に今のオレなら負けはない。それに、バーンを引き入れてしまえば『障壁を越える者(スヴェラトール)』とかいう『ACE』と敵対している組織が味方に付く。これで一部隊ぶんはカバーできる」


「そうか、ならいい。くれぐれも裏切られるなよ。そうなりそうだったら、先に殺(や)れ」


「分かっている。報告は以上だ、コール」


「ああ、戻っていい」


 アルスは本局を後にし、一番隊の隊舎へと戻っていった。





 一ヶ月後、アヴァリティアス王国南部ゼリア。

『ACE』の襲撃部隊とクレール王国の兵隊が攻撃を仕掛けていた。防戦一方のアヴァリティアス騎士団。戦力の投入が間に合わず奇襲に対応仕切れていないのだ。



 激闘のなか、一人の騎士が攻撃を受けてよろける。倒れた彼女に『ACE』の部隊が近づき、建物の壁に追い詰める。


「きっ、きゃあああ!!」


 武器が振り下ろされるその瞬間、『ACE』の部隊を炎が襲う。

 次いで何本もの糸がクレール王国兵に絡まり、身動きを取れなくしていく。突然の事態に兵隊と部隊を率いていたクレールの幹部が声を荒げる。


「テメエら、一体ナニモンだ!? いや、その炎、白い髪の毛……。

 まさか、『六天』 バーンモルト!!?」


 彼の目の前に現れたのは灰と白が混ざった髪の青年。炎と灰で周囲の兵を制圧しながら答える。


「アヴァリティアス騎士団新第五部隊兼対『ACE』特殊部隊、『障壁を越える者』だ」


 蛇腹剣の一撃が幹部を捉える。



 灰の熱は冷めず、その炎は消えず。

 彼は戦い続ける。

 約束を果たすまで、巨悪を屠るまで。

今回で第二章 “Burn Again” 完結です。

次回は第二章キャラクター紹介、その後、第三章 ”Break Again” 開幕です!

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