第六話 強者
一つ、その人に宿った能力は、世界に一つしか存在できない、同じ能力を持った人間は存在しない、
そして、”能力”は、”絶対”である。
廊下を歩く炎人、それについて行くアキラ、どこに向かっているのだろうか。
アキラ「呼び出しって何ですか?俺説教でもされちゃうんですか?」
炎人「それより面倒くさいよ」
半笑いで質問するアキラに、面倒くさいと答える炎人、いったいどんなことなのかと想像を膨らませる、考えることに夢中になっていたアキラは、歩いているとすれ違った人に突然足を引っかけられてしまう。
アキラ「おわっ!」
思ってもみなかったことに転んでしまうアキラ、それをニヤニヤと見ながら見下す男。
「おいおい、大丈夫か?何も無いところで転んでるじゃねぇか」
周りから聞こえるクスクスと言う自分を笑う声、自分を見下しあざ笑う目、漂い始めるとても嫌な雰囲気。
炎人「おい」
「ひっ」
炎人の睨みに怯む男、ただでさえ怖い目つきに余ほど睨みを利かせたのか走って逃げていく男、周りのひたちにも軽く睨み、アキラに手を差し伸べる炎人、その手を取り立ち上がりながら問題ないと告げる。
炎人「大丈夫...?」
アキラ「大、丈夫っす」
炎人「アキラ、君は強い方だ、だから手柄が欲しいクズどもは手段を択ばず先に強者を潰す」
アキラ「あ、ありがとうございます」
突然褒められてまんざらでもないアキラは少し照れてしまう。
炎人「これから沢山ある、慣れといて」
引き続き歩き始める炎人、後ろからの刺す様な視線を感じながらついて行くアキラ。
アキラ「よ、呼び出しもこんな感じなんすか?いやっすよ俺?」
引きつった顔で頭を掻き、余裕を演じるアキラ、いまだ刺す様な視線が消えない、後ろを振り向くなんてできない。
炎人「君がもっと強くなれば、そのうち無くなるよ」
少し冷たく返されるアキラ、あの視線に疑問を感じ、笑顔を作ってぎこちなく質問する。
アキラ「い、いやぁ、能力悪用防止組織にしては、ギスギスしてますねぇ...?」
そう聞いてみると炎人はピタッと足を止める、そして振り返り、眉間にシワを寄せ、困惑した顔で炎人が言う。
炎人「何言ってんの?」
アキラ「え?」
再び歩き出す炎人、ほかの扉とは違う、ただの黒い扉の前に立ち、扉の横側についているボタンをポチポチとダルそうに押しながら言う。
炎人「ハァ、そんな冗談、誰から聞いたのかは知らないけど、ここは魔王軍だよ」
言い終わると同時に扉が開く、その先は暗く、ここから見えるのは薄く光る青色の光。
炎人「それじゃ、僕はダルいから、君は中で頑張って」
アキラ「え!?あ、はい」
振り返らずに手を振りどこかへ去っていく炎人、一人になってしまい緊張しつつも、何とか一歩目を踏み出し、震える声で挨拶する。
アキラ「失礼しま~す」
様子をうかがいながら入ってみると、全体的に暗い部屋、中央には縦長いテーブル、その下から漏れ出ている、淡い青色の光、光に照らされ微かにテーブルの先の方には8人ほど人が座ってこちらを見ていた。
アキラ「えっと~」
???「まぁ座りたまえ」
緊張してガチガチのアキラに、落ち着いた声で手を指し、座る様に促す男。
(声が低い!きっと渋いイケおじだ!)
ぎこちない動きで椅子に座り、いったいなぜ呼び出しがかかったのかと、聞くに聞けず、そわそわしながら用件を待つアキラ。
???「さぁ、さっそく本題だが、アキラ君、君は幹部になったわけだが、君の、”能力”はなんだね?」
アキラ「え?能力?俺の能力は」
途端に口を閉じる、自分の意志ではない、”能力”がそうしたのだ、奴らに教えてはならない。
アキラ「何で...ですか?」
恐れ恐れと聞いてみる、質問に意味はない、気付かれない噓をつくために施行を巡らせているアキラ、そして同じ能力は存在しない、今まで生きた中で聞いたことのない能力を言わなくてはならない。
???「所属している団員のデータをしっかりと集めなくてはいけないのだよ、それが来てたったの5時間の幹部ともなってはね、さぁ能力を教えてくれるかな?」
アキラ「俺の能力は」
考えて導き出した答え、今までで聞いたことのなく、それでいて、あのライオンをぶっ飛ばすほどの力を持つ能力。
アキラ「パワー、です!」
(適当かも!!)
回らない頭で出した答え、パワー、こんな安直な答えではすぐに気付かれてしまうだろうか、そう考えていると、大人の人達は深く考えだした。
「パワーか」 「それならあの力には納得できる」
邪言「まぁまぁ!そう言う感じで!能力は分かったし、アキラ君はもう行っていいよ」
(邪言さん居たんだ!?)
アキラ「...はい」
言いたいことを堪え、部屋の外に出ていくアキラ、部屋の外に出た途端閉まる自動扉。
(扉閉まるの早!しかも邪言さんいたのかよ!ふん!中の会話聞いてやろ!)
居たにもかかわらず声を最後まで書けなかった邪言に腹を立たせ、仕返しのつもりでドアに耳を当て部屋の中の会話を聞こうとするアキラ。
「明らかに嘘ついてますね」 「そうだな」
アキラが付いた嘘は、普通に気づかれていた。
(バレ てん じゃん!!)
「これだとやはり、あの線があり得ますね」 「うーん」
邪言「勇者、ですか?」
(勇者ぁ?)
声でわかるのは唯一邪言だけ、その邪言が、勇者と言う単語を出した。
邪言「魔王様に唯一勝てるのが、勇者、本当なんですか?」
「何を言っている!古書にもそう書かれているだろうが!」
邪言「アキラ君が嘘をついてるのは分かりますが、だからといって、勇者の能力持ちだとは限りませんよ
ね?」
「まぁそうだが」
(わかっちゃうのかー)
バレバレの嘘を吐いた事にショックを受けつつ、中の会話をしっかりと聞いているアキラ、部屋に中は静寂に包まれる、その静寂を、若い女性の声が破る。
「ふがっ、あ、終わった?」
邪言「ぷっ、ハハハッ」
「邪言!呑気に笑うな!サンは寝るな!」
(さん?)
サン「ごめんごめんあたし昨日五時に寝たからさ」
中で頭をポリポリと書く音が聞こえる、そして現在時刻は17:00である。
(すげぇ時間に寝てんな、サンさん、てこと?)
「お前は邪四だろうが!もっと行儀良くしなさい!」
(邪四!?)
邪言「サンに言っても、治らないですよ」
サン「えへへ、すいませーん」
邪言「まぁ今日は一回お開きにしましょう」
(やべぇ!)
外に出てくるかと思い、聞き耳を立てていたことが気付かれてしまえばどうなることか、足音を立てない様にそそくさと最初に来た方向の廊下の角の陰に隠れようとするアキラ、だが前方不注意で人とぶつかってしまう、大柄な体系とは裏腹に高い声が聞こえる。
「キャ」
その人の背中側にぶつかってしまい、腰辺りにある、尻尾、にアキラの顔が直撃してしまう、だがアキラは後ろから邪言達がきているかの確認で手一杯、まだ気づいていないようだ。
アキラ「ごめんなさい、今急いでるんで、ホントごめんなさい」
声を抑え、手を合わせて謝罪する、今にも部屋から邪言達が出てくるかもしれない、緊迫し、逃げようとしているアキラの手を掴む女性。
???「あ、あの、エレベーターって、ど、どこにあるか分かりますか??」
アキラ「え~っと、じゃあついて来てください」
手を引っ張り、速足でエレベーターの方向へ向かう、しばらく歩き、エレベーターに到着、ここなら普通にしていても問題ないだろう。
アキラ「着きました、上ですか?」
竜子「はい、上です、25階に行きたくて、あ、あの、ありがとうございます、私、竜子っていいます、竜に、子供の子で、竜子です」
その人は人ではないのかもしれない、ロングの赤い髪、その頭の上には立派な白っぽい角が生えていた、黄色い目には猫のような鋭い瞳孔、背がかなりでかく、角を含めて天井に頭が付きそうだ、何より気を引く大きな両翼、その翼は、鳥の毛が生えた翼などではなく、まさにドラゴンや竜と言った、ぱっと見ゴツゴツとしていそうな翼、後ろの方にはシッポまで見える、多少走ったせいか、顔が少し赤らんでいる。
(改めて見たら、でけぇし美人さんだなぁ、つーかさっき当たったの尻尾じゃね?)
アキラ「リューコさん、良い名前ですね!俺、アキラって言います!」
竜子「あ、ありがとうございます」
アキラ「すごい翼ですね!広げたらどんぐらいあるんですか!?」
竜子「迷惑になっちゃうので、ここでは出来ません」
気が付けば周りにはある程度の人だかりができていた、アキラは竜子の隣に立ち話しているが、周りの人達はまるで竜子を迷惑がる様に避けている、そして竜子への何を考えているかわからない冷たい視線、じろじろと見ているが、陰口を吐くわけでも無い、目で、お前は迷惑だと言う様な、冷たい視線、ポーンと音を立ててエレベーターが到着する、ぞろぞろ中に入っていた人が出てくる、出る途中にアキラの体にぶつかる。
アキラ「いてっ」
謝るでもなく、何事もなかったように去っていく、ただし、竜子には誰も触れないぶつからない、やはり避けられているようだ、不思議に思いアキラは竜子の顔色を窺って見るが、どこか、寂しそうで悲しそうで、それでいて迷惑をかけて申し訳ない、と言うような表情をしていた、そしてまた迷惑を掛けない様に体を精一杯縮こませている、
次々に乗り込む人たち、前の方に立っているというのに、竜子は動かない、入ろうとすればほかの人達に体が当たるのを理解しているのだろう、最後に入る様にしているようだ、全員乗り、竜子が乗るのに合わせてアキラも一緒に乗りこむ、その時、上のスピーカーのような物から、「重量オーバーです」と、アナウンスが響く。
「おい誰か降りろよ」 「太ってる人がいるんじゃ~い?」 「クスクス」
竜子「...すみません」
仕組まれているかのように、明らかに声が竜子へ向けられている、わざとらしく、そして全員がクスクスとあざ笑い、竜子がエレベーターから降りるのを待っている、それを当たり前のように受け入れ、エレベーターから降りる竜子。
アキラ「は?」
ぎろりと視線がアキラに向く、そんなことお構いなしに納得いかないアキラは竜子に質問する。
アキラ「竜子さんなんで?別に竜子さんが下りる必要は」
竜子「いいの、私こんな体だから、重いの、階段使えばいいだけだから」
明らかに無理をしている、涙をこらえているようにすら見える、アキラは頭の後ろで腕を組み、大きい声で言う。
アキラ「あーあ!竜子さん降りるなら俺も降りよー!」
大股でエレベーターの扉を跨ぎ、振り返り乗っている者たちを睨みを利かせ、一蹴し、さっさと行けと声を掛ける。
アキラ「早く行けよ」
少し怯んだ一同はボタンを押し、扉を閉める、驚いた様子の竜子に、声色を変え、明るく優しい笑顔で言い放つ。
アキラ「エレベーター、言っちゃいましたね!」
竜子「アキラ君...なんで...?」
アキラ「え?」
困惑した様子で聞く竜子にアキラはあっけらかんとした様子で答える。
アキラ「ん~、せっかく会ったいい人との出会いは無駄にしたく無い、し」
言いながら竜子の後ろに立ち、力強くお姫様抱っこをする。
アキラ「フンッ!!」
竜子「アキラ君!?」
大きい声を出しながら、顔を真っ赤にしながら、力一杯勢い良くエレベーター近くの階段を登り始める。
アキラ「竜子さんは別に重くねぇぇぇ!!!」
竜子「わぁぁぁ!はやい!ひゃあいぃ!あきらくぅぅんん!!」
凄まじい速度で螺旋階段を上り続けるアキラ、階段に響く竜子の必死の訴えを無視し、目的の25階へ到着するまで止まらない、この階が5階だというのに、1分ほどで到着し、腰が抜けて震えている竜子を下ろし、膝に手を置き、声を裏返えさせて、精一杯呼吸するアキラ。
アキラ「ッハァー、ッハァー」
竜子「アキラ君は...強いね」
手すりを掴み何とか立つ竜子。
竜子「ア、アキラ君、大丈夫...?」
アキラ「竜子さん..こそ...大丈夫...ですか?」
呼吸が整っているか確認を取る、それに途切れ途切れで応答するアキラ、腰に手を当て、やせ我慢で仁王立ちをする。
アキラ「りゅ...こさん...俺は、あなたを運んでも余裕です!だから!貴方はもっと自信を持っていい!」
竜子「ア、キラ君...あ、ありがとう」
顔を赤らめ口元を隠し、アキラの言葉に照れているようだ。
(なんか顔赤いな、怒ってる!?)
アキラ「じゃ!俺はこれで!」
勘違いし、そそくさと手を振り階段を下りていくアキラ、アキラを呼び止める竜子。
竜子「アキラ君!」
アキラ「ふぁ!はい!」
竜子「空を飛んでみたいと思ったことはありますか!?」




