004 鉄の雨と鉄の傘
「はは、よりどりみどりだ」
『子どもの声だと!?』
通信機から目の前のアーマーダイバーの乗り手のものであろう声が聞こえてきたが、ルッタはそれに反応を返すことなく、その機体を通り過ぎてガーディアンの群れへと向かっていった。そちらの相手をするのはルッタではなくマリアの役回りなのだ。
「ふーん。確かに知らないタイプだなぁ」
そして接近してみると、相対するガーディアンがルッタが過去に遭遇したタイプとは全く形が違うものであることが把握できた。
(ビッグアイ、キャプチャー、サーチャー……確かに以前に見たガーディアンのどれとも一致しない。遺跡から離れて活動することを前提にした追跡特化タイプって感じかなぁ)
全体の形状は傘に近く、開いた部分が盾となり、細身の本体から四本の腕が伸びてそれぞれに魔導銃が付いているようだった。
また正面からは見えないが、本体の端の部分にプロペラントとブースターが付いているとルッタはあらかじめマリアから聞いている。
マリアもそのガーディアンは知らないようだったが、彼女のオリジンダイバー『ヴィーニュ』のスカウトドローン『アエロ』はすでにその形状までをタイフーン号に情報として送っていたのである。
そもそもガーディアンに追われているヘヴラト聖天領軍を最初に発見したのも先行偵察していた彼女のスカウトドローンであり、それを知ってブリッジにいるラニーにすぐ報告したのも、ヘヴラト聖天領軍として正式に風の機師団に救援依頼を行なったのもマリアだ。
もっとも、救援とは言っても風の機師団の中で直接対応を行うのはルッタとリリだけである。
シーリスは敵が抜けてきた場合に備えて狙撃ポジションで構えており、ジェットはいつも通りタイフーン号の盾役で、初心者のメイサは機体に乗ったままガレージで待機である。経験不足ゆえに、攻撃はともかく防御がおぼつかない今の彼女はお守りなしでの実戦はまだ許されてはいない。
ともあれ、状況からして戦力はふたりだけで十分であると判断されたのは確かだ。
そして制圧力だけであればフレーヌとヴィーニュを上回るガトリングガンを所持するブルーバレットが戦場に一番乗りしたわけだが……
「そんじゃあ、まずはひと当て」
「キーーーーーーーー!」
ルッタは弾丸の雨を避けながら、照準を定めてガトリングガンのトリガーを引いた。
ガガガガガガッ
指切りでテンポよく掃射される弾丸がガーディアンに当たり、盾ごと細身の機体が弾かれていく。
ガトリングガンの反動を利用して、極めて変速的な軌道で弾丸を避けながら、けれども着実にガーディアンに当てていくルッタだが、けれどもすぐに違和感に気づいて眉をひそめた。
「キー?」
「んー。タラちゃんも分かる? 変だよね、アレ」
(当たったのに……倒せていない?)
撃たれたガーディアンは、確かに竜雲海の中に墜ちていった。それは確認しているし、間違いはない。けれども、迫る敵の数が減っていないのだ。
(墜としたはずの機体が戻ってる? 軽い機体、シールドで防ぐが、衝撃は受け流すタイプか。面倒だな)
撃たれたガーディアンは弾丸をシールドで受け止めた上で衝撃に耐えるのではなく、勢いを殺さず弾かれていき、その後に体勢を整えるとまた戻ってきているのだろう……と、そう当たりをつけたルッタは一度当てた相手にさらに追い打ちをかける形で撃つと何度目かのアタックでガーディアンが爆発したのを確認した。
「キキーーー!」
「うん、やったね。プロペラントタンクに当たったか。だけど効率が悪いな、こりゃ」
倒せた理由は撃たれたガーディアンが回転しながら落ちていく途中、盾の向きが偶々射角と逆に向いて、それが偶々内側に設置されていたプロペラントタンクに直撃したためであった。
(あー、狙って倒すのは無理だなぁ。繰り返していけば、いつかは当たって倒し切れるだろうけど……いや、先にガトリングの弾が尽きちゃうか)
ルッタは即座にそう判断する。
撃って弾いて回転したガーディアンが裏側を向いたのを狙ってプロペラントタンクを狙い撃ち……などというスーパープレイを即興でできると思えるほど、ルッタは自分自身を過信してはいない。
それにガトリングガンの弾は無制限ではないのだ。無駄に消費するのであれば別の手を打つか……とルッタが考えたところで、リリの乗るフレーヌが追いついてきた。
『ルッタ、効いてないねー』
「みたいだね。弾が勿体無いし、目的は果たしたからもういいや。アン、ガトリングをお願い。こっからは接近戦で行く」
『Pi』
ルッタがタクティカルアームを操作して、ガトリングガンとバケツマガジンをブルーバレットからパージすると、タレットドローン『シルフ』のアンがそれを回収した。
すでにヘヴラト聖天領第七兵団とガーディアンの群れの距離は離れている。
ガトリングガンだけで倒し切れればそれで問題はなかったが、一番の目的はガーディアンを第七兵団から離して、これ以上の被害を抑えることだったのだから、すでに最低限の条件はクリアしているのだ。
「タラちゃん。俺がアイツを剣でめくるから、ショットガンでトドメを刺してくれ。リリ姉狙ってるヤツのケツ狙いでもいいよ」
「キィーー」
そうやり取りしながらルッタは左右の牙剣を抜き、タラもタクティカルアームを操作して腰にマウントしてある全自動魔導散弾銃を手に取った。
『じゃあ、ルッタ。どっちがたくさん倒せるか競争だね』
「えー。フレーヌの剣だとシールドごと斬れると思うし、シルフもいるから断然こっちが不利なんじゃないかなー。まあ、いいけどさ」
そしてリリの操作するフレーヌが突撃し、ルッタもテールブースターを再度噴かして後を追うと、ガーディアンたちとの乱戦が始まった。




