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第1話 転生したら滅亡寸前だった

AIと遊んでたらこんな話が出来た


+挿し絵+挿絵(By みてみん)


「うおー!成人おめでとう俺!今日から大人の仲間入り、酒もタバコもコカの葉も解禁だぜー!」


鏡に映る健康的な褐色の美男子――タワンティンスーユ王国の第一皇子ニナン・クチヨは、成人の儀を終えてテンション爆上げだった。前世は日本のしがない社畜だったが、過労死からの転生を果たし、今世は次期皇帝内定の超イケメン。まさに人生のイージーモード突入である。


「いやー、チート魔法とかステータス画面は無いけど、これだけ豊かなら文句ナシでしょ。ちょっとご飯がイモまみれなのと、鉄製品が見当たらないのが気になるけど……まあ、のんびりスローライフを送るとしますかね!」


「ニナン兄上!成人おめでとうございます!」


そこへ部屋の扉を豪快に開けて入ってきたのは、年の離れた弟だった。10代半ばにしてすでに自分より背が高く、モデル顔負けの超絶筋肉質イケメン。


「お、ありがとな!ええと……お前、名前なんだっけ?ちょっと記憶が混濁しててさ」


「何をおっしゃいますか、アタワルパですよ!このアタワルパ、兄上のために世界を征服してみせます!」


「あはは、アタワルパか。勇ましくて良い名前だね……って、え?」


ニナンは笑顔のまま凝固した。アタワルパ。聞いたことがある。いや、知っている。世界史の教科書で、世界最悪レベルに理不尽な最期を遂げた、あのインカ帝国の最後の皇帝ジャマイカ!?


「お、おい待て。じゃあ、もう一人のインドア派の弟の名前は……?」


「ふっ……。兄上が私の名前をお忘れになるとは、政治のやりすぎで脳が疲弊しているのでは?このワスカル、兄上の頭脳としていつでも謀略の限りを尽くす所存ですよ」


ニナンがガタガタと震え出すと、今度は部屋の隅の影から、知的で底意地の悪そうな、しかし目はキラキラと兄を崇拝している第二皇子が現れた。彼が不敵に笑うと、片眼鏡っぽく目元にジャラジャラ垂れ下がった金のピアスがキラーンと眩しく輝く。


「ワ、ワスカル……アタワルパ……。じゃあ、俺たちの偉大なるパパ上(皇帝)のお名前は!?」


「「ワイナ・カパックですが?」」


兄弟が声を揃えて首を傾げる。ワイナ・カパック。在位中に謎の病気で急死し、その後息子たちが泥沼の内戦を起こして国を滅ぼす引き金になった、あの偉大なる空気皇帝である。


「インカ帝国じゃねえか!しかも滅亡直前の!!」


ニナンは頭を抱えて絶叫した。タワンティンスーユってインカ帝国の現地語名かよ!知らないよそんな豆知識!


「どうされたのですか、ニナン兄上。体調が優れないのでしたら、私が一晩中添い寝をしてお看病いたしますが?」


さらに背後から、出るところが出まくっている破壊的なわがままボディを押し付けてくる美女が登場した。同腹の妹であり、インカの伝統(純血維持)に従ってニナンとの結婚秒読み段階に入っているクシリマイである。潤んだ瞳でニナンを大好きオーラ全開で見つめてくるが、今のニナンにエロを気にする余裕は一ミリもない。


「ひえええ!クシリマイ!……ってことは、俺は!?俺の運命はどうなるんだっけ!?」


前世の記憶を必死に手繰り寄せる。インカ帝国の滅亡直前、ワイナ・カパックが死んで、その後……確か、第一皇子も同時に病死したって書いてあった気がする。確か名前は――。


「ニナン・クチヨ……俺じゃん!!」


歴史書における自分の扱いを思い出した。内戦を起こしたワスカルやアタワルパはまだ数ページにわたる記述がある。だが、自分は「先王と同時期に病死した」という、わずか一行のナレーションで雑に処理される、いわゆる『ナレ死』枠のキャラクターだったのだ。


「死ぬ!このままだと俺、数年以内に原因不明の病気(多分天然痘)で、なんの見せ場もなく一行でナレ死するじゃん!!」


「兄上?さっきからナレシ、ナレシと、新しい料理の名前ですか?」


アタワルパが純粋な目で問いかけてくる。


「違うわ!国が滅ぶんだよ!俺も死ぬし、お前ら二人もすっごい泥沼の喧嘩した挙げ句にスペイン人にボコられて死ぬんだよ!」


「ふっ……。兄上、お疲れのようですね。他国など、我がタワンティンスーユの敵ではありませんよ。どうしてもと言うなら、私が今から敵国を全滅させる謀略を(キラーン)」


ワスカルのピアスが不穏に光るが、スペイン相手に謀略は通じない。


「嫌だ!俺は絶対にナレ死しない!こうなったら歴史をねじ曲げて、全員生存ルートを叩き出してやる!」


こうして、現代の記憶を取り戻した一行ナレ死確定皇子による、絶対に病気にならない&国を滅ぼさないための、必死すぎる亡国回避奮戦記が幕を開けたのである。



ニナン・クチヨ:史実の「ニナン・クヨチ」は、インカ皇帝ワイナ・カパックの長男であり、本来の皇太子。しかし、父と共に天然痘(あるいは伝染病)で急死したとされる人物。彼の死により発生した内戦はインカ滅亡の遠因となった。



アタワルパ:インカ帝国最後の実質的な皇帝。カハマルカの戦いでフランシスコ・ピサロ一党の騎馬突撃によってに捕らえられ、金銀で部屋を満たすことを条件に命乞いをするも、最終的に処刑された悲劇の英雄。火薬や騎兵は未知だったが、内乱を勝ち抜いた武断派の王だった模様。



ワスカル:アタワルパと帝位を争った異母弟。激しい内戦(インカ内乱)の末にアタワルパに敗れた。本作では内戦が回避され、アタワルパと共存する「有能な官僚」



クシリマイ:史実ではアタワルパの従妹の側室でインカ征服後はフランシスコ・ピサロの妾となった。ピサロ死後歴史家と再婚。テキスト文字の無いインカ帝国の歴史、実態について貴重な記録を多く残した。巨乳だとかやたら情熱的なのは作者の捏造です。只子沢山であったのは史実のようです。

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