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0 人生の三重苦


 一目見て、恋に落ちた。

 同時に自分が欲していたものが何か、分かった気がした。



  ※ ※ ※



 高校二年の夏に男が好きであることがバレた。

 世の中がまだ多様性なんて言葉は生物にしか使っていなかった平成初期の話で、当然イジメから不登校になりかけた。ところがこれも時代的に学校に行かないことへの理解などなく、良くも悪くも転校の末、高校は卒業させられた。

 大学は募らせた人間不信のせいでひたすら勉学に打ち込み、ろくに友達など作れずに終わった。

 無駄に良い成績を引っさげての就職活動で、見事培ったコミュ障を面接で発揮し、加えて就職氷河期のあおりを受け、結果引きこもりになった。

 そこから八年、引きこもった。簡単なコーディングを独学してゲームを作ったり、インディーゲームの翻訳を素人ながらに手伝ったり、インターネットという世界で、ただ作業に追われる日々を送った。そうして、現実から逃げた。


 八年目に両親が交通事故で死んだ。

 呼び出された警察署さえ行くこともできない状態で、母の弟である叔父が乗り込んできた。

 そして、全力で顔を殴られた。

 現代的に言えば、暴力で引きこもりは解決できないだろう。

 だけどあの時、多分殴られることなど日常茶飯事な昭和に生きた叔父の拳を食らった時、俺の世界の基準が一つ変わった。


 イジメられるのは嫌だ。

 イジメられるかもしれない外に出るのは嫌だ。

 つらいことが待っている外に行くのは嫌だ。

 でも、──叔父に殴られるより痛いことは多分なかなかない。


 それから叔父と共に、両親の弔いを終えた。葬儀屋、保険屋、役所、銀行。怖いとか、つらいとか、言っている場合ではなかった。怒涛のように処理すべきことはあって、それはインターネット上で生きていた時と同じ感覚だった。叔父は実務的にはまったく役に立たなかったので、インターネット上のありがたい知識を元にがむしゃらに作業した。

 そうして、全部終わらせて、それから、やっと──俺は泣いた。



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