ヒロイン視点 下っ端聖女を抹殺しようとして逆に浄化されてしまいました?
「ふふふ、これでチビも終わりよ」
私が村人の格好をして重病人を世話するふりして皆に紛れて、チビの背嚢に魔物寄せの魔道具を入れて離れた時だ。
「おい、聖女なら、すぐに治療に当たってくれ!」
そこにきつそうな近衞騎士がチビを怒鳴りつける声が聞こえた。
そうだ、もっと虐めろ!
私は歓声を上げそうになった。
「いや、彼女は癒やし魔術はまだ出来ない」
何とエドガルド様がちびを庇ってくれたんだけど……じゃあ何故チビを連れてきたの?
私と同じ事を近衞騎士は不満そうに言いだした。
「彼女はポーション作りに来たんだよ」
ええええ! このちびは初級ポーションしか作れないはずだ。
初級ポーションを重症者がテントに入れないくらい沢山いるこの中で作ってどうするのよ!
私は馬鹿にする材料を見つけて歓喜した。
近衞騎士達にもっと睨まれろ!
「なんて悠長な!」
その近衞騎士も怒り出した。
「ベルナルド、その失礼な態度は止めろ。彼女は母が無理言ってここまで来させたのだ。その能力は保証する」
「王妃様がですか? 殿下の我が儘で連れてきたんじゃなくて」
「そうよ、ベルナルド、あなたも彼女の作ったポーション飲んだんでしょ。彼女にお礼を言いなさい」
えっ、この騎士はチビの初級ポーションを飲んで治ったって、風邪くらいで寝込んでいるんじゃないわよ!
私まで少しいらっときた。
「えっ、ああ、このポーションですか?」
ベルナルドが空瓶を出してくれた。
えっ、あの瓶は中級ポーションだ。
嘘? このチビ中級ポーションを作れる訳?
私は聞いていなかった。
本当にポルトの影も役立たずだ。そんな重要な情報をなんで掴んでいないの?
「そうよ。彼女はあれを昨日200本以上作ってくれたんだから」
「えっ、200本もですか?」
何か王妃様が言っているけれど、200本も作れる訳はないじゃない!
私でも作れないのに!
アニメのヒロイン様である私以上の能力が、モブですらないこのちびにある訳はないわ!
王妃様もこのちびに騙されているのよ!
でも、私は次のちびの作業に驚いた。
馬鹿みたいにどでかい鍋に訳の判らない水を入れて沸かし始めたんだけど……お湯を沸かせば良いってものじゃないのよ!
このちび何を考えているの?
こんな馬鹿みたいな量を沸かしてどうするのよ!
初級ポーションでもこれだけの量は作れないわ。
そうか、このちび、王妃様やエドガルド様を騙しているんだ。
ポーションと言いつつ、偽薬を作ってそれをあたかもポーションのようにして、王妃様の心を掴んだのに違いない。でも、初級ならいざ知らず、中級なんて偽ポーション作ってもバレるのは時間の問題じゃない! 私はこんなチビと競い合う馬鹿さ加減に気付いた。
ほっておいても自爆するに違いないわ。
「じゃあ、ユニコーンの角からお願いします」
えっ、このチビ何をしようというの?
私は驚愕した。
ユニコーンの角なんて使うのは上級ポーションだけだ。
私でも上級ポーションを作る時は瓶1本くらいしか作れないのに。なのにこの馬鹿は巨大な鍋一杯分の素材を入れようとしているんだけど……ちょっと偽薬作るにしても素材の無駄遣いよ。
「何馬鹿なことをしているのよ!」
「馬鹿はお前だろう」
思わずそう声に出した私の後ろからぬっとセナイダが現れてくれた。
「ギャッ!」
私は思わず飛び上った。
「こんなところで何をサボっているのだ?」
セナイダは私を睨み付けてくれた。
「いえ、騎士様。あのチビ聖女は高価な素材を使って偽薬を作ろうとしているんです」
「何を言っている? あの子の作る薬は王妃様が保証されたんだぞ。偽薬な訳ないだろう!」
「しかし、あんな巨大な鍋を使って作れる訳は……」
「人のことを言う前にまず目の前の治療から当たってもらおうか」
「えっ、いや、あの騎士様」
抵抗しようとした私だが、セナイダの馬鹿力には敵わなかった。
私はあっという間に重傷の患者のところに連れて行かれた。
このみすぼらしい村人の格好で……チビに近づくのにこの格好は役だったが今では私が下っ端聖女みたいではないか!
せっかくエドガルド様の色を纏ったドレスで決めてきたのに、こんな村人のような貧乏そうな衣装では全然目立たないし……
というか婢みたいで最悪なんだけど……
ポルト王国の大聖女様が台無しだ!
「ブツブツ言っていないでさっさと始めろ!」
セナイダは容赦がなかった。
おのれ、この騎士も今に見てろよ!
私はいつか復讐することを心に誓いつつ仕方なしにヒールにいそしんだのだ。
「ギャーーーー」
そんな時だ。すぐ近くで悲鳴が上がった。
そちらを見ると一人の騎士が魔物に襲いかかられていたのだ。
「敵襲!」
「魔物が襲ってきたぞ!」
騎士達が叫んで集まってきた。
辺りを見ると魔物達が次々に現れた。
「なぜここに魔物がいるんだ!」
セナイダは慌てて剣を抜いた。
そのまま襲ってきた魔物に斬りかかる。
私はその隙にセナイダの元から逃げ出した。チビ聖女の見えるところに移動する。
魔物が次々に現れたが、私自身は王弟殿下がくれた魔物除けの魔道具を持っているから大丈夫だ。
チビを見れるとこるまで来ると私は物陰に隠れた。
チビは懸命に偽薬を作っていた。
そんな量の偽薬を作ってどうするんだろう?
ピカッ
でも、鍋の中のポーションが光りそこには緑色に輝くポーションが出来た。
光るところまで真似るなんてなんて芸の細かいことだ。
でも、貴様はそこまでなんだよ。私に働いた数々の無礼、地獄で後悔するがいい!
「危ない!」
エドガルド様の声が聞こえた。二人して魔物に弾き飛ばされていた。
魔物の前にチビがいる。今こそそのチビを引き裂け!
私が祈ったときだ。
しなくても良いのにエドガルド様がチビの前に出るのに気付いた。
私は手に自分で持っていた上級ポーションを握りしめた。
私はチビが殺された後にエドガルド様を助けに出るのだ。
最悪チビが魔物に傷つけられて苦しんでいれば止めをさしてやってもいい。
この上級ポーションをエドガルド様に飲ませて、チビはほっておいても良いだろう。
いくらエドガルド様でも、魔物に襲われている所を助けられたら私に気が向くだろう。
私は元々ヒロインなのだから。入学式のイベントで失敗したけれど、これでエドガルド様と仲良くなれるのだ。
何しろ私は魔物除けのポーションを持っているのだから。
エドガルド様は私に助けてもらった感激のあまり抱きしめてくれれば、絶対にもう魔物に襲われることはない。そこからは私とエドガルド様の素敵な学園生活が始まるのだ。
そうだ。チビは魔物にその地味顔でも傷つけられて、私とエドガルド様が仲良くなる様を遠くから眺めれば良いのよ!
うふふふふ。
私は自分の幸せな未来を夢見ていた。
「「「ギャオーーーーー!」」」
そこに魔物達の叫び声が聞こえた。
どうやら最後の時が来たようだ。
チビが魔物達に囲まれていた。
これだけの魔物に囲まれたらいくらチビが悪運強いと言っても助からないだろう。
私がほくそ笑んだときだ。
ピカッ
チビの持っていた杖が光り輝いたのだ。
えっ? これは何?
その光に包まれると次々に魔物が崩れ去っていくのだ。
「行っけーーーーー」
チビのかけ声と共に光の奔流が私目がけて飛んできたのだ。
「ギャーーーー」
私は光の奔流を浴びて叫んでいた。
激痛が体を走ってもの凄く苦しかった。
バリン!
背嚢に持っていた魔道具が砕け散るのを感じた。
嘘! 私浄化されるの?
恐怖が体を包んだ瞬間、私は光の奔流に吹っ飛ばされていたのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございました。
悪に手を染めたヒロインは浄化された?
そう簡単には浄化されそうに無いですが……
続きは今夜です
お楽しみに








