机に真っ赤に落書きされましたが、王太子殿下の反転魔術で聖女仲間が犯人だと判りました
翌日も朝からエドが迎えに来てくれた。
今日も晴れていて気持ちが良い天気だ。
「エドさん。良いの? 毎日送り迎えしてくれて」
「良いんだよ。うちの店主にもいつも世話になっているリーナをちゃんと送り迎えするように言われているから」
「なら良いんだけど」
私は少し安心した。それに、まあ、私もエドと行き帰り一緒に行けて嬉しいし……
それは良いんだけど、学園の授業は不安だった。
「はああああ!」
「どうしたんだ。ため息なんてついて」
「だって、今から授業だと思うと気が重くて」
私が正直に言うと、
「そんなに勉強が苦手なのか?」
「勉強が好きな人なんているの?」
「俺は覚えるのが好きだからな」
「エドさんが羨ましいわ」
私はまたため息をついた。
「まあ、わからない事があれば俺に聞けばいいから」
「ありがとう。頼りにしてます。隣に聞く訳には行かないし」
「えっ、殿下も教えてくれるんじゃないか」
「そんなの畏れ多くて聞けないわよ!」
「そうか。気さくな人だと思うけれど」
「あの美形を見ると、見てるだけでまぶしくて勉強なんて頭に入らないわよ」
「そうか、でも、昨日はちゃんと話できたんだろう?」
「それは出来たけど、一緒にいるだけで本当に気が疲れるのよね。セシリアさんとかアレハンドラ様とか怖い視線で睨み付けてくるし」
私はため息をついた。
「まあ、頑張れ! いざとなったら殿下らが助けてくれるさ」
学園に着くや他人ごと宜しくエドは言うと、さっさと人混みの中に消えてくれた。
出来たら教室まで一緒に行ってほしかったのに!
「ああら、パウリーナじゃない」
そんな私を見て聖女仲間のサラが声をかけてきた。
絶対に碌でもないことを私に言いにきたのだ。私が警戒して見ると、
「あの子、薬屋の店員のエドでしょ。パウリーナは殿下といい、あの子といい、男をとっかえひっかえしているのね」
「な、何を言うのよ。エドさんは私が馬車が無いって言ったら親切にも送り迎えしてくれているだけよ。それに殿下なんて本来私が近付いてもいけないお方なんだから!」
私が力強く反論すると、
「まあ、そうよね。あなたみたいなお子ちゃま体型の胸無し短足の体では、女の魅力で殿下方を誘惑することも出来ないわよね」
嫌みたらたらサラが言ってくれた。
本当にむかつく。
どうせ私はお子ちゃまですよ!
何よ! 胸が少し大きいからって威張るな!
むっとして私はそのまま教室に向かった。
でも、そんなサラが私を見て笑っていたのは見ていなかった。
教室に着いた私は自分の机を見て唖然とした。
「な、何よ これは!」
そこには真っ赤な血のようなインクで『チビは死ね!』って書かれていたのだ。
「まあ、パウリーナ。これはどうしたことなの?」
教室の反対側から出てこなくていいのにアレハンドラ様が出てきてあざ笑ってくれたんだけど……
「チビってあなたの事よね」
「まあまあ、身分不相応に王太子殿下に取り入ったから、嫉妬に狂った誰かさんが書いたんだと思うわ」
「この机も可哀相に。あなたなんかに使われるから、昨日は池に放り込まれるし、今日は落書きされるわで災難続きね」
横からエビータも出てきてくれた。
でも、何も私の机に当たること無いじゃ無い! 落書きするなんて許せない!
私はきっとしてアレハンドラ様を睨み付けた。
「まあ、パウリーナさん。これはどうなさったの?」
今度は教室の外からセシリアが入ってきた。
「これは酷いわ。誰がやったのかしら?」
そう言いながらセシリアはアレハンドラ様を見るんだけど、
「何故、こちらを見ているのよ? 私じゃないわよ」
アレハンドラ様は首を振るが、じゃあ誰かにやらせたんだろうか?
「まあ、それはどうかは判らないけれど……」
「何ですって!」
「私のお友達がやってくれたのかもしれないわ。
でも、それもこれも本来は私がヒロインなのに、私の立ち位置をあなたが奪うからいけないのよ、パウリーナさん。いい加減にその位置を私に返して頂けないかしら」
ニコリと嫌らしい笑みを浮かべてセシリアが言うんだけど……ヒロインってこんな性格だったかしら?
そう私が思ったときだ。
「何を騒いでいる?」
氷のように冷たいエドガルド様の声が響いた。
そして、皆がお互いの顔を見合わせている中で、私の机の上の落書きに気付いた。
「誰だこのような事をしたのは?」
更に冷えた声でエドガルド様は周りを見渡した。
「また、ミラネス侯爵令嬢がしたのか?」
「またとは異な事をおっしゃいます。少なくとも今回は私はしておりません」
アレハンドラ様は平然と反論した。
「まあ、エドガルド様。パウリーナさんが物語のヒロインの私の位置を勝手に奪ってしまわれましたから、私のファンの方が暴走してこのような暴挙に出たのかも知れませんわ」
セシリアは大げさに身振り手振りで説明を始めてくれた。
「何を言っているかよく判らないが、俺はあなたに俺の名前呼びを許した覚えは無いが」
「まあ、物語のヒーローのエドガルド様が何をおっしゃいますの?」
エドガルド様のやんわりとした注意はセシリアには全く響かなかった。
更にはセシリアはそのままエドガルド様にしなだれかかろうとして、さっと避けられてこけかけた。そして、そのまま私の机に倒れた。
「キャッ!」
セシリアはもろにべっとり塗られた赤インクの中に倒れ込んでくれたのだ。
立ち上がった顔から胸にかけてインクがべっとりとついていた。
『ちび、死ね』と逆に書かれていた。
「ギャーーーー! 酷いですわ、エドガルド様! いくら私が憎いからってこんな酷い事をしなくていいのに」
セシリアが半泣きになって叫んでいた。
「倒れ込んだのは君だろうが!」
エドガルド様は呆れ返っていた。
「酷い。エドガルド様にこんなことされるなんて」
「はああああ、何を言ってるんだ」
「私は何も悪くないのに!」
絶対に嘘泣きだと思うけれど……エドガルド様も女の涙には甘いみたいだ。
私がエドガルド様ならセシリアを張り倒しているけれど、
「大丈夫か?」
エドガルド様がセシリアに気を遣い出した。
本当に男達は女の涙に弱すぎる!
「やむを得まい。元に返れ!」
エドガルド様が手を翳すと私の机とセシリアに着いたインクがきれいに剥がれて飛んで行ったんだけど……凄い! こんな事出来るんだ!
これで犯人に帰るんだろうか?
私がインクの後を目で追っていた時だ。
「ギャーーーーー」
悲鳴を上げたのは教室の窓の外から中を見ていたサラだった。
その顔から胸にかけてにはっきりと『チビは死ね』と書かれていたのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
犯人は男爵令嬢のサラでした。
サラは尻尾切りであっさり退学になるのか?
続きは明日です。








