20ヒロイン視点 パウリーナをやっつけようとして、却って王太子殿下との仲を進めてしまいました
「あのちび絶対に許さない!」
私の憧れのエドガルド様に手を繋がれて歩くちび聖女を見て私は完全に切れてしまった。
アニメではヒロインとオリエンテーションの時に手なんて繋いでいなかったのに、何でもう繋いでいるの?
ヒロインとエドガルド様が手を繋ぐシーンなんて本当に最後の方だったはずだ。
ちびだから子供扱いされているってこと?
本当に信じられなかった。
「何を怒っているんだよ。あんなちびなんてどうでも良いだろう。さっきはお前がどうしてもエドガルドと一緒に行きたいとか言うから、あのちびの機嫌をとってやったが、普通はこの俺様がそんなことするなんてあり得ないんだぞ!」
「そのくせ、ちびにはあなたの魅力が全く響かなかったみたいだけど」
私は役立たずのバルトロメーオに嫌みを言ってやった。
「何を言っていやがる。俺の魅力を感じる前にエドガルドがあのちびを抱き寄せたからだろう!」
「ああ、もう許さないわ。エドガルド様に抱き寄せられるなんて! あのちび絶対に悲惨な目に遭わせてやるんだから」
私は思い返すだにむかついてきた。
本来なら、私があの位置にいたはずなのに、なんであんな見た目も地味なちびがエドガルド様の横にいるのよ!
クイズは簡単な問題も多かった。私にはよく判らない問題があったけれど、初代聖女様のペットって何なのよ?
「おい、セシリア、さすがにサルって言うのはないんじゃないのか?」
「そんなの判らないわよ。サルを連れて芸をさせていたかもしれないじゃない」
バトルロメーオの呆れた言葉に私は言い返した。
「いや、でも、さすがにそういう事はないと思いますけど」
バトルロメーオの従者にまで言われてしまったけれど、ならあなたが答えなさいよ!
「おい、我が班は聖女問題全問不正解ってお前それでも聖女かよ」
「何言っているのよ。こんな変な問題知っている聖女なんていないわよ。私、聖女様の杖が汚れて真っ黒だったなんて知らなかったわよ。昔は衛生問題も悪かったから余程汚いところに住んでいたんじゃなくて?」
今の聖女で良かったと私は思ったのだ。
でも、その後すぐに料理させられたのには参ったわ。
「セシリア、お前は平民だから料理できるだろう」
ってバルトロメーオが言ってくれたけれど、
「失礼ね。私は5歳の時から王弟殿下の養子になっているのよ。料理なんかしたことある訳ないでしょ。あなたこそ行軍訓練で料理くらい作れるようにならされるんじゃないの」
「はああああ? 俺は王子様だぞ。行軍しようが周りがやってくれるに決まっているだろう」
「私も一応王女様なのよ。出来る訳ないでしょ。そこの従僕にでもやらせれば良いでしょう」
「何言っているんだ。こいつもコルドバ王国の王弟の息子なんだよ。出来る訳ないだろう」
結局王弟殿下が私につけてくれた従僕が料理が多少出来たので、彼に作ってもらうことにした。
「おいおい、なんでも、あのちびが聖女の杖でおいしくなあれって言ってかき混ぜたら舌が蕩けるような味になったそうだぞ。セシリアもやってみろよ」
「えっ、そんなの聞いたことが無いけれど、本当なの?」
「先生に聞いたから確実だぞ」
バトルロメーオの言う事を信じてやってみたのが間違いだった。
「げっ」
「なんだこのまずいのは」
「人間の食う物じゃないな!」
カレーがとても薬品くさくなってしまったのだ。
私はほとんど食べられなかった。
ガセネタを広めたあのちびは今度こそ許さない!
私は心に決めたのだ。
ロッテンの礼儀作法で苦労しているちびをあっさりと追い抜いて私達は最後の素材採取の大温室に入った。
「おいおい本当にやるのか?」
バトルロメーオは思った以上に常識があるみたいだった。
「当たり前よ。ここまで虚仮にされてただで終える訳にはいかないわ」
この学園の魔物学のレムス先生はポルト王国の出身だった。私の身元保証人の一人でもあった。その先生と仲良くなってこの学園で飼っているフェンリルを内緒で借りてきたのだ。
なあに、いざとなったら牢を勝手に破ったことにすれば良いのよ。
私はあのちびのパウリーナになんとしても一矢報いないと耐えられなかった。
このフェンリルがパウリーナに襲いかかってくれて、殺してくれたら儲けもの。例え殺さなくても心胆寒からしめてくれれば良いと思ったのだ。
何しろエドガルド様にもちゃんと私と一緒に行動した方が良いと警告してあげたのだから。
最悪、二人して後悔すれば良いのよ。
私は従僕のホキアンに合図した。
「行け!」
ホキアンはパウリーナのいる方へ指さした。
しかし、このフェンリル。ちらっとホキアンを一瞥するとそこに座り込んでくれたのだ。
何なのよ、こいつは?
「お前、さっさと行きなさい」
私がフェンリルに向かって叫んでいた。
でも、フェンリルは私を見て大きなあくびをしてくれたのだ。
ゆ、許せない!
「いい加減に行けって言っているでしょう!」
むかついた私は杖を構えてやったのだ。
「ウーーーー」
そしたらやっとフェンリルは周囲の匂いを嗅ぎ出して
「ウォーーーーン」
と叫んで駆け出したのだ。
パウリーナのいるのとは反対の方に。
「えっ」
私は目が点になった。
「ちょっとどこに行くのよ」
「ギャーーーー」
悲鳴が大温室中に響いた。
この声は悪役令嬢のアレハンドラの声だ。
まあ、アレハンドラも邪魔だったけれど、今一番の邪魔者はパウリーナなのに、アホ犬はなにしてくれるのよ!
私は慌ててそちらに向かって駆け出した。
その場に着いてみるとなんとアレハンドラは現れたフェンリルを見て腰を抜かしていたのだ。
そして、フェンリルはアレハンドラが採取しようとしていたウォータースライムを食べていたのだ。
フェンリルの好物がウォータースライムだとは知らなかった。
というか、どの道なら悪役令嬢を食べるか何かしてほしかった。
「おい、来たぞ」
バトルロメーオが教えてくれたので、私達は慌てて木陰に入った。
「な、何なの!」
私は思わず叫びそうになって慌てて自分で口を押えた。
何とちびのパウリーナはエドガルド様にお姫様抱っこされて連れてこられていたのだ。
もう絶対に許せなかった。
私はテレパシーでフェンリルに「殺せ!殺せ!殺せ!」
と送ったのだが、この世界にテレパシーなんてある訳はない。
フェンリルはパウリーナなんて無視して悠々とウォータースライムを食べ続けていたのだ。
でも、それを見てパウリーナがフェンリルに向かったのだ。
こいつは馬鹿だ。
でも、チャンスだ。
そうだ。今こそ殺されろ!
私は心の中で叫んでいた。
「いい加減にしなさい!」
なんとパウリーナは聖女の杖でフェンリルを叩きつけていたのだ。
普通王者フェンリルにそんな馬鹿なことをするのはパウリーナくらいだ。
怒り狂ったフェンリルに噛み殺されるパウリーナが脳裏に浮かんだ。
しかし、しかしだ!
「ギャオーーーー!」
何故かフェンリルが絶叫してピクピク震えて次の瞬間倒れ込んでいたのだ。
私は開いた口が塞がらなかった。
何なの、このフェンリル⁉
学園で育てられていたからひ弱だったんだろうか?
何で下っ端聖女なんかにやられているのよ!
わざわざ苦労してフェンリルを解き放ったのに、その後エドガルド様に抱きしめられて喜んでいるパウリーナの姿を見せつけられただけで終わってしまった。
何なの? これは!
絶対に絶対に許さないんだから!
私は次にどうやってパウリーナを虐めるか必死に考え出したのだった。
えげつないことをするヒロイン、
果たしてパウリーナは耐えられるのか?
続きをお楽しみに!








