第16話.炎と煙は高いところがすき!
ドンッ!!
再び大きな衝撃がその場にいた全員を襲った。大きく身体が傾く、いや人間の身体だけでなく床全体が大きく傾いていく。何かが軋む音、同時に方々からサイレンの音が鳴り響く。
「な、何?何ですか?」
スイカの問いに応えるものはいない。無慈悲にも床の傾きはさらに大きくなり、床に落ちていたさまざまなものが壁に向かって滑り落ちていった。
「傾いているっ!この船全体が!何かにつかまれ!」
転げ落ちていかないように、近くのものに捕まりながらアリサが叫んだ。空いた片手で近くにいた最長老を掴んでいる。
ギギギ……!
さらに船の傾きは大きくなる。また、あらゆる隙間から黒い煙が部屋の中に流れ込んできた。船自体に深刻なダメージがあるらしい。
「うわっ!?あっ、あの人たち逃げていきますよ!」
のびて気絶した獣耳の兵隊が転がっていく、それをキャッチしながらスイカが指を指す。その先には四足になって這いながら外に逃げていく仮面の侵入者たち。帽子が取れて、髪が乱れた姿の船長が立ち上がって叫ぶ。
「船が持たん。脱出するぞ!動ける者は、怪我人に手を貸してやれ!」
そう言いながら、どうしろこうしろと部下に指示を出していく。
「な、ナナコ先輩!?」
「んー。私たちも動けない人を助けてあげよう。無事に脱出する方が大切だ」
「わかりました!」
空中からロープを取り出して、もはや上り坂になった出口の扉に投げかける。時が経つにつれて、黒煙が広がり視界が狭まっていく。
「みんな!ロープを辿って出口に向かって!」
「先に行け!怪我人が先だ!背負っていけよ!」
順番に一人づつ脱出していく。最後に残った船長がいよいよ出ようとした時、頼みの綱のロープが切れる。船長はそのまま体勢を崩して転げた。
「船長ーー!!」
「行け!先に外に出ていろ!私は後で行く、船が崩れるぞ!」
もはや部屋中に煙で一寸先も見えない。その状況で船長は部下に命令する。船長は再び立ち上がってロープを引いた。何の抵抗もなく千切れたロープの先が手元に来る。小さく舌打ちをする。その時、にょきっと机の残骸の下からメイが顔を覗かせた。
「うお!?な、お前まだいたのか」
「あい」
メイは短く答えた。
「メイちゃーん!船長さんをお願いね!」
姿は見えないが遠くからナナコの呼びかける声が届いた。メイは、見えるはずもないがひらひらと手を振って返事をする。ぐらっとさらに大きく船内が傾いた。
「はっ、せっかく綺麗に仕上げた空飛ぶ魚号もこれで終わりか。クソったれのクソテロリストどもが」
船長はメイに視線を移す。
「おい。もし逃れる手段があるなら早く逃げた方が良い。私のことはいいから行けよ」
諦めたのか黒煙が満ちる中、船長はドカリと腰を下ろした。片足をかばうようにしているのは、どこかしら負傷しているのだろう。
「僕は天才だから」
「そうだな。天才くんはまだ生きてやる事があるだろうよ。さあ行けよ」
「天才だから、お前も助けられる」
船長は落ちていた帽子を拾い上げて、被り直した。
「はははっ。そうか、ならばお願いしようか」
「あい」
ドォン!!
さらに追い討ちをかけるように大きな衝撃。床が大きく裂けていく。壁が軋みながら裂け目をつくり、深く大きく引きちぎれた。かつて会議室だったものは完全に真っ二つに分かれてしまった。天井と床の区別がつかなくなり、空飛ぶ魚号は完全に崩壊した。真っ赤な炎をあちこちから吹き出して、悲鳴を上げながら船が真ん中で折れて横倒しに倒れた。黒煙と炎、何人もの乗組員が必死に消化活動を続ける。しかし炎が消えたのは、船の残骸がその肋骨を残すだけとなった時だった。




