80_桜花動乱_ヤマト
ヤマトは目を覚ますと見慣れない牢屋に閉じ込められていた。
「捕まったのか、さてどうするか」
あぐらをかいてのんびりと考える。
「流石に牢屋をぶち破るにしてもバレちまうか…… 」
しばらくする足りない頭で考えていると足音が聞こえる。
「飯だ」
辛気くさそうな男が保存の利きそうな小麦の塊を焼いたものと水を持ってくる。
「三食か?」
「二食がいいか?」
「ジャムはあるか? 牛乳でもいい」
「そんなものをお前に渡す義理は無い」
「わーったよ、えっとおっさん名前は?」
「エイトボールでいい」
「エイトボールね、飯どうも」
ヤマトはパンと呼ぶにあまりに粗雑なそれを口に運ぶ。
「毒が入っているとは思わないのか?」
「いや、別に、ここはどこかも知らねえし、なんで捕まったのか知らねえし、とりあえず飯を渡すって事は生きてて欲しいってことだろ、牢屋に閉じ込めてそのままなら飯も水も与えなきゃ簡単に死ぬからな」
「馬鹿だが無能ではないらしい」
「正解だ。聞かなかったことにしといてやるよ」
ヤマトは中指を立てる。
「で、ここは?」
「情報を与えるわけが無い」
「そうか……」
ヤマトは鼻をスンスンと音を立てて匂いを嗅ぐ。
「シルバーベルだな」
「……たしかトラのベースらしいな。となると嗅覚は人間の数万倍か」
「まぁ覚えてられるかは別だがな」
エイトボールは時計を見る。
「おしゃべりはここまでだ」
業務的な態度になり、スタスタと去って行った。
ヤマトはエイトボールの足音を頼りに外の状況を探る。
(階段の音、それに窓には土が付いている。この場所は地下か……あ、ナガトがぶち込まれていた牢屋か……中はこんなことになってるんだな)
立地が変わっていなければ最短距離でシルバーベルから抜け出すのも簡単な場所ということが理解できた。
しかし、廊下にはいくつもの監視カメラがありヤマトの行動は筒抜け状態だった。
(厄介だな……ここは大人しくしてるか……それはねえな)
ヤマトは立ち上がって檻を掴む。
「痛っ」
檻に指が触れた瞬間ビリっとした痛みが指先から腕まで走る。
(電気柵かよ……ふざけやがって!)
ヤマトはすっかりやる気を失う。
冷たいコンクリートが体温を奪う。
(ナガトも大変だったんだなぁ……)
寒さがしみる晩秋の頃合いもあり、必要以上にエネルギーを使うとあっという間に力尽きてしまう。
だからこそヤマトは、丸くなって眠ることにした。
(とりあえず寝てから考えるか)




