進軍
王国騎士団からの報告を聞き、王は、帝国騎士団の副団長を喚問した。
内容を吟味し、此度の戦の褒賞の件もあり、新たな領土を手に入れるべく、騎士団を再派遣することを決めた。
騎士団は、国境を越え、帝国の村や町をいくつも占拠していく。村や町にいた帝国貴族は、騎士爵。いわば底辺貴族で、大した軍備もなく、ほぼ降伏状態であったので、王国での騎士爵を保証すると言えば、抵抗を見せていた者も、すぐに陥落した。そして2ヶ月後、帝都の外壁にたどり着く。
外壁は一部倒壊し、門番のような兵もいなかった。
都内に入ると、そこは崩れた街と、暴徒と化した民、それを抑えつける騎士団。
商店に物は少なく、食料の値段は跳ね上がり、食料を買えない者は、徒党を組んで商店を襲う。
商店には、護衛の冒険者。
冒険者を雇う金のない商人は、店を閉じて、信頼出来る人にのみ、小口で食料を売っていた。
「とても帝都とは思えんな。」
帝国侵攻団を任されたブッチャーの言葉に、
「こんなに荒れ果てて。」
と、力無く呟く副団長のアリマ。
帝国の城は無残な瓦礫の山。いったい誰と交渉すれば良いのか判らない。
アリマを動かして、今、帝都内を牛耳っているのは誰かと書き込みをさせる。
「二リュー子爵?」
「はい、どうやら二リュー子爵が、生き残った貴族の中で、1番資金力が有ったようで、残った貴族を金で纏めているようです。」
「どの様な人物か?」
「金に汚く、権力に弱い小物貴族の印象が有ったのですが、どうやら権力欲も有ったようですな、帝の血は4代前に入っているので、一応帝位継承権は有ったかと。」
「なるほど。さてどうするべきか。その二リューを傀儡にするか、消してしまうべきか。とにかくその二リュー子爵邸に向かうべきか、相手次第だな。」
そして、二リュー子爵邸の近くまで来た時、子爵邸からおそらく子爵の護衛や私兵だろう男達、その数、およそ50。
それらが隊列を組んで出てきたのだが、王国騎士団と王国軍の数を見た途端、武器を置き、膝を地面につけ始めた。
戦う意思の無い事を相手に伝える、この世界での誰もが知るゼスチャーであった。
兵達に、見張るように命じ、ブッチャーはアリマと子爵邸に入る。
二リュー子爵は、兵と共に迎え撃つ気でいたが、王国兵の数を見て、顔面蒼白で、玄関ホールで膝をついた。




