第二部――エピローグ
「――っの、馬鹿野郎がっ!」
カルマンは、左手でティーダを殴り飛ばす。
殴られたティーダは、体勢を整える事もなく、大の字になるように、倒れた。降りしきる雨のせいで、地面は泥水のようになり、倒れたティーダは、泥だらけになる。
「はぁ……はぁ……! 事情はわかったよ……でもなぁ、それでも殴らせてもらった意味はわかるか?」
大の字で倒れたティーダは、その問いに答える事なく、無言で雨が降る空を見ていた。
雨は勢いが凄く、ティーダから流れるものの正体を、問答無用で消していく。
「……っこの、何とか言えよ、こらっ!」
死んだような目のティーダを見て、カルマンは苛立ちを覚える。そのまま馬乗りになり、一発、二発、三発……と、ティーダの顔面に拳を入れていく。
「ティオは……ティオはなぁっ、どうしてお前に、『これ』を託したのか……本当にわからねぇのか、お前はっ!」
カルマンの手から、ティオがティーダに託した、生命の光が現れる。
「――俺は、あいつに何もしてやれない。俺は……あいつから奪う事しかできない……俺は……」
「……っ!」
呪文のように繰り返される言葉に、カルマンはそれを黙らせるように、再び、四発、五発、と拳を叩き込んでいく。
その行為は数分間に渡り繰り返され、いつしか雨音の静寂のみが、二人の耳に残るようになる。
――途端、ティーダは立ち上がり、ヴェルデフレインを腰から外す。そしてそのまま、何処へともなく、歩き出していく。
「お、おい、どこへ行くつもりだ!?」
「償い……俺は、罪を償わなければいけない……」
「罪を償うって……。これはどうするつもりだ、おいっ、ティーダ!?」
必死の呼び掛けも虚しく、ティーダは、この激しい雨により発生した、濃霧の中へと消えていった。
そして、今後数年。ティーダの姿を確認したものはいないという。
アルティロイドⅡ〜覚醒スル命〜 完