表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルティロイド―究極の生命体―  作者: ユウ
使者~最後の団結~
57/97

18,引き金を引く者

今回の話は、リオが汚い(教育上よろしくない)言葉を連発します。

好きじゃない方はスルー推奨。

 火薬餅の一件から、数日。大方の予想通りに、城国からの南側のレジスタンス攻撃は、極少数に限られていた。新しいパーシオンは、洞穴という見つかりにくい習性を活かし、現在までの難を逃れている。

 しかし、その時に見張りについていた、一人の兵士がとある異変を発見する。カザンタ山岳地帯の、高い位置という利点により、発見された出来事である。

 それは遥か北の方から、煙幕のような煙が少しずつながら、南側へ近づいているという事だった。いや、煙幕というには少々穏やかなもので、実際にはまるで爆発の衝撃のような、砂埃が舞っているというものが正しいのかもしれない。

「ふむ……どうだい、ロビン。何か見えるかね?」

「ワカラナイ デモ タシカニヒトノヨウナモノガミエル」

 ロビンの眼は、一種の双眼鏡にもなっており、遠くの景色を見渡せる。ハリスはロビンの見た報告により、今後の動向に対する考えをまとめている。

 先手必勝。打って出るべきか、様子を見るべきか。パーシオン内での多数決も見事に割れてしまい、後は兵士長としての、ハリスの判断により決まるという状況である。

「ハリス兵士長、どうです?」

 思考を巡らせるハリスに、問いかけてきたのはカルマンだ。

「カルマン、確か君は様子を見るべき、と提案したね?」

「はい、その通りです。せっかく見つけた洞穴という、最大の隠れ蓑になる場所です。俺達の誤った判断によって、一般の女子供を戦いに関係させるわけにはいきません! 下手に攻撃を仕掛け、仮にもこの位置が見つかってしまうのは避けたい、というのが俺の意見です」

「あのやんちゃだったカルマンが、そういう冷静な判断をしてきてくれてしまったのが、どちらにするかの悩みの種になってしまうとはね……いずれにしても、私の力不足か……」

 ハリスは、その眼鏡の向こう側に起きている景色を、今はただ傍観している事しかできなかった。

 もしかしたら、あれは城国の罠かもしれない。そうだとすれば、ここは行くべきではない。しかし、もしもあれが仲間の危機だとしたら――そうも考えれば打って出て、助けるべきなのだ。現にパーシオンには、並の戦力を蹴散らせる力を備えている。

「――カルマン、そしてロビン。肝心な時に、役に立たない私を呪ってくれても良い。君達に任務を命じたい」

 一つの決心と作戦を考えたハリスは、その旨をカルマンとロビンに伝えた。


 ――旧パーシオンから、やや北東に位置している場所。その爆発のような砂埃が上がっている、大元となっている場所がここだ。

 そこでは、数人の兵士同士による、小規模な戦闘が行われていた。追手は城国軍、しかし数は二人。対する追われる側は、約十人ほどだろう。こちらも前線に出て、戦っているのは二人だ。

 戦局は事実上の二対二。そして、その四人の姿は見知った姿なのだ。

「くっ……奴等は一体何者なのだ!? 我々がこうもやられるとはっ」

「我が命尽きるとも、姫を無事に南の地へ、送り届けるのみ!」

 追われる側の二人、その正体はティーダが、遥か東の地で出会った者達。

 エスクード城に、絶対の忠誠を誓う、複合生命体の騎士。鷹の騎士オルテンシアと、鷲の騎士バゼットである。

「キメラにしてはよくやる。強き剣、殺すには惜しいな……」

「キャハハハ! でも殺しちゃおうよっ、どこの田舎のお姫様だか知らないけど……お姫様ってだけで、イラってしちゃうじゃない? 殺っちゃえ、殺っちゃえー!」

 そして対するは、城国が誇るアルティロイド。光闇の騎士リオと、闇光の騎士クリッパーである。 ここまでは何とか、互角の戦いを繰り広げている、オルテンシアとバゼット。しかし、それは明らかな手加減によるものだと、これ程の腕を持つ二人が、気づかないはずは無い。

「この強さ……まさかティーダと同じ、アルティロイドという奴なのか」

 オルテンシアの発言に、食いつくクリッパー。

「ほぅ、火の騎士を知っているようだな、一体どこにいる?」

「火の騎士?」

 バゼットが聞き返した。

「火の騎士っていったら、ティーダ兄様の事に決まってるじゃない、アンタら馬鹿ね、大馬鹿だわっ、キャハハハ!」

「残念だな、ティーダの事は我々も捜している最中だ。仮に知っていても、お前達に教えるわけにはいかない」

 お互いに、話の通じる相手ではない。そう判断し、オルテンシアとバゼットは、エスクードが誇る、エクストリウム製の剣『マークX』を構える。

「良いだろう、行くぞ!」

 再び、四人の騎士による戦いが始まる。

 オルテンシアには、クリッパー。バゼットには、リオがつく。

「今までとは違うぞ?」

 その大鎌を持っているとは、とても思えない速度で、間合いを詰めるクリッパー。

「――くっ!?」

 オルテンシアは決して弱くはない、しかし最強のアルティロイドと、双璧を成す実力を持つこの男に、はたして、その実力は活かされるのだろうか。答えはノーだろう。

 その突進だけで、全てを薙ぎ倒してしまいそうな、クリッパーの攻撃に、オルテンシアは、かろうじて構える事しかできない。

「……笑止」

 漆黒の鎌ソウルイーターを、その怪力のままに、横へ薙ぎ払う。オルテンシアも、必死の思いでこれを防御したが、虚しくもマークXは、簡単に音を立てて砕け、オルテンシアは後方へ飛ばされ、大木に激突する。

「くっ……そ、……化け物……め」

 バゼットには、その光景が信じられなかった。過信しているわけではないが、オルテンシアは、自分と同じぐらいの能力を持った、強き騎士だ。並、いや、並以上の相手は、軽く捌ける力があると評価している。

 しかし、目の前にいるクリッパーは、汗一つかかず、息すら乱さずに、そこに立っている。オルテンシアを相手に、物足りない、といった表情で、そこに立っているのだ。

「――そんな馬鹿な。とでも言いたげな顔ね、バッカじゃないの? アンタらみたいな実験失敗の烙印を押された、クズが私達に敵うと思って? キャハハハ、ウケる!」

「何だと……!?」

 嘲笑うリオと、その冷静な表情を変え、怒気に満ちた目を見せるバゼット。

「王様いわく。人は『平等ではない』んですって! 私もそう思うわ。だって私と貴方じゃ、生命の価値が明らかに違うものね、キャハハハ! 失敗した、いらない生命の出来損ない、そんな貴方達キメラは、とっとと死んでしまえば良いのよ、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね! キャハハハ、自分で死ねないなら、私が殺してあげる。子供が蟻を殺すように、遊びながら、ね?」

「確かに……我々は実験の結果に生まれた、失敗の産物なのかもしれん。しかし、私達の命は、エスクードに拾われてから今まで、一変たりとも陰る事のない煌めきを手に入れたのだ! 貴様のように、命の重さを理解できん奴に、易々と殺されてやるわけにはいくかっ!」

「生意気っ!」

 リオは八つある月光の蝶パルティナを、バゼットに向ける。そして一撃を、放ってみせる。

 だがバゼットも負けてはいない。その一筋の光線を、マークXを用いて弾き返してみせたのだ。

「ならっ、これはどう! いきなさい、パルティナ!」

 今度は八つのパルティナが動き出す。自律行動をするパルティナは、その一つ一つが独自の動き方をし、バゼットを追いつめていく。

「いくら独自して攻撃してこようとも、確実に撃墜すれば問題はない!」

 八つの内の一つを、間合いに捉えたバゼットは、目にも止まらぬ速さで接近すると、レイピアの形状をしたマークXを活かし、一気に突きを繰り出す。

 しかし、砕けたのは攻撃されたパルティナではなく、攻撃を仕掛けたマークXだった。

「――そんな!?」

「キャハハハ! バーカバーカ、パルティナは一つ一つがオリハルコン、同じオリハルコンだってパルティナを壊すのは、至難の業なのよっ! そして馬鹿は馬鹿らしく、地に這いつくばりなさい!」

 まるで雨のように、バゼットに降り注ぐパルティナの光弾。それを為す術なく、全身でくらってしまい、バゼットは力無く崩れ落ちる。

「あーあ、飽きちゃった……クリッパー、最大出力、やっちゃうからさ?」

 クリッパーは静かに首を縦に振り、静かに上空へ飛び上がる。

「さっきのお姫様に、雑魚数人。どこに隠れてるのか知らないけど、最大出力のパルティナは、この一帯を軽く吹き飛ばしちゃうんだからっ、死ね! キャハハハ!」

 リオも飛び上がり、八つのパルティナの砲門は、巨大な光をチャージしながら、地上へ向いた。

「キャハハハ! いけぇー、パルティナ! ゴミを片付け――キャア!?」

 突然、リオに衝撃が走る。それは砲撃によるものだ。

「……やったのは奴のようだな」

 クリッパーの眼は、冷静にその攻撃者を捉えている。

 そこにいたのは、カルマンとロビン、そして――。

「――はぁっ!」

 クリッパーの視界の外から襲ってくる、あまりにも鋭すぎる斬撃。それもそのはずだ、それは最強の斬撃である。

「……しばらくは、俺がお前の相手をしてやる」

「――火の騎士!」

 そして斬撃の正体は、ティーダである。ハリスは『打って出る』という選択をしたのだ。

 再び相対した火の騎士ティーダと、闇光の騎士クリッパー。炎帝・ヴェルデフレインと、漆黒の鎌ソウルイーターが、交差した刃と共に火花を散らす。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ