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アルティロイド―究極の生命体―  作者: ユウ
城国~深緑の王と光闇の騎士~
36/97

35,チェックメイト

名前 ティーダ

種族 アルティロイド

性別 男

年齢 16

階級 火の騎士

戦闘 3000/業火 3300

装備

E深紅の剣ヴェルデフレイン

Eティーダ専用戦闘防護服

E火の聖獣エンドラ


名前 ラティオ

種族 アルティロイド

性別 男

年齢 13

階級 爆炎の騎士

戦闘 2800

装備

E陽黄の鉄拳ダイナアクス

E爆炎の戦闘法衣(黄・半壊)

E皮のマント

E爆炎の幻獣ヴァルサス



名前 リオ

種族 アルティロイド

性別 女

年齢 18

階級 光闇の騎士

戦闘 2500

装備

E月光の蝶パルティナ

E光の戦闘法衣(純白・天使)

E光の使徒デュミナス


名前 クリッパー

種族 アルティロイド

性別 男

年齢 18

階級 闇光の騎士

戦闘 3000

装備

E漆黒の鎌ソウルイーター

E闇の戦闘法衣(漆黒・死神)

E闇の従者ルシファー






 ――隻眼の拳士。その引き締まった筋肉の胸板には、禍々しいまでの一文字の剣痕。

 絶体絶命のピンチを救ったのは、爆炎の騎士ラティオだった。

「ほぉ、ラティオとはな……今更どの面下げて、ここへ来たのだ? 貴様のような負け犬の出来損ない、もう既に用無しだ」

 薄ら笑うように、王は言い放つ。それに対しラティオも、睨みを利かせながら言い返す事がある。

「確かに……俺は負け犬さ。それにもう、ここへは戻りたいとも思わねぇ! だがな、そんな俺にも生き甲斐ができたんだ。人間を殺す事よりも、有意義な生き甲斐がなっ!」

 馬鹿にするように王は笑う。

「して……その生き甲斐というのは?」

「……兄貴を、火の騎士ティーダを、この拳でブッ飛ばす事だ!」

「ふ、はっはっは! では貴様も最強がほしいか! ふははは、貴様ではどうやっても、ティーダには勝てんぞ? 私がそう造ったのだからな」

 馬鹿が馬鹿を言うのを楽しむように、王は高笑いしてみせる。ラティオもそんな王の姿を見て、鼻で笑ってみせる。

「――これだから頭でっかちは。そんな数字とか理屈じゃねぇんだよ。最も、そんなアンタにはわからねぇだろうけどよ、ったく、ちょっと前まで、こんな奴を敬愛してたかと思うと虫酸が走るぜ?」

 その言葉に、王の高笑いは止まる。

「ほぉ、まだ十数年しか生きてもいない、ガキがようほざいたわ。この絶対主に対しそのような言葉を吐いた罪……甘くはないぞ」

 薄布越しからでも、感じ取れる憤怒の念。王が圧倒的な存在感を示し始めたのだ。

 そんな言葉に、一つ「へっ」と笑うと一言。

「……上等だぜ」

 そしてラティオは、戦場を見た。戦いは二対一、多勢に無勢というには小規模だが、その理由があってティーダが押されているのも、また明確な一つの事実である。

「キャハハハ! リオはあいつを知ってるよ! ティーダ兄様に負けて、城から逃げた負け犬じゃない!」

「負けた事は否定しねぇし、負け犬だと言うのなら甘んじて受けてやる。……だがな、ティーダは俺が倒すんだ。どこぞの弟と妹に、くれてやるわけにはいかねぇ」

「弟と妹って? リオとクリッパーは十八よ。何でガキのアンタの弟と妹になるわけ? ねぇ、クリッパー」

「そんな歳の事など、どうでも良い事だ。爆炎の騎士、君も最強の首がほしいというのなら、自分の敵だ。そうだと言うのなら容赦はしない」

 相変わらず軽いリオに比べ、クリッパーは常に冷静沈着。隙を全く見せつけない。事実、ティーダは先ほどから、隙あらば不意討ちをしようと狙っていたが、その隙を見つける事なく現在に至る。

「ま、好きにしてくれよ。とりあえず兄貴の首を、お前達にくれてやるわけにはいかねぇんだ。だから俺はお前達を倒す」

「――了解した。ならば爆炎の騎士も、我々の敵だ」

「そういうわけだ、兄貴。今は昔みたいに一緒に戦おうぜ? 最も兄貴は疲れてるみたいだから、あの女の弱そうな奴を相手してくれよ」

「ムッカー!」

 安い挑発に乗るリオ。それを見てクリッパーは、軽いため息をつく。

 こうして火の騎士ティーダと、爆炎の騎士ラティオ。光闇の騎士リオと、闇光の騎士クリッパーによる、二対二の戦いが始まる。

「爆炎の騎士、君と手合わせできるのは、自分としても嬉しい事だ」

(……こいつが兄貴を追い詰めた闇の騎士、なるほど……半端ねぇプレッシャーだ)

 これは極端な戦いになる。クリッパーの大鎌ソウルイーターは、リーチと攻撃範囲で絶対の利がある。対するラティオの鉄拳ダイナアクスは、懐に飛び込んだ際の圧倒的な手数と小回り。いずれにしても、戦いは二人の腕にかかっている。

「――行くぜ!」

 自分の拳をかち合わせ、気合いを入れる。そして恐らくはアルティロイド中でも、屈指の初速の蹴り足で、一瞬にしてクリッパーの懐に入り込む。

「……!!」

「ちょっ、クリッパー!?」

「どうしたい? この程度の速さについて来れないか? 兄貴は普通に反応したぜ」

 確かにラティオの初速は速い。そして、サンバナ攻防戦の時よりも、その蹴り足は明らかに速くなっている。恐らくはティーダに完敗した事により、自分自身の良い所、悪い所を見直し、徹底的に鍛えたのだろう。

「行くぜ、歯を食いしばらねぇと、舌を噛むぜ――オラオラオラオラオラオラオラァ!!」

 全てがクリッパーの腹部への攻撃。ものの数秒の出来事だが、一体何十発、いや何百発の拳を打ち込んだのかもわからない。

「ぐぅっ――!?」

 そのまま殴り飛ばされ、壁に激突し動かなくなる。まさかの展開に、ほんの一瞬だが静寂が満ちる。

「……う、嘘でしょ、クリッパー!」

「何だ、もう終わりか? 俺が弱いと思って油断してたのかな」

 確実な強さを見せつける。前回戦ってから、あまり時間が経っていない。ティーダは、ラティオの戦闘能力に驚いていた。

「ラティオ、油断するなよ! その男は油断などしない」

「わかってるよ、兄貴。オリハルコンの拳で殴ったにも関わらず、殴った俺の方が痛かった。なんて身体してんだよ……あの野郎は」

 クリッパーはまるで効いていないように、すっと立ち上がる。乱れた闇の戦闘包囲から、その肉体を垣間見る事ができる。筋肉の鎧とはよくいったもので、ラティオの胸板がチャチなものに見えてしまう。

「な……マジで何て身体をしてやがんだ、あの野郎は!」

「キャハハハ! クリッパーはムキムキマッチョマンだもの、ガキんちょの攻撃じゃ堪えないわよ!」

「その言い方はよせ。爆炎の騎士の攻撃力は、予想の遥か上をいっている。並の防御力では、今のでアウトだ」

 僅かに吐血した血を拭き取る。その眼差しは、より一層冷たく輝いている。

(ラティオの拳をあれだけもらって、普通に動けるのか……俺はあれで悶絶したが……)

 ここまでの戦闘でわかっている事は、クリッパーのパワーと異常なまでの防御力である。恐らくはこの二項目に関して、アルティロイド中で最高であろう。しかし弱点と呼べる部分もある。それはその分厚い筋肉の装甲と、巨大な鎌によるところのスピードと小回りの遅さである。

(――リオ、援護を頼むぞ)

(あれ、決闘に手出しは無用なんじゃなかったっけ?)

(これは既に決闘ではない。あくまで二対二の戦い。俺は爆炎の騎士とだけ戦っているわけではない)

(理解、キャハハハ!)

 二人は思念会話ができる。これはリオとクリッパーのみに与えられた能力であり、ティーダ達には無い。

「もう油断は無いと思え」

 その言葉は真実だ。クリッパーの纏うプレッシャーは、明らかにその緊張感を増している。それを間近にいるラティオは感じとり、気づかない間に冷たい汗を流している。

「――はぁっ!」

 ソウルイーターを構え、ラティオに向かう。いくらスピードに難があるといっても、それは速度を売りとする連中と比べての事である。普通に見れば、速すぎると例えられるものはある。

「その首、もらい受ける!」

「やれるものならやってみろ!」

 二人は再び、お互いの間合い取りに入る。先に有効射程になるのは、リーチに優れるクリッパーだ。

「――キャハハハ、いきなさいパルティナ!」

 そんな最中、見事といえるタイミングで、リオがパルティナによる砲撃を試みる。

 それに気を取られ、光線を防御するラティオ。当然のように、クリッパーが隙を見逃す事は無い。力の限り大振りした一撃は、ダイナアクスにより防がれる。ダブルアームで防御したが、そのパワーの凄まじさにより、今度はラティオが壁に激突させられる。

(いまだ、リオ!)

「任せなさいって! パルティナ最大出力、生意気なガキんちょを光の藻屑にしちゃいなさい、キャハハハ!」

 最大出力の八つの閃光。壁に激突したまま動かないラティオ。このままでは確実に仕留められる。

「――ラティオ!」

 しかし、そんはピンチを救ったのはティーダだった。業火に再び覚醒し、パルティナの光線を弾き返す。

「良い所を邪魔したわね!」

「……さすがは火の騎士といったところか」

「すまねぇ、兄貴。あの野郎の攻撃……まるで化け物だぜ」

「気にするな、ラティオ。――しかし業火覚醒もこれがラストだな……」

 四者四様の攻防と思惑。それが激しくぶつかり合っている。

 しかし戦況は光と闇の騎士に傾いている。ティーダは消耗が激しく、ラティオは今のクリッパーの攻撃で、腕が痺れてしまっている。更に思念会話で、抜群のコンビネーションを持っている。

「どうするよ、兄貴? せっかく登場したもの、あいつら……とくに鎌野郎はとんでもないぜ」

「打開作は……無い。正直、予想の遥か上をいっている。……だが聞け、ラティオ」

「おうよ! 何だ、勝てるなら聞く」

「とある事情があって、今の俺ならクリッパーを止める……いや、あるいは倒せる。だが時間にすれば恐らく三分、それまでの間……あのリオを完全に足止めする事ができるか?」

 無言のままチラリとリオを睨み付ける。真面目な回答をするならば、可もなく不可もなくといったところなのだ。性格に騙されるがリオの能力は強い。一度たりともリオとの真っ向勝負をしていないラティオだが、ここまでの戦いでリオの強さを感じ取っている。

(鎌野郎がいたとはいえ、あのフワフワしてる光の球から放たれる光線のコントロール……それに力の強弱、どれをとっても繊細で加減の難しいもんだ)

 そしてラティオは決心し、口を開いた。

「相性的には……ぶっちゃけ悪いが、止めてやるよ。あのうるさい女を、兄貴の方には行かせねぇ!」

「……決まりだな。頼んだぞ、三分間だ」

 逆にいえば三分間で倒せなければ、この勝負は敗北である。残った体力と魔力をかけて、ティーダの最後の攻撃に出る。

 ――一気に飛び出し、真っ直ぐにクリッパーへ向かう。その動きにクリッパー本人も身構える。

 ラティオも同じく、リオへ向かっていく。このあたりでさすがなのは、業火へ覚醒したティーダとダッシュ速度は同じ、いや若干ながら勝っている事だ。

「次は火の騎士か。良いぞ、自分は嬉しいぞ」

 ラティオでも不足は無かっただろうが、やはり目当ての相手とあってか、クリッパーの気力は充実している。

 再び交わるヴェルデフレインと、ソウルイーター。ここは業火となったティーダが押し切る。

「ぬぅ、押されるか!」

「このまま押し切り勝つ!」

 ティーダには狙いがある。それは先ほどは邪魔され、成功しなかったエクスプロージョンを当てる事にある。いや逆にいうのなら、これでなければ闇の騎士を倒せないという事にもなる。大量のあらゆる力を消費する為、当てても外しても、これでティーダは戦闘不能にまで陥るだろう。後に王も控える状態にあり、それが唯一の不安要素だったが、今はラティオが味方にいるというものが、ティーダの支えになっている。

 ――激しい攻防が再開してから、既に一分が経過し、予測の時間まで残り二分となる。ただでさえ業火状態は、少しずつ魔力を消費する為、早くエクスプロージョンに回さなければ、打つ前に魔力が尽きてしまう。

「何か狙いがあるようだな、火の騎士……が、そんな焦った剣では自分を倒す事はできない」

 確かな焦りがあった。更にいうならば、ジュークを見ていたからである。疾風となったジュークは、時間と共にスピードが元に戻っていった。これは同じく、自分にもいえる事なのではないかと、考え始めていた。その根拠として、一分を過ぎたあたりから、クリッパーを押せなくなっている。まだ攻勢は変わらないが、普通に防がれて終わってしまう。

(――くそっ、これでは……。体感だが一分半を越えた、とてもじゃないがエクスプロージョンには……いけない!)

 体力低下による動きのキレの減少。魔力低下による攻撃力の減少。そして残り時間の減少。あらゆるものが、ティーダの思考を焦らせていく。

「もう終わりだな、火の騎士よ。何を企んでいたのか知らんが……火の騎士から戦意が失われていくのがわかるぞ」

 既にクリッパーは、ティーダの攻撃を普通に受け止められるぐらいになっていた。ラティオを見ても、リオの飛び道具特有のリーチで、逆に抑えられてしまっている。

 時間は残り一分を切り、完全に業火の攻撃力は消えてしまっている。

「ほぅ……まぁ、こんなものか。ティーダの業火への覚醒。ラティオの出現。……クリッパーとリオの、御披露目式としては楽しめたか」

 王は一人、微笑を浮かべながらこの戦いを見つめている。しかし、その微笑をかき消す出来事が起こるのだった。

「――いきなさい、パルティナ!」

「ぐああぁぁぁぁ……!」

 パルティナの直撃を受け、倒れるラティオ。

「……どうやらリオは片付いたようだ。終わりにしよう、火の騎士」

「……ぜぇ、ぜぇ……!」

 かつてない程まで消耗していた。過去、ティーダをここまで追い詰めた相手はいない。はたして万全ならばこの男に勝てただろうか――ティーダは瞬間的に一つの答えを出していた。

「さらばだ、火の騎士。そして最強の称号を我に……」

 ヴェルデフレインを持つ手が震えていた。もう持ち上げる事さえ億劫であり、ティーダは無防備にも、ソウルイーターの攻撃に対し、構えもしなかったのだ。クリッパーはただ仕事をこなすように、冷静にティーダの首へ鎌を振るった。

 ――と、その時であった。

「王よ、覚悟!」

 凄まじい速さで、王に剣を突き立て走るジュークが現れたのだ。あまりの奇襲であり、リオもクリッパーも、誰一人として反応できた者はいなかった。

 そして薄布の影の向こうにいる王を、深緑の剣フルーティアが突き刺す。布の向こうでは血飛沫が舞った――。

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