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アルティロイド―究極の生命体―  作者: ユウ
城国~深緑の王と光闇の騎士~
35/97

34,闇の騎士との戦い

 前王の間での、疾風の騎士へと覚醒したジュークとの戦い。この戦いで自身も、火の騎士から業火の騎士へと覚醒し、ジュークを退ける事に成功する。

 階段をひたすら登ると、前王の間のような装飾が施された扉へとたどり着く。ここが現在の王の間にして、この支配戦争の発端となった、人間の存在する場所である。

 そっと扉を開けると、二つの人影を見る事ができる。一人は薄い布の向こう側にいる王である。そして、もう一人はジュークが話していた闇光の騎士クリッパーだろう。漆黒の戦闘法衣に、巨大な鎌が威圧感を出している。

(――あれが、新型アルティロイド。なるほど、俺達とは違うというわけか)

 その存在を確認しながら、ゆっくりと中へ入っていく。ティーダを見ても、クリッパーは全く動じずに平静を装う。

「ほぅ、なるほどな。ジュークはやはり負けたみたいだな。しかし手傷は負わせて、体力の消耗に努めた点は評価してやろう。所詮、風の騎士では、最強の火の騎士は止められんな……」

 部屋の奥、薄布の向こう側から、王が喋りかける。そんな王の言葉に、ただ黙っていたクリッパーが、言葉を発した。

「――お言葉ですが王よ。最強の称号は火の騎士ではなく、闇光の騎士が貰い受けます」

「ふっふっふ……。大した自信だな。しかしアレもこの私が造りあげた騎士。そう簡単には手に入らぬぞ?」

「ご安心を――貴方様がお造り下さった我々、光と闇の騎士は何があろうと負ける事はありません」

 それは大口ではなかった。クリッパーは相変わらず表情一つ眉一つ動かさずに、絶対的な自信を持ち、ティーダの前に立ち塞がる。

「クリッパー……とかいったな? そんなに最強の文字がほしいのか?」

「……あぁ、ほしいね。絶対的な指導者たる王を守備する騎士は、最強でないとならぬのだ。何よりも王が造りあげた完成型が、所詮は試作型に負けるわけにはいかない」

「完成型、試作型と……戦いの世界に、そんな肩書きは無意味だ。お前が俺より強ければ、最強の二つ名はお前のものだ。しかし俺が強ければ、お前はまだ最強には遠い。……たったこれだけのシンプルな仕組みだ」

 ティーダとクリッパーは、同時に武器を構える。ティーダは数々の死闘をくぐり抜けてきた愛刀ヴェルデフレイン。対するクリッパーは、新品同様の漆黒の大鎌ソウルイーターである。

「――無論、単純明快に見積もっても、勝つのはこの俺です」

「ふっふっふ……。良い気迫だ。私が合図をしよう――始め!」

 王の合図と共に、双方は一気に飛び出していく。その突進速度はわずかにティーダが上である。

 そして交差する剣と鎌。激しい衝突音と共に、乱れ散る大量の火花。だが力は若干ながらクリッパーが押している。

 そのままファーストコンタクトを、力で押しきったクリッパーは、大鎌を力の限り振るい、ティーダの体を天井目掛けて飛ばしてみせる。

(な……なんてパワーをしているんだ、こいつは)

 ソウルイーターを持ち直し、空中で身動きのとれないティーダに、一気に追い討ちをかけていく。大鎌の絶対的攻撃範囲により、ティーダを捉える事は容易いのだ。しかしティーダも、自信を持っている剣の技術、大鎌を難なく裁き、落下の勢いも利用して反撃に出る。

「――むっ!?」

(これならどうだ。空中にいるならば、お前も動けない。この一撃は当たる)

 この一撃を終わりの一撃とせんばかりの、気迫がこもった斬撃。だが間違いなく当たるはずの攻撃は、空振りに終わってしまう。

「何っ!?」

 咄嗟に目でクリッパーを追うと、空を飛び斬撃を避けていたのだ。恐らくはクリッパーが装備している、戦闘法衣の能力だろう。まるで悪魔の羽のように、羽ばたかせ浮遊している。

「残念でしたね。自分は古い貴方と違い、空を飛ぶ事が可能です。――空中戦は自分に利がある」

「……まさか、飛行能力まで備えさせるとはな。最も空中戦はジュークで慣れている。その程度の優位で、優越感ひ浸れる程、この俺は甘くはない」

「なるほど……さすがは現、最強のアルティロイド。楽には勝たせてくれそうにない」

 これ程の相手は、ティーダにとっても初めてであった。手加減も無く、むしろかなりのハイペースで戦ったつもりだが、闇の騎士は息を乱す事もなくついてきている。それどころか、ジューク戦で消耗している分、いまだにティーダが体力的にも不利が続く。

(……これは覚醒させるしかない、エンドラを……)

 ジュークに教わった火の騎士から、業火の騎士への覚醒。今の状態では長期戦は不利と判断し、短期決戦で勝負を決める事にする。

「もう一度いけるな、エンドラ?」

(――む、何をする気だ、火の騎士)

 エンドラが力を解放し、ティーダに随時、火の防御幕「フレイムオーラ」が纏われる。火の騎士から、業火の騎士への覚醒は成功した。

(ほぅ……ティーダめ、まさか能力解放に気づくとはな。あるいは誰かの入れ知恵か)

 創造者である王は、ティーダの覚醒に特に驚く素振りも見せない。

 そしてクリッパーも、業火への変化がただ事ではないと判断し、一層気を引き締めにかかる。

(ふむ……アレに覚醒してしまっては、クリッパーには荷が重かろう。――リオを呼ぶか)

 戦いに集中するティーダとクリッパーとは裏腹に、王は冷静に戦況を見極める。

「――おおおおぉぉぉ!」

 気合いと共に、クリッパーに攻撃を仕掛ける。その圧倒的な業火の戦闘能力に、防戦一方になる。

(……くっ、パワーでも火の騎士が上になるか。一体何だというのだ、この戦闘力の上がりようは)

 剣による斬撃と、業火の火球の連携で、クリッパーの厚い防御力を突破にかかる。一撃一撃が極めて鋭く重い攻撃に、防御が追い付かなくなる。

「――くっ!」

 体制を立て直そうと、大きく後方へ飛ぶ。その動作は飛ぶというよりも、鋭角なステップに近く、例え歴戦の勇者と呼ばれるような者でさえ、捉えるのは非常に困難である。

 しかしティーダは、そんなクリッパーの動きを完全に見極め、最大級の一撃を与えにかかる。纏うフレイムオーラは、更にその火力を増し、ティーダとエンドラが持てる力を全て最大に高めていく。

(まさか……ティーダめ、アレを放つ気か!)

 そんなティーダを見て、クリッパーも自身の持てる最大の防御ができるように身構える。

「なっ、何をする気だ、火の騎士!」

「エクス――プロージョン!」

 エクスプロージョン。それはティーダができる最大威力の技である。全ての力を最大に高め放出、そして放出させた力を一点に叩き込む。あまりの魔力放出の為、火の騎士としては一発打てば、文字通り全ての力を使い果たしてしまう。だが業火の騎士に覚醒し、魔力量そのものも上がった為、一発打っても余力を残していられると判断しての事だ。

「くっ、火の騎士!」

「一撃で葬る。それが同じアルティロイドであり、兄弟としての情けだ」

 完全に捉えた。例え防御しても、あまりの攻撃力の前にそれを突破し、確実に葬り去れるだろう。

 だがエクスプロージョンが当たる間際、複数の閃光がティーダを襲う。その閃光が放った光線をくらい、体制を崩されてしまう。

「な、何だ……これは?」

「パルティナか。リオめ、余計な真似を……!」

「キャハハハ、何が余計な真似よ。危なかったじゃない、クリッパー?」

 ティーダにとっては、聞き覚えのない声がする。そこに目を向けると、クリッパーとは対照的に天使を模した者がいる。闇光の騎士クリッパーの、双子の姉、光闇の騎士リオである。

「あれも、新たなアルティロイドだと言うのか!」

「キャハハハ、初めまして兄様。光闇の騎士リオと、それに従う月光の蝶パルティナです」

 リオは丁寧に自己紹介すると、ゆっくり浮遊しながらクリッパーの元へと向かう。

「王様がお呼びにならなければ、クリッパー死んでたよ? キャハハハ!」

「――王の、命令か」

 クリッパーは横目で、王を見る。相変わらず薄布の向こうで、影しか見えない。

「助けてもらった事には、礼を言っておく。しかしこれは俺と火の騎士との戦いだ。いらぬ手出しは無用!」

「アンタ、弟のくせに可愛くなーい! リオの方が、お姉さんなんだからね!」

「わすが数秒の差で産まれた双子に、姉も弟もあるか!」

「あるの! 弟は、お姉ちゃんの言う事聞きなさい、キャハハハ! それに、協力して倒せって、王様の命令。まさか聞けないって言うんじゃないでしょうね?」

 クリッパーは「ふんっ」と不満をあらわにしながらも、リオと協力し、ティーダを倒そうと構える。

「キャハハハ、残念でしたね。形勢逆転です、兄様。光と闇の騎士と、火の騎士ではどちらが勝つか……おわかりいただけると思いますが?」

 残忍な顔をして微笑む。そこには正々堂々などという言葉は、一切見る事ができない。例え数十人、数百人いようと、勝てば良いという考えが、手に取るようにわかる。性質的にはセレナに似ているが、まだ一対一の戦いを臨んできた為、こちらの方が質が良い。

「最強のアルティロイド殺し……これ程楽しい遊びはないわ、キャハハハ!」

 パルティナを操作し、遠距離戦を仕掛けてくる。その動きは武器が自律的に動き、まるで生きているようにも見える。そして、あらゆる角度から光線を放つ為に、回避が非常に困難である。

「月光の蝶か、よく言ったものだよっ!」

 その八つの光から放たれる光線を、巧みに避けていく。更にその隙を伺い、クリッパーがソウルイーターを用いて、首を刈りに来る。

「悪く思うな、火の騎士。俺とお前の勝負は決闘ではない、これは負けた方が死ぬ――殺しあいだ!」

「良い事を言う。お前とは変に悩まずに戦えそうだな」

 パルティナの砲撃と、ソウルイーターによる斬撃。見事に回避してはいるが、反撃する暇もなく、正に防戦一方となる。

「キャハハハ、避けれたって攻撃しなくちゃ、リオ達は倒せないわ!」

「――ちぃっ!」

 ティーダは、少しでも攻撃の手を減らそうと、一基のパルティナに攻撃を繰り出す。しかしパルティナに攻撃を当てると、超金属音と共に弾かれてしまう。

「まさか……!?」

「その、まさか、よ。パルティナは八つ全てが、オリハルコンでできた自律型起動兵器。それを壊す事は、事実上不可能。キャハハハ!」

 この事から、パルティナを機能停止させるには、その所有者である、リオを倒さなければならない。しかしパルティナの弾幕により、それは容易い事ではなく、何よりも今は中央突破しようにも、クリッパーが待ち構えている。そして左右から揺さぶりをかけようとしても、リオがそれをさせない。

正に八方塞がりであり、二人の攻撃を直撃しないように、立ち回っていくのが精一杯の状況である。

(――くそっ、これでは!)

 このままいけば、体力低下と共にいつかは被弾する。そしてそれは遠くない瞬間に起こりうる事だ。事実、二人の騎士の攻撃は少しずつだが、ティーダにかすっている。

「終わりだな……火の騎士。が、やはり一対一で勝負して、最強の称号を奪いたかったが」

「キャハハハ! 奪い取る必要なんてないよ、クリッパー。もう私達が最強だもの!」

 明らかな余裕を見せる、光と闇の騎士。既に逆転はあり得ないと考えての事か。実際に今現在、ティーダを助けてくれる存在など皆無なのだ。仮にバース達がここへたどり着いても、この二人の騎士の前に、呆気なく殺されてしまうのが関の山である。

 ――こんな窮地を救ってくれる存在は、少なからず同じアルティロイドでなければならない。

(ふむ……まぁ、こんなものか。余興としてはそれなりに楽しめたが……。やはり虚しいな、最強というものは)

 激しく火花散る攻防を見て、王はそう感じ取っていた。

 戦いの終わりが近い。ティーダの息は荒く、かろうじて避けていられるのは、残った集中力といっても過言ではなかった。そんな糸のように細い集中力が切れた瞬間、それがティーダの死ぬ瞬間であり、地上軍の再戦が無い完全敗北の瞬間でもある。

「もう飽きてきた! クリッパー、早く殺っちゃってよ!」

「火の騎士は、そんな遊べるような相手ではない! 一つ一つに集中しなければ、首を取られるのは俺達だ」

(……くっ、このクリッパーという騎士、なんていう冷静さを持っているんだ。せめて少しの油断でもあってくれれば!)

 三者三様の思惑があった。ただ殺しという遊びを、楽しめれば良いリオ。最強という称号を、火の騎士から奪い取る一心のクリッパー。何としてでも勝たなければならないティーダ。

 そして、この三つの思惑は、一人の騎士が打ち勝つ。

「――火の騎士、その首もらったぁ!」

 戦いの疲労からか、ティーダは思わず足を滑らせ体制を崩してしまう。わずか一瞬の出来事であったが、その一瞬をクリッパーは見逃す事は無かった。漆黒の鎌ソウルイーターを振り、首をはねにかかる。

 だが、その鎌の刃がティーダの首にかかるか否かという時、クリッパーのいる空間が赤い球体に覆われる。

「むっ、何だこれは!?」

「ヤバッ、それヤバイよ、クリッパー! 避けてぇ!」

 クリッパーを覆う球体は、収縮を開始したと思うと、突然の爆発を起こす。

「ぬぅ……!」

 咄嗟に防御態勢を取り、その爆発による攻撃を防ぐ。ダメージは高くもないが、無傷というにはほど遠い。つまりそれだけの攻撃力があったという事だ。

「――兄貴、アンタは俺が倒すんだ。そんなどこの馬の骨とも知れない奴等に殺られてくれるんじゃねぇよ!」

 爆煙の中から現れたのは、左目に斬り傷がある隻眼の男。両拳には美しく光り輝く鉄鋼がある。

 ――そこに立っていたのは、爆炎の騎士ラティオだった。

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